海外在住の子が日本人学校に入るには?入学条件と必要な手続きを解説

海外で暮らす日本人にとって、子どもの教育環境は非常に重要であり、常に頭を悩ませる問題の一つです。海外でも日本の教育を受けさせるために、現地にある日本人学校への入学を検討する家庭も多いでしょう。
この記事では、日本人学校の概要や現地校との違い、入学条件、申請の流れ、利用できる支援制度まで詳しく解説します。海外で子育て中の保護者の方は、ぜひ参考にしてください。
- 日本人学校は日本の学習指導要領に準拠しており、卒業資格も認められる
- 日本人学校への入学は日本国籍があり、一定の日本語能力があることが条件
- 入学申請には、パスポートのコピーや在留許可証などの書類が必要
- 多くの学校では、現地の日本人会への加入が入学の前提条件となっている
- 文部科学省やJEFLA、日本人会などが学費支援制度を設けている
※ 本記事は、海外在住者の子どもの日本人学校入学に関する一般的な情報をまとめたものです。国や地域、学校によって入学条件や必要書類、費用などが異なる場合があります。最新情報は、各日本人学校や現地の日本人会、文部科学省の公式サイト等で必ずご確認ください。
日本人学校とは?ほかの教育施設との違い

海外在住の日本人家庭にとって「日本人学校」は心強い選択肢の一つです。しかし、現地校やインターナショナルスクールとの違いについて、正確に理解している方は意外と少ないかもしれません。そこでまずは、日本人学校の基本的な役割と、現地校・インターナショナルスクールとの違いについて解説します。
日本人学校の基本的な役割
日本人学校は、海外に在住する日本人の子どもたちが、日本国内と同等の教育を受けられるよう、現地の日本人会等によって設立された全日制の教育施設です。文部科学大臣の認定を受けており、日本の学習指導要領に基づいて日本語で授業が行われます。
教師は日本から派遣される教員が中心で、使用する教材も文科省の検定教科書が基本。帰国後にスムーズに日本の学校へ復帰できるよう、学年やカリキュラムが整えられています。海外にいながら日本語や日本文化を継続して学べる環境が、日本人学校の大きな魅力です。
現地校やインターナショナルスクールとの違い
海外在住の子どもが通える教育機関には、日本人学校のほかにも現地校やインターナショナルスクールがあります。それぞれの特徴を理解し、お子さんに最適な環境を選びましょう。
日本人学校と現地校の違い
現地校とは、滞在国の教育制度に基づいて運営されている一般的な学校のこと。授業は現地の言語で行われ、各国・各地域の教育方針に沿ったカリキュラムで授業が行われます。
日本人学校との最も大きな違いは、使用言語と教育内容です。現地の社会や文化に溶け込みやすい点はメリットですが、日本語力の維持や日本の学習内容とのギャップが生じることもあります。学年の開始・修了時期が異なり、学年の調整が必要になる場合もあるでしょう。
一方、日本人学校では日本語で授業を受けられるため、帰国後の進学に支障が出にくく、日本の教育環境を保てます。つまり「国際適応力」を重視するなら現地校、「日本の教育継続」を重視するなら日本人学校というのが、判断基準の一つといえるでしょう。

日本人学校とインターナショナルスクールの違い
インターナショナルスクールは、国際的なカリキュラム(国際バカロレア、アメリカ式、イギリス式など)で教育を行う私立学校です。多国籍の生徒が在籍し、グローバルな環境で学べます。授業は主に英語で行われるため、英語力の向上も期待できるでしょう。
日本人学校との違いは、教育の目的と方向性です。日本人学校が日本語教育や日本文化との関わりを重視するのに対し、インターナショナルスクールは海外大学への進学や将来的な海外での活躍を視野に入れ、語学力や多文化理解を伸ばす教育を提供しています。
ただし、インターナショナルスクールの卒業資格が日本の高校卒業と同等と認められるかは学校によって異なるので注意が必要です。学費は日本人学校よりも高額になりやすい傾向があります。日本語の学習機会も限られるため、家庭での日本語教育の継続が重要です。
日本人学校以外の在外教育施設
海外在住の子どもが日本語で学べる場は日本人学校だけではありません。居住地や滞在期間に応じて、私立の在外教育施設や補習授業校を利用する家庭も増えています。
私立在外教育施設とは
私立在外教育施設は、文部科学大臣が日本の学校と同等の教育課程を有すると認定した私立学校です。日本人学校と同様に、日本の学習指導要領に準拠したカリキュラムで授業が行われ、卒業資格も日本国内の学校と同等に扱われます。
日本人学校との主な違いは、主な運営主体が日本の学校法人である点です。公立の日本人学校よりも柔軟なカリキュラムを採用していることが多く、国際的な教育と日本式教育のバランスを求める家庭に選ばれています。
2025年時点で運営されているのは、以下の6校です。
- 立教英国学院
- 帝京ロンドン学園
- スイス公文学園
- 早稲田渋谷シンガポール校
- 西大和学園カリフォルニア校
- 慶應義塾ニューヨーク学院
補習授業校とは
補習授業校は、現地校やインターナショナルスクールに通う日本人の子どもたちを対象に、主に週末を利用して日本語や日本の教科を教える教育施設です。長期滞在予定の家庭や、現地での生活基盤を重視しながらも日本とのつながりを保ちたい家庭に選ばれています。
日本人学校との最も大きな違いは、授業時間数です。補習授業校は週に数時間程度の授業のため、全日制の日本人学校と比べて学習時間が大幅に少なくなります。補習授業校を修了しても日本の学校の卒業資格として認められません。
しかし、令和6年7月時点で、世界51か国・1地域に242校が設置されており、日本人学校がない地域では、子どもの日本語教育の拠点として重要な役割を果たす機関です。在外教育施設への登校が難しい場合には「オンライン補習校」も利用できます。
参考:文部科学省「在外教育施設の概要」「認定した在外教育施設の一覧」
海外の日本人学校への入学条件と必要な手続き

海外在住の日本人家庭が子どもを日本人学校へ入れるには、国籍や言語能力など一定の条件を満たす必要があります。ここでは、主な入学要件と手続きの流れを詳しく紹介します。
入学対象となる子どもの主な条件
日本人学校に入学するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。以下の4つのポイントを事前にチェックしておきましょう。
日本国籍を有することが原則
日本人学校への入学は、原則として日本国籍を持つ子どもが対象です。文部科学省が認定する日本人学校は「在外日本人の子女のために設置された教育施設」と定義されています。
ただし、日本国籍を持たなくても日本語での学習経験があったり、日本にルーツがあったりする子どもは、学校の判断で受け入れられるケースもあります。国や学校によって基準が異なるため、各日本人学校への相談が必要です。
海外在住の家庭では、子どもが現地国と日本の二重国籍を持つケースも少なくありません。二重国籍であっても日本国籍を保持していれば、多くの日本人学校で入学が認められています。
ただし、入学申請時には日本国籍を証明する書類の提出が必要です。二重国籍の扱いは国や地域によって異なるため、滞在国の法律も確認しておきましょう。
日本の学年相当の日本語能力があること
日本人学校では授業がすべて日本語で行われ、日本の教科書を使用するため、入学する学年相応の日本語能力が求められます。特に国語や社会科などは日本語の読解力があることを前提に授業が進められるので、ある程度の日本語力が必要です。
多くの日本人学校では、入学前に日本語能力を確認するためのテストや面接を実施しています。学校によっては、日本語補習クラスや個別サポートを提供している場合もあるため、事前に相談してみるとよいでしょう。
日本と滞在国で学年の区分や新学期の開始時期が異なり、学年にズレが生じる場合があります。たとえば、日本では4月始まりですが、欧米諸国では9月新学期が主流です。そのため、現地校から日本人学校へ編入する際に、学年の途中で入るケースもあります。
また、日本語力や前籍校での履修状況に応じて、1学年下または上の学年に調整されることもあります。各国・各学校の判断基準が異なるため、事前に入学希望校へ確認することが重要です。
保護者と同居していること
一部の日本人学校では、原則として保護者が現地に滞在し、同居していることが入学条件となります。これは、子どもの教育や生活面での責任を保護者が負うことを前提としているためです。
ただし、学校の承認を得て例外的に入学が認められる場合もあります。たとえば、保護者の仕事の都合で一時的に別居していたり、親族などの保護者代理人が現地で子どもの養育を担っていたりするケースなどです。特別な事情がある場合は、希望する日本人学校に個別で相談することをおすすめします。
現地法などの追加条件を満たしていること
日本人学校は滞在国の法律や規制の下で運営されているため、日本側の入学条件だけでなく、現地の法律や各学校の規定で定められた追加条件を満たす必要がある場合があります。
- 中国の日本人学校
- 「外国人永久居留身分証」を所持していないこと
- 中華人民共和国の国籍を有していないこと
- ニューヨーク日本人学校
- 予防接種記録の提出が必要
- ソウル日本人学校
- 日本人の保護者が韓国に駐在していること
- 保護者が帰国予定であることを客観的に示す証明書が必要
- ジャカルタ日本人学校
- インター校、現地校、補習授業校等との二重学籍ではないこと
同じ「日本人学校」でも国や地域ごとに入学条件や手続きが異なります。申し込む前に現地の日本大使館や総領事館の教育担当窓口に確認しておくと安心です。
入学申請に必要な書類・証明書
日本人学校への入学申請には、さまざまな書類や証明書の提出が必要です。海外在住の日本人保護者は、書類の準備に時間がかかる場合があるため、早めに用意を始めましょう。必要書類は学校によって多少異なりますが、一般的に以下のような書類が求められます。
- 入学願書・申請書(学校指定の様式に記入)
- 日本国籍を証明する書類
- パスポートのコピー、戸籍謄本・抄本の写しなど
- 在留許可証または居住証明書
- 健康診断書
- 顔写真(入学証や名簿用)
※編入学の場合(前在籍校より持参)
- 在学証明書
- 成績証明書
- 指導要録の写し(親展)
- 教科書給与証明書
- 海外子女教育振興財団に提出。日本人学校用教科書を受領
編入の場合は、前籍校(日本または海外)の在学証明書や成績証明も求められます。書類は日本語または英語での提出を求められることが多く、翻訳が必要な場合もあるため、各日本人学校に問い合わせておくと安心です。
申込みから入学までの手続きの流れ

日本人学校への入学手続きは、いくつかのステップを踏んで進められます。全体の流れを把握しておくことで、スムーズに準備を進められるでしょう。申込みから入学までの具体的な流れについて解説します。
申込みから入学までの手続きの流れ
- 入学申請書類の提出
- 書類審査・入学テスト・面接の実施
- 入学許可の通達
- 現地の日本人会への会員登録
- 入学金・授業料等の納付
- 持ち物、学用品などの準備
入学申請書類の提出
まず入学を希望する日本人学校のWebサイトを確認するか、直接学校に連絡して、入学案内や願書を入手しましょう。願書には子どもの基本情報や、保護者の在留資格などを記入し、必要書類とあわせて提出します。
申請書類の提出方法は学校によって異なりますが、直接学校の事務室に持参する方法が一般的です。郵送やメールでの提出や、オンライン申請を受け付けている学校もあります。提出期限は学校や入学時期(新入学、編入学)によって異なるため、事前に確認が必要です。
新年度(4月)からの入学は、前年の秋頃から募集が始まります。海外在住の場合、書類の準備に時間がかかることを考慮して、入学希望日の3~6か月前から準備を始めましょう。定員がある学校では先着順や抽選になる場合もあるため、早めの行動をおすすめします。
書類審査・入学テスト・面接の実施
提出書類が受理されると、学校による書類審査や面接、簡単な入学テストが行われます。審査内容は主に、子どもの日本語力や学校生活への適応力を確認するものです。
入学テストの内容は学年によって異なりますが、一般的には国語(日本語)と算数・数学を中心に、学年相当の基礎学力を測る問題が出題されます。海外在住が長く、日本の学校に通った経験がない場合は、事前に日本の教科書や問題集で準備をしておくとよいでしょう。
面接は保護者と一緒に行うケースが多く、保護者の滞在予定や海外での生活状況、日本語の使用環境、家庭の教育方針といった質問が中心です。面接は日本語で行われ、子どもが日常会話レベルの日本語でコミュニケーションできるかも確認されます。
入学許可の通達
書類審査や入学テスト、面接の結果をもとに学校側が入学の可否を判断します。入学が許可された場合は、入学許可証や入学に関する詳細な案内書類が送付され、入学日やオリエンテーションの日程、教材の購入方法などについて案内されるのが一般的です。
入学許可の通知を受けたら、指定期限内に入学意思確認書を提出する必要があります。現地教育省の承認やビザの更新が必要な国の場合は、許可書類を役所に提出して入学登録を完了させましょう。
現地の日本人会への会員登録
多くの日本人学校は、現地の日本人会や日本人商工会議所などの組織によって運営・支援されています。そのため、入学にあたって保護者が日本人会の正会員または賛助会員になることを条件としている学校が少なくありません。
会員になることで、学校行事や文化イベントに参加できるほか、地域の安全情報や生活サポートを受けられるというメリットもあります。入会手続きの詳細は、日本人学校からの案内か、現地の日本人会のWebサイトで確認が可能です。
入学金・授業料等の納付
入学許可を受けたら、指定の期日までに入学金と授業料の納付が必要です。日本人学校の学費は、日本国内の公立学校とは異なり、保護者の負担が発生します。授業料のほか、施設維持費・教材費・スクールバス代などもかかることが多いので、事前の確認が必須です。
日本人学校は現地通貨建てで運営されており、国や物価により金額は大きく異なりますが、年間で数十万円から百万円以上かかることもあります。一部の企業では海外赴任者の子女教育費用の一部を負担してくれる場合もあるため、勤務先に確認しておきましょう。
持ち物、学用品などの準備
入学が決まったら、学校生活に必要な持ち物や学用品を準備します。日本人学校では日本の学校と同様の学用品が必要となるため、入学案内に記載された持ち物リストをよく確認して準備を進めましょう。小学校の場合は、一般的に以下のようなものが必要です。
- 文房具
- 筆箱、鉛筆、赤鉛筆、消しゴム、定規
- はさみ、のり、セロハンテープ、下敷き、ノート類
- 三角定規セット、コンパス、分度器
- 色鉛筆、クレヨンまたはクレパス
- 道具箱
- 水筒、お弁当箱
- 上履き、上履き入れ、手提げ袋
- 習字道具、絵の具セット、鍵盤ハーモニカ、リコーダー(学年による)
- 水泳用具(水着、水泳帽、バスタオル、ゴーグルなど)
- 体操着、赤白帽子、縄跳び
- 調理実習用エプロン、三角巾(バンダナ)
- 雑巾
学校によっては指定の制服や体操服があり、学校を通じて購入する場合もあります。現地では手に入りにくいものもあるため、一時帰国時やネット通販で事前に購入しておきましょう。現地の日本人向けショップや、先輩保護者からのお下がりを活用する方法もあります。
参考:ニューヨーク日本人学校「各学年の準備物」
日本人学校の学生が受けられる支援制度

海外在住の日本人家庭にとって、学費の負担は大きな課題の一つです。日本人学校に通う学生を対象とする主な支援制度を知り、状況に応じて利用を検討してみましょう。
文部科学省:海外の日本人高校生への支援制度
文部科学省では、海外の在外教育施設に通う高校生を対象とした就学支援金制度を設けています。日本国内の高校生に適用される「高等学校等就学支援金制度」と同様の趣旨で、海外で暮らす日本人家庭の教育費負担を軽減することを目的とした制度です。
対象となるのは、文部科学大臣が認定した在外教育施設の高等部に在籍する生徒で、日本国籍を有し、保護者の所得が一定基準以下の場合に支援が受けられます。支給金額は保護者の収入に応じて異なり、在学中の36か月間が対象です。
参考:文部科学省「在外教育施設の高等部の生徒への支援」「海外の日本人高校生への支援」
JEFLA(日本語教育基金):奨学金制度
JEFLA(日本語教育基金)では、海外の在外教育施設(日本語補習学校)に通う生徒を対象とした奨学金制度を提供しています。日本語教育に意欲的な生徒や、経済的支援を必要とする家庭に対して給付型の奨学金を支給し、日本語学習を推進することが目的です。
JEFLAでは教育現場の教師や日本語教育プログラムへの支援も行っており、海外在住の子どもたちが日本語環境を維持しやすい仕組みを整えています。募集要項や申請方法の詳細は、各学校またはJEFLAに直接確認しましょう。
参考:JEFLA「奨学金制度」
現地の日本人会や企業団体による教育補助金制度
海外の日本人学校や補習校では、現地の日本人会や企業団体が独自の教育補助金制度を設けている場合があります。たとえば、ニューヨークでは、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行から補習授業校に通う園児を対象とする「JEI奨学金制度」の利用が可能です。
民間の補助金制度は、主に現地在住の日本人家庭の教育負担を軽減することが目的です。ただし、支給額や申請条件は地域や団体により異なります。赴任前に現地の日本人会・商工会などへ問い合わせておくことをおすすめします。
海外でも日本人学校で日本の教育を続けよう
海外在住でも日本の教育を継続したい家庭にとって、日本人学校は有力な選択肢の一つです。学年や国籍の取り扱い、補助金制度など、国や地域によって条件は異なりますが、日本語で学べる環境は子どもの学習基盤を支える大きなメリットになります。
入学を検討する際は、現地の日本人会や学校の公式サイトから最新情報を確認し、早めに申込みや必要書類の準備を進めることが大切です。海外生活の中でも、日本の学びを途切れさせずに続けられる環境を整えましょう。