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海外在住者が実家を処分するには?売却・賃貸・解体・空き家管理はどれがいい?

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海外在住者にとって、日本にある親の実家は、将来的に相続や空き家問題につながる重要な課題です。しかし、距離や時差、日本特有の手続きなどの影響から、実家の管理や処分が思うように進まないことも少なくありません。

この記事では、実家を処分するタイミングや進め方、海外在住者が事前に準備しておきたいポイントをわかりやすく解説。「売却」「賃貸活用」「解体」「空き家管理」のメリット・デメリットもお伝えするので、実家の今後を考える際の参考にしてください。

この記事のポイント
  • 親が元気なうちから実家の将来を家族で話し合っておくことが重要
  • 空き家の放置は維持費の負担が大きく、近隣トラブルの原因になりやすい
  • 実家の状況に応じて、売却・賃貸・解体・空き家管理から選択する
  • 海外在住者は必要書類や代理手続きを事前に確認・準備しておく
  • 専門家へ早めに相談すると実家処分を円滑に進めやすい

※ 本記事は、海外在住者が日本の実家を処分・管理する際の一般的な情報をまとめたものです。相続、不動産売買、税務、登記などの手続きは、個別の事情や法令改正などによって対応が異なる場合があります。実際に手続きを行う際は、法務局・自治体・税務署などの関係機関や、司法書士・税理士などの専門家へ相談し、最新の情報をご確認ください。

海外在住者が実家処分を考えるべきタイミング

海外に住んでいると、日本にある実家のことは「後回し」になりがちです。しかし、親の高齢化が進む中で、実家の処分や管理について早めに考えておくことが、将来的なトラブル防止につながります。親の生活環境が変わるタイミングで、具体的な検討を始めましょう。

親が施設や高齢者住宅へ入居するとき

親が介護施設や高齢者住宅へ入居し、自宅が空き家になる場合、実家を維持管理するのか、売却するのかを決断しなければなりません。海外在住者の場合、頻繁に帰国して管理するのが難しいため、放置すると建物の老朽化や維持費の増加につながります。

施設入居のタイミングで方針を固めることは、将来の相続対策だけでなく、当面の介護費用を確保するうえでも有効です。親の判断能力が低下する前に具体的な方針を決めて動き出せば、不動産の売却や財産整理の手続きも、よりスムーズに進められるでしょう。

親が亡くなり相続が発生したとき

親が亡くなると不動産は「相続財産」となり、相続人が管理や処分を引き継ぐことになります。これは海外在住であっても例外ではなく、共同相続人の一人である以上、実家の維持管理や売却手続きに向き合わなければなりません。

現在は相続登記が義務化されているため、相続によって不動産を取得した場合は、原則として期限内に相続登記を行う必要があります。できるだけ早い段階で相続人同士が方針を共有し、司法書士や不動産会社へ相談することが重要です。

参考:政府広報オンライン「不動産の相続登記義務化

海外在住者が実家の処分で直面する課題 

海外在住者が日本の実家を処分する際には、国内在住の場合とは異なる「特有のハードル」があります。頻繁な帰国が難しいことに加え、行政手続きや不動産取引においても特有の制約があるため、あらかじめ全体の流れや問題点を把握しておくことが重要です。

海外在住者が実家の処分で直面する課題

  • 時差と距離による連絡・帰国の壁
  • 日本の行政・書類手続きの複雑さ
  • 非居住者に対する税務上のルール
  • 空き家のまま放置するリスク

時差と距離による連絡・帰国の壁

海外在住者にとって大きな課題の一つが、日本との「物理的な距離」と「時差」です。不動産会社や司法書士、あるいは他の親族と打ち合わせをしようにも、お互いの活動時間が合わず、スムーズに連絡を取りづらいケースが多々あります。

また、現地の状況確認や最終的な契約手続きのために帰国が必要になれば、航空券代や宿泊費といった多額のコストがかかります。近年はオンライン面談や電子契約に対応する事業者も増えているものの、すべての手続きが遠隔で完結できるわけではありません。

日本国内で対応を依頼できる親族や専門家を確保しておかなければ、書類の往復や確認作業だけで手続きが数ヶ月にわたって停滞してしまうリスクもあります。海外在住者は、時間的・経済的な負担をあらかじめ考慮し、余裕を持った計画を立てることが重要です。

参考:国土交通省「ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について

日本の行政・書類手続きの複雑さ

海外在住者が日本の不動産手続きを行う際、国内在住者と同じ書類をそのまま用意できないという大きな問題があります。

たとえば、不動産の相続や売却で必須となる「住民票」や「印鑑証明書」は、日本の住民登録を抹消して海外へ転出している場合は原則として取得できません。代わりに、現地の在外公館に出向き、「在留証明」や「署名証明(サイン証明)」を取得する必要があります。

また近年では、国内連絡先に関する事項の申出が必要になるなど、特有の手続きも増えています。在外公館での証明書発行には予約や出向く時間が必要になるため、事前に司法書士や不動産会社へ必要書類を確認し、計画的に準備を進めることが大切です。

参考:法務省
外国に居住しているため印鑑証明書を取得することができない場合の取扱いについて
令和6年4月1日以降にする所有権に関する登記の申請について

非居住者に対する税務上のルール

海外在住者が日本の実家を売却・賃貸して収入を得る場合は、日本の税法上「非居住者」としてのルールが適用されます。国内在住者とは異なる税務が発生するため、国際税務に精通した税理士などの専門家へ早めに相談しておくことが重要です。

源泉徴収義務:決済時に代金が天引きされる仕組み

不動産を売却する場合、買主の属性や購入目的(※)によっては、売買代金の10.21%が支払時に源泉徴収(天引き)されます。この仕組みを見落としていると、手元に入る現金が想定より少なくなり、資金計画にズレが生じてしまう可能性があるので注意が必要です。

源泉徴収が不要となるケース:買主が「個人」であり、かつ「自身または親族の居住用」として購入し、売買価格が「1億円以下」である場合。

参考:国税庁
非居住者等から土地等を購入したとき」「不動産を購入される方向け

確定申告と納税管理人:後日の税金手続き

実家の売却によって利益(譲渡所得)が出た場合は、海外在住者であっても日本国内での確定申告が必要です。国内に住所がない海外在住者は、税務手続きを円滑に進めるため、自分に代わって書類の受け取りや納税手続きを行う「納税管理人」を選任し、税務署へ届け出るケースが一般的です。

参考:国税庁
海外勤務中に不動産を売却した場合」「海外勤務と納税管理人の選任又は解任

空き家のまま放置するリスク

海外在住者は頻繁に実家を訪れることが難しいため、やむを得ず空き家のまま放置してしまうケースが少なくありません。

しかし、空き家の放置は経済的な負担だけでなく、防犯や法的なリスクもあるため、早めの管理や活用を検討する必要があります。主なリスクは、次の3つです。

固定資産税や維持費などの「経済的コスト」

実家が空き家であっても、不動産を所有している限り「固定資産税」や「都市計画税(※)」は毎年課税されます。さらに、火災保険料、庭木の剪定、建物の修繕、定期的な通水・換気など、建物を維持管理するためのランニングコストも発生し続けます。

実家のある地域に頼れる親戚がいない場合、民間の空き家管理サービス等への委託費も必要です。誰も住んでいない家は傷みが早く、放置期間が長くなるほど、将来的な修繕費用や解体費用が大きく膨らむリスクがあります。※課税対象地域の場合

区分固定資産税・税率都市計画税
土地・建物標準税率1.4%標準税率0.3%
小規模住宅用地
(面積200m2以下)
標準税率の6分の1(特例)標準税率の3分の1(特例)
一般住宅用地
(面積200m2超)
標準税率の3分の1(特例)標準税率の3分の2(特例)
出典:国土交通省「土地の保有に係る税制

近隣トラブルや防犯上のリスク

管理の行き届いていない空き家は、近隣住民に深刻な迷惑をかけ、時にはトラブルや法的責任に発展することがあります。

  • 草木の繁茂:隣地への敷地侵入や害虫の発生、景観の悪化
  • 建物の老朽化:外壁や屋根材、瓦などの崩落による通行人への危険
  • 防犯面の悪化:不審者の侵入・不法占拠や、ゴミの不法投棄
  • 放火被害の危険:人目が届かないため放火のターゲットになりやすい

国土交通省の調査でも、空き家の約4割に「腐朽・破損あり」とのデータが出ています。老朽化が進み、建物の一部が落下して第三者へ被害を与えた場合、所有者が損害賠償責任を負う可能性もあります。海外在住者は現地の異変に気付きにくいため、一層の注意が必要です。

参考:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果(P38)」

「特定空家」「管理不全空家」への指定リスク

適切に管理されていない空き家は、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、自治体から「特定空家」または「管理不全空家」に指定される可能性があります。指定を受けたまま改善を行わないと、以下のような重いペナルティが科されます。

  • 固定資産税の優遇措置解除
    • 住宅用地特例の適用対象外となり、税額が最大6倍に増加
  • 行政からの改善命令
    • 命令違反に対して50万円以下の過料
  • 行政代執行(強制撤去)
    • 行政による建物の強制解体。解体費用はすべて所有者から徴収

海外在住者は、自治体からの通知や郵便物を確認するまでに時間がかかることもあります。手遅れになる前に、空き家管理サービスの活用や定期的な見回りを検討し、必要に応じて売却や処分も視野に入れることが大切です。

参考:
国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置
政府広報オンライン「空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化

海外在住者が実家を処分するまでの流れ

実家を処分する際は、現状把握から家族の合意形成、家財整理、査定、実際の手続きまで、段階を踏んで順序よく進めることが重要です。海外在住者は物理的な距離がある分、各ステップにおいて時間的な余裕を持って動くことが成功の鍵となります。

海外在住者が実家を処分するまでの流れ

  • STEP1:現状把握(名義・ローン・建物状態)
  • STEP2:方針決定(家族・相続人間の合意)
  • STEP3:家財整理(不用品処分)
  • STEP4:査定と選定(不動産会社の決定)
  • STEP5:実家処分・活用

STEP1:現状把握(名義・ローン・建物状態)

まずは、実家が今どのような状態にあるのかを調べることから始めましょう。確認すべき主な項目は「登記名義人」「住宅ローンの残債」「建物の状態」の3つです。

① 登記名義人の確認(誰の所有物か)

不動産の現在の名義人は、法務局の「登記情報提供サービス」をオンラインで利用すれば、海外からでもインターネットを利用して登記情報の確認(閲覧)が可能です。

ただし、公的な「登記事項証明書(登記簿謄本)」の取得は、オンラインで申請できても郵送先は日本国内に限られるなど、海外在住者にはいくつかの制約があります。

そのため、登記内容の確認はネットで行い、実際の証明書取得は日本国内の親族や、手続きを依頼する司法書士に任せるのがスムーズです。

参考:
法務省「オンラインによる登記事項証明書等の交付請求(不動産登記関係)について
法務局「オンライン申請のご案内

住宅ローン残債の確認(いくら残っているか)

住宅ローンが残っている状態でも売却自体は可能ですが、引き渡しまでにローンを完済し、金融機関の「抵当権(担保権)」を抹消する手続きが必要です。

もし売却価格がローンの残債を下回る場合は、自己資金を持ち込むか「任意売却」などの手続きが必要になるため、あらかじめ金融機関へ残高証明書を請求し、正確な残り総額を把握しておきましょう。

参考:全国任意売却協会「住宅ローンが残っている家でも手放すことは可能か?

建物の状態の確認(売却に耐えられるか)

雨漏りやシロアリ被害、基礎のひび割れといった建物の欠陥は、売却価格やその後の処分方針に大きく影響します。

海外在住者は現地確認が難しいため、一時帰国のタイミングで自らチェックするか、信頼できる専門業者に「建物状況調査(インスペクション)」を依頼して客観的なレポートを得るのが確実です。

参考:国土交通省「建物状況調査(インスペクション)活用の手引き

STEP2:方針決定(家族・相続人間の合意)

実家を処分するにあたり、家族や他の相続人と事前に今後の方針を話し合うことは不可欠です。「売却」「賃貸」「維持管理」「解体」の選択肢のうち、どの道を選ぶかによって、その後の手続きや必要なコストは大きく異なります。

特に注意したいのは、相続人が複数いる場合です。相続人全員による遺産分割協議がまとまっていない場合や、不動産を共有している場合は、関係者全員の合意が必要になります。

海外在住者は帰国後に慌てて判断するのではなく、オンライン会議などを活用し、早い段階から方向性を共有しておくことが大切です。もし親族間だけで意見をまとめるのが難しいと感じた場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談しましょう。

STEP3:家財整理(不用品処分)

実家を売却・解体するにあたり、室内の家財整理や不用品の処分は避けて通れない大きなハードルです。特に長年暮らした実家には、大量の家具や衣類、書類、そして思い出の品が残されており、その仕分けには想像以上の時間と労力がかかります。

海外在住者の場合、一時帰国中に滞在できる期間は限られているため、すべてを自力で片付けるのでは現実的ではありません。不用品回収業者や生前整理・遺品整理に対応した専門業者を利用するのが効率的です。

ただし、業者を自宅に入れる前に、現金や貴金属などの貴重品、不動産の権利証や預金通帳といった重要書類だけは、自分や家族が確認・回収しておきましょう。業者の作業中に紛れてしまうと、その後の売却手続きや相続手続きに大きな支障をきたす恐れがあります。

家財整理の進め方や業者の選び方については、別記事でも詳しく解説しています。

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STEP4:査定と選定(不動産会社の決定)

家財整理の目処が立ったら、不動産会社へ査定を依頼します。査定額や提案内容は会社によって異なるため、1社だけで決めず、必ず複数社を比較することが大切です。

日本国内の主要な不動産一括査定サービスなどを利用すれば、海外からでもインターネットで複数社へ同時に査定を依頼できます。近年はオンライン相談や電子契約に対応する不動産会社も増えており、遠隔地からでも国内の担当者とスムーズな連携が可能です。

売却先を選ぶ際は、提示された「査定価格」の高さだけでなく、時差や書類手続きを考慮した「海外在住者への対応実績」や「遠隔売却のサポート体制」が整っているかを重視して選ぶと安心です。

STEP5:実家処分・活用

実家の建物の状況や家族の希望に応じて「売却」「賃貸」「解体」「維持管理」などから最適な方法を選択します。たとえば、地域や建物の状態によっては、解体して更地にすることで売却しやすくなるケースもあります。

建物の築年数や立地によっては、古い家屋を残したまま売りに出すよりも、解体して更地にしたほうが買い手が見つかりやすいケースもあります。

一方で、将来的に自分や親族が利用する予定がある場合は、一時的に賃貸へ出すか、空き家管理サービスを利用しながら適切に維持管理するのも一つの選択肢です。不動産会社から提示された査定結果やコストの試算も慎重に踏まえ、最善の方針を判断・実行しましょう。

海外在住者が知っておきたい実家処分の方法

実家の処分方法は「売却」だけではありません。物件の状況や家族の意向によっては、賃貸として活用したり、建物を解体したり、空き家管理サービスを利用したりする方法もあります。

それぞれのメリット・デメリットを正しく把握し、建物の状態や立地、相続人の意向、維持費などを総合的に比較して判断することが大切です。

売却する(仲介・買取)

実家処分で最も一般的なのが「売却」です。市場で広く買い手を探す「仲介」と、不動産会社が直接買い取る「買取」の2種類があり、価格やスピードに差があります。

「仲介」は高値で売れる可能性がありますが、一般的に時間と手間がかかります。一方、「買取」は売却までの期間が比較的短く、手続きもスピーディな傾向があるため、一時帰国の期間が限られる海外在住者にとって負担が少ないという大きなメリットがあります。

実家を売却するメリット

① まとまった資金の確保と円満な相続

現金化することで、親の介護・施設費用や相続に伴う各種費用や納税資金に充てられます。不動産のまま所有するより、現金にした方が相続人の間で公平に分けやすく、将来のトラブル防止につながります。

② 維持管理コスト・リスクからの解放

売却すれば、固定資産税や火災保険料、修繕費などの維持管理にかかる負担から解放されます。海外から日本の空き家を気にし続ける心理的なストレスからも解放され、近隣トラブルの心配も不要です。

実家を売却するデメリット

① 思い出のある実家の喪失

親が長年暮らした家を手放すことに、自分または家族が強い抵抗感を覚えるケースがあります。売却後に後悔しないよう、事前に全員が納得するまで十分に話し合う時間が必要です。

② 売却までにかかる時間や価格の妥協

仲介の場合、買い手が見つかるまで数ヶ月〜1年以上かかることがあります。海外在住者は帰国日程も考慮しながら、売却スケジュールを計画的に立てなければなりません。

また、立地や建物の状態によっては、査定額が想定を大きく下回ることもあります。事前に複数社の査定を比較し、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」などで実際の取引相場を把握しておくことが大切です。

参考:国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ

賃貸として活用する

将来的に自身や親族が実家へ戻る予定がある場合や、資産として手放したくない場合は、賃貸に出して活用する方法もあります。現地での入居者対応やトラブル処理は民間の管理会社へ管理業務を委託できるため、海外に住みながらでも比較的管理しやすい方法です。

実家を賃貸に出すメリット

①安定した家賃収入の確保

賃貸に出すことで、毎月継続的な家賃収入が得られます。定期収入があれば固定資産税や維持費の補填に充てられ、負担の軽減にもつながるでしょう。所有権を維持しておけば、将来的に自分や親族が居住するという選択肢を残せます。     

②空き家リスクの軽減

入居者が日常的に換気や水回りを使用することで、空き家特有の急激な建物の劣化防止につながります。人の目があるため、不審者の侵入や放火といった防犯面のリスク、近隣トラブルも大幅に低減できます。

実家を賃貸に出すデメリット

①修繕・リフォーム費用と管理コストの発生

築年数が古い実家の場合、賃貸に出す前に設備の更新やリフォームで数十万〜数百万円の初期費用がかかるケースも少なくありません。また、海外在住者の場合は、管理会社へ委託するケースが一般的で、管理費用も継続的に発生します。

②空室の維持費と税務負担

借り手が見つからない空室期間は収入がゼロになる一方、固定資産税や管理費の持ち出しだけが続きます。さらに、海外在住者(非居住者)が日本で不動産所得を得る場合は、日本での確定申告など税務上の手続きが必要です。

参考:国税庁「海外勤務中に不動産所得などがある場合

解体して土地を売却する

建物の老朽化が著しく、リフォームや賃貸活用が現実的でない場合は、家屋を解体して「更地(さらち)」として売却するのも有効な手段です。初期の解体費用や税制面の変化を正しく理解したうえで、売却の可能性を判断する必要があります。

実家を解体するメリット

①老朽化に伴う建物の管理リスク解消

倒壊や外壁の崩落、放火、不法投棄といった空き家特有のリスクや近隣トラブルの原因を根元から断つことができます。当然、前述の「特定空家」や「管理不全空家」に指定され、行政指導や措置の対象となるリスクを大きく減らせます。

②早期売却する可能性の向上

古い家屋が残っている状態よりも、更地の方が土地として活用しやすくなり、買い手が見つかりやすくなる場合があります。特にアクセスの良い都市部や住宅地では、更地にすることで早期売却につながりやすくなります。

実家を解体するデメリット

①まとまった解体費用の自己負担

木造一戸建ての解体には数十~数百万円の初期費用がかかり、原則として売主が先に負担しなければなりません。特にアスベストが使用されている古い建物は、特殊な除去費用が上乗せされ、費用が大幅に増加するリスクがあります。

②固定資産税の軽減措置解除

建物が建っている土地は「住宅用地の特例」によって固定資産税が最大6分の1に軽減されています。しかし、更地にすると優遇措置が消滅するため、買い手が見つからず売却が長引くと、固定資産税の負担が大きく増える可能性があります。

参考:国土交通省「アスベストQ&A固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置

空き家管理サービスを利用する

すぐに売却や賃貸を決められない場合は、空き家管理サービスを利用するのも一つの方法です。海外在住者でも実家の管理を任せられるため、遠方からでも安心して維持管理を続けやすくなります。

実家を空き家管理で維持するメリット

①建物の劣化防止

月1回などの頻度で、室内の換気や通水、郵便物の回収、庭木の点検、簡易清掃などを代行してもらえます。人が住まなくなると急速に進む建物の劣化を緩和できます。

②海外から状況把握が可能

多くのサービスでは、巡回後に写真付きのレポートが送られてくるため、海外にいながら実家の最新状態を視覚的に確認できます。異常発見時の連絡体制が整っているサービスを選ぶことで、万一の事態にも迅速な対応が可能です。

③方針決断までの時間的猶予の確保

家族間で方針が定まっていない段階でも、空き家を放置するリスクを抑えながら、焦らず時間をかけて話し合えます。一時帰国のタイミングなどを利用し、落ち着いて最善策を検討する心理的・時間的な余裕が持てるのは大きなメリットです。

実家を空き家管理で維持するデメリット

①継続的な固定費(管理費用)の発生

管理費用はサービス内容や利用地域によって異なりますが、毎月一定の費用が発生します。賃貸のように家賃収入を生むわけではなく、固定資産税や火災保険料などの費用も別途でかかるため、利用期間が長くなるほど経済的負担は重くなります。

②根本的な解決の遅れ

いつでも管理されている安心感から、サービスの利用が「実家処分への決断を先延ばしにする口実」になりがちです。利用を始める際には、家族間で「最長でも〇年以内に売却か活用かの方針を決める」といった期限を明確に設定しておくことをおすすめします。

参考:
国土交通省「空き家・空き地バンク総合情報ページ
NPO法人 空家・空地管理センター「管理サービス

海外在住者が実家処分を円滑に進めるための準備と対策

海外在住者が実家の処分で慌てないためには、親が元気なうちから準備を進めておくことが重要です。財産情報を整理し、家族で方針を共有しておけば、相続や空き家問題が発生した際にも落ち着いて対応しやすくなります。

海外在住者が実家処分を円滑に進めるための準備と対策

  • 親が元気なうちに財産情報を整理しておく
  • 家族で実家の今後を話し合っておく
  • 海外在住者特有の手続きに備えておく
  • 任意後見や家族信託を検討する
  • 日本国内で相談できる専門家を確保しておく

親が元気なうちに財産情報を整理しておく

実家の処分を円滑に進めるには、不動産に関する情報を早めに整理しておくことが大切です。親が認知症を発症したり、突然入院したりすると、財産の所在や書類の場所が一切わからなくなるケースが少なくありません。

海外在住者の場合、すぐに帰国して重要書類を探すのが難しいため、親が元気なうちに財産情報を一覧化しておくことが極めて重要です。

以下のような書類・情報の所在を把握しておきましょう。

  • 不動産関連書類: 登記済権利証(または登記識別情報通知)・売買契約書・重要事項説明書
  • 固定資産税通知書: 毎年4〜6月頃に届く課税明細書。不動産の所在地・地番・評価額が記載されています
  • 金融機関の情報: 通帳・キャッシュカード・証券口座の情報
  • 保険証券: 生命保険・火災保険の契約内容と連絡先

これらをリスト化し、親本人と海外の家族がいつでも確認できるよう、パスワードをかけたクラウドストレージや、エンディングノートなどの安全な方法で共有・保管しておきましょう。

家族で実家の今後を話し合っておく

実家の処分に関するトラブルの多くは、事前の話し合い不足が原因です。「親が亡くなってから考えればいい」と先送りにした結果、いざ相続が起きた際に兄弟姉妹間で意見が対立し、何年も解決しないケースは決して珍しくありません。

海外在住者は帰国してから話し合いを始めると時間や費用の負担が大きくなるため、LINEやZoomなどのビデオ通話を活用しながら、早めに以下のポイントについて方向性を共有しておくことをおすすめします。

  1. 実家の管理担当の決定
    • 海外在住者が物理的に対応できない部分を、日本国内にいる親族がどう補い、誰が窓口になるのかの体制を整えておきます。
  2. 売却の時期と具体的な条件
    • 「親が介護施設に入所したら売却に動く」など、手続きを開始するタイミングの基準をあらかじめ決めておきます。
  3. 家族の意向の把握
    • 「早く手放したい人」と「思い出として残したい人」の意向を事前に知っておくことで、決断までのプロセスが円滑に進めやすくなります。

もし親が話し合いに参加できる健康状態であれば、親本人の希望を直接聞いておくことが何よりも重要です。親の意思も確認しておくことで、相続後のトラブル防止につながります。

海外在住者特有の手続きに備えておく

前述の通り、海外在住者が日本の不動産を処分する際は、国内在住者とは異なる手続きや必要書類への対応が必要です。不動産会社や司法書士とのやり取りでは、委任状の作成や代理人による手続きが認められる場合があります。

また、国外転出届を提出している場合、「住民票」や「印鑑証明書」が取得できないため、その代わりとなる「在留証明」や「署名証明(サイン証明)」を在外公館で発行してもらう準備をしておく必要があります。

① 代理人や委任状の活用想定

不動産会社や司法書士との実務では、日本国内の親族などを代理人とした「委任状」による手続きが可能な場合があります。あらかじめ、誰を日本の窓口(代理人)にするかを想定しておきましょう。

② 在外公館での手続きスケジュールの確認

証明書の発行には、現地の日本大使館や領事館への事前予約や出向く時間が必要になるため、一時帰国の予定や売却時期から逆算して計画を立てておきます。

必要書類や手続きの細かなルールは、売却方法や各自治体・金融機関の判断によっても異なります。早い段階から日本の司法書士や不動産会社に相談し、必要書類のリストを先回りして手に入れておくことが、遠隔での実家処分を成功させる最大の鍵となります。

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任意後見や家族信託を検討する

親が認知症などで判断能力を失うと、本人だけでは不動産の売却や銀行口座の解約などの手続きができなくなる場合があります(資産の凍結)。こうした事態を防ぐための法的な選択肢として「任意後見制度」や「家族信託」の活用を検討することも重要です。

どちらの仕組みを利用する場合も、公証役場での手続きや専門家(司法書士や弁護士)への相談が前提となります。

任意後見制度:将来の財産管理者を決めておく

親に判断能力があるうちに、将来の管理を任せる人(後見人)をあらかじめ指定し契約を結んでおく制度です。

海外在住者が後見人になることも法律上は可能ですが、時差や距離などの実務上の負担を考慮し、日本国内に住む信頼できる親族や、司法書士などの専門家を指定するケースが一般的です。

家族信託:資産の管理・処分権限を家族に移す

実家などの不動産や金融資産の「管理・処分の権限」を、信頼できる家族に生前から移しておく仕組みです。親が認知症になった後でも、任された家族(受託者)の判断で不動産の売却や賃貸契約を進められるため、手続きができなくなるリスクを回避できます。

任意後見に比べて、売却の時期や資金の使い道をより柔軟に設計できるのが家族信託の強みです。親が元気なうちに家族でしっかりと話し合い、どちらの制度がライフプランに合うのかを専門家を交えて検討しておくと安心です。

参考:
法務省「成年後見制度・成年後見登記制度
一般社団法人 家族信託普及協会「家族信託とは

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日本国内で相談できる専門家を確保しておく

実家の処分や相続、空き家管理には、法務・税務・不動産取引など複数の専門分野にまたがる複雑な手続きが発生します。「いざという時にどこへ相談すればよいか分からない」という事態を避けるためにも、事前に相談できる専門家を探しておくことが重要です。

専門家を選ぶ際は、提示された条件だけでなく、時差を考慮したオンライン相談に対応しているか、また「海外在住者への対応実績」があるかを重視すると、スムーズに手続きを進められるでしょう。

司法書士(法務・登記の窓口)

名義変更(相続登記)、任意後見契約、家族信託の設計など、不動産登記や法的書類の手続きを担います。相続や生前対策を始める際、最初に相談先となることが多い専門家です。

税理士(税務・確定申告の窓口)

相続税の申告や、実家売却時の譲渡所得税の計算などを担います。海外在住者は国内居住者と税法の扱い(源泉徴収義務など)が異なるため、国際税務に精通した税理士を選ぶことが極めて重要です。

不動産会社(売却・活用の窓口)

実家の査定、売却活動、賃貸管理の実務を担います。現地へ行けない売主に代わり、オンライン相談や電子契約などでサポートしてくれる会社・担当者選びがポイントです。

海外在住者の実家処分に関する質問(Q&A)

海外在住者から寄せられる、実家の処分や売却に関するよくある質問をまとめました。

Q
1.海外在住でも日本の実家を売却できますか?

はい、可能です。ただし、日本に住民票がない場合は、署名証明や在留証明など海外在住者向けの書類が必要になります。不動産会社や司法書士との手続きを円滑に進めるため、海外在住者への対応実績がある不動産会社や司法書士へ相談すると安心です。

Q
2.日本に帰国しなくても実家を処分できますか?

書類上の手続きは帰国なしでも進められるケースが増えています。ただし、建物の状態確認・家財整理・鍵の引き渡しなど、現地対応が必要な場面は残ります。

信頼できる親族や、現地対応を代行してくれる専門家・業者を事前に確保しておくことで、帰国回数を減らせる可能性があります。

Q
3.実家が空き家になっても固定資産税はかかりますか?

はい、空き家になっても固定資産税・都市計画税は毎年課税されます。さらに、適切な管理が行われず「管理不全空家等」や「特定空家等」と判断された場合は、税制上の軽減措置が解除され、固定資産税の負担が大きく増える可能性があります。

Q
4.家財整理は売却前に済ませる必要がありますか?

多くの場合、売却前に家財整理を済ませておくことが望ましいでしょう。室内が整理されていると内覧時の印象が良くなり、売却活動を進めやすくなります。

ただし、不動産会社によっては残置物付きでの売却や買取に対応している場合もあるため、処分方法は事前に相談しながら判断するとよいでしょう。

Q
5.親が認知症になる前に準備しておくべきことは何ですか?

親の判断能力が十分にあるうちに、不動産や預貯金などの財産情報を整理し、実家を今後どうするか家族で話し合っておくことが重要です。また、必要に応じて任意後見制度や家族信託などの活用を検討しておくと、将来の財産管理や実家の処分を円滑に進めやすくなります。

海外在住者だからこそ早めの準備と専門家への相談を

海外在住者にとって、実家の処分は「相続が始まってから考えればいいもの」ではありません。距離や時差、海外在住者特有の法的手続きなど、国内在住者にはない課題があるからこそ、早い段階での準備が空き家の放置や家族間のトラブル防止につながります。

「まだ先の話」と先送りにせず、親が健康で元気な今だからこそ、財産情報の整理や家族との話し合い、信頼できる専門家への相談を進めておきましょう。今から準備を始めることが、将来の自分や家族の負担を大きく減らすことにつながります。

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監修者
海外暮らしINFO
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海外在住歴20年以上の運営者が、実体験や海外在住者の声、公的機関の情報をもとに、海外からでも具体的に行動できる情報をわかりやすく解説しています。
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