相続人が海外在住だと相続税はどうなる?相続手続きの方法も解説
海外在住者が日本に住む親の財産を相続する場合、日本の相続税がどこまでかかるのか」「海外からどのように相続手続きを進めればよいのか」を事前に確認しておく必要があります。
この記事では、相続税の課税範囲や申告・納付期限、相続手続き時の必要書類(在留証明やサイン証明など)、遺産分割協議、納税管理人の選任、専門家への依頼方法まで詳しく解説します。親が元気なうちから、いざというときに備えて確認しておきましょう。
- 海外在住の相続人に日本の相続税がかかる仕組み
- 海外在住者が日本の遺産相続を進める場合の流れ
- 海外在住者が用意すべき書類(在留証明・サイン証明等)と準備の手順
- 相続財産の海外送金や納税に関して気をつけたい税務上の注意点
- 海外からでも相談できる専門家の選び方
※本記事は、相続人が海外在住である場合の相続税・相続手続きに関する一般的な情報をまとめたものであり、個別の税額計算や手続きの結果を保証するものではありません。相続税制度や手続き方法は法改正等により変更される可能性があります。最新情報は国税庁、管轄の税務署・法務局、または税理士・弁護士等の専門家にご確認ください。
海外在住者が相続人になる場合の相続税のルール

海外在住の日本人が、日本で暮らしていた高齢の親を亡くして相続人になった場合、海外に住んでいることだけを理由に日本の相続税が免除されるわけではありません。また、状況によっては居住国でも課税されるケースがあります。
海外在住者は国内居住者よりも相続手続きに時間がかかることが多いため、相続税の基本ルールをあらかじめ把握し、早い段階から準備を進めることが重要です。
相続税がかかる範囲の判定方法
相続税の課税範囲は、相続人(財産を受け継ぐ子など)と、被相続人(亡くなった親など)双方の住所・国籍・過去の日本居住歴によって決定されます。まずは、ご自身のケースで日本の相続税がどこまで及ぶのかを確認しましょう。
海外在住の日本人(日本国籍)が相続する場合
日本に住んでいた親の財産を海外在住の日本人(子)が相続する場合、子の日本国内の住所、相続開始前10年以内の日本居住歴、および親の居住歴を確認する必要があります。
財産を引き継ぐ子(相続人)と、亡くなった親(被相続人)がともに日本国籍の場合の判断基準は以下のとおりです。
| 区分 | 相続人の 国内住所 | 相続人の過去10年以内の日本居住歴 | 被相続人の 国内住所 | 被相続人の過去10年以内の日本居住歴 | 課税対象 となる財産 |
| 非居住無制限納税義務者① | ✕ | ○ | ○ | – | 国内外 すべての財産 |
| 非居住無制限納税義務者② | ✕ | ✕ | ○ | – | 国内外 すべての財産 |
| 非居住無制限納税義務者③ | ✕ | ○ | ✕ | – | 国内外 すべての財産 |
| 非居住制限納税義務者 | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | 日本国内の 財産のみ |
現在海外に住んでいたとしても、自分または親のどちらか一方が過去10年以内に日本に住んでいた場合は、原則として国内外すべての相続財産が課税対象になります。海外資産の把握漏れは申告漏れにつながるため、生前から財産の所在を確認しておきましょう。
海外在住の外国籍の人(元日本人等)が相続する場合
日本に住む親が亡くなり、海外在住の外国籍の子(元日本人)が相続人になる場合も、日本国内の財産だけが相続税の対象となるとは限りません。
財産を引き継ぐ子(相続人)が外国籍で、亡くなった親(被相続人)が日本国籍の場合の判断基準は、以下のとおりです。
| 区分 | 相続人の 国内住所 | 相続人の過去10年以内の日本居住歴 | 被相続人の 国内住所 | 被相続人の過去10年以内の日本居住歴 | 課税対象 となる財産 |
| 非居住無制限納税義務者① | ✕ | – | ○ | – | 国内外 すべての財産 |
| 非居住無制限納税義務者② | ✕ | – | ✕ | ○ | 国内外 すべての財産 |
| 非居住制限納税義務者 | ✕ | – | ✕ | ✕ | 日本国内の 財産のみ |
日本国内に住所がない外国籍の相続人は、自身の過去10年の日本居住歴は問われません(判定から除外されます)。親が亡くなった時点の住所、親の過去10年以内の日本居住歴、および親の国籍で判断されます。
外国籍となり10年以上海外に住んでいたとしても、被相続人である親が日本に住所を有していた(住んでいた)場合は、国内外すべての相続財産が課税対象となります。
参考:国税庁「No.4138 相続人が外国に居住しているとき」「NO.4102 相続税がかかる場合」
相続税の基礎控除と税率の目安
日本の相続税は、受け継いだ財産全額にそのまま税金がかかるわけではありません。一定の非課税枠である「基礎控除」を超えた部分に対して、金額に応じた税率が適用されます。
相続税がかかるかどうかの境目「基礎控除」
相続財産の合計額が「基礎控除額」以下であれば、相続税の申告も納付も不要です。基礎控除額は以下の計算式で求められます。
基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
・法定相続人が1人(子1人のみ):3,000万円 + 600万円 = 3,600万円
・法定相続人が2人(配偶者と子1人):3,000万円 + 1,200万円 = 4,200万円
・法定相続人が3人(配偶者と子2人):3,000万円 + 1,800万円 = 4,800万円
相続財産の総額(預貯金・不動産・株式など)から借入金などの負債を引いた金額が、この基礎控除額を超えた場合、超えた部分(課税遺産総額)に対して相続税がかかります。
相続税の税率(速算表)
日本の相続税は、取得する財産の額が多くなるほど税率が高くなる「累進課税」が採用されています。法定相続分に応じた取得金額と税率は、以下のとおりです。
| 法定相続分に応ずる取得金額(※) | 税率 | 控除額 |
| 1,000万円以下 | 10% | – |
| 1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
相続税計算の基本的な流れ
実際の相続税額は、各人が実際に受け取った財産額に直接税率を掛けるのではありません。一度「各人が法定相続分どおりに取得した」と仮定して全体の税額を計算したあと、実際の取得割合に応じて配分する手順を踏みます。
- 正味の遺産額を算出
- 土地・建物・預貯金などから債務・葬式費用を差し引く
- 課税遺産総額を算出
- 正味の遺産額から「基礎控除額」を引く
- 相続税の総額を計算
- 課税遺産総額を「法定相続分」で分けたと仮定し、上記の速算表を当てはめて全員分の税額を合算する
- 各自の納付税額を計算
- 合算した税額を、実際に財産を取得した割合で分け振り、配偶者控除や外国税額控除などの税額控除を適用して最終的な納税額を出す
上記の流れに沿った具体的な計算例は以下のとおりです。
相続税の具体的な計算例
妻と子ども2人の計3人が相続人、正味の遺産額が9,800万円の場合の計算例は、以下のとおりです。
基礎控除額:3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円
課税遺産総額:9,800万円-4,800万円=5,000万円
法定相続分に応ずる取得金額(法定相続分:妻1/2、子1/4ずつ)
-妻:5,000万円×1/2=2,500万円
-子①:5,000万円×1/4=1,250万円
-子②:5,000万円×1/4=1,250万円
相続税額(税率15%:1,000万円超から3,000万円以下に該当)
-妻:2,500万円×15%ー50万円(控除額)=325万円
-子①:1,250万円×15%ー50万円=137.5万円
-子②:1,250万円×15%ー50万円=137.5万円
相続税の総額=325万円+137.5万円+137.5万円=600万円
納付税額(実際の遺産分割も法定相続分どおりに分けた場合)
-妻:600万円×1/2=300万円
-子①:600万円×1/4=150万円
-子②:600万円×1/4=150万円
妻は「配偶者の税額軽減」により300万円全額が軽減され、納付税額は0円
最終的な納付税額は、子①が150万円、子②が150万円、合計300万円
ただし、上記は一定の条件を前提とした計算例です。実際の相続税額は、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減、生命保険金等の非課税枠、贈与財産の加算、各種税額控除などによって変わる場合があります。
また、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などの特例を適用すれば、税額が大きく下がる場合がありますが、特例の適用を受けるためには「相続税の申告(基礎控除を超えている場合の届出)」が必須となる点に注意が必要です。
参考:国税庁「No.4155 相続税の税率」「No.4152 相続税の計算」「No.4158 配偶者の税額の軽減」
二重課税を回避できる制度
海外在住者の場合、日本だけでなく居住国でも相続した財産に対して相続税や遺産税に相当する税が課される可能性があります。
ただし、居住国で課税された場合でも「外国税額控除」や「租税条約」により二重課税が調整されるケースがあります。居住国の税制も含めて事前に確認しておきましょう。
外国税額控除の仕組み
「外国税額控除」とは、海外にある財産に対して現地国でも相続税相当の税金が課された場合、日本の相続税額からその外国で納付した税額の一定額を差し引ける制度です。一定の要件を満たせば、同一財産に対する二重課税を軽減できます。
ただし、控除できる金額には上限があり、海外で支払った税金がすべて日本の相続税から差し引かれるとは限りません。また、適用を受けるには現地での納税証明書などが必要となるため、申告時には現地での納税状況を整理しておきましょう。
租税条約や現地の相続税・遺産税制度
海外在住者の相続では、日本の相続税のみならず、居住国の相続税・遺産税制度も確認が必要です。制度の違いも多いため自己判断せず、必要に応じて現地の専門家(国際税務に詳しい税理士や弁護士)へ相談することをおすすめします。
参考:
国税庁「No.4138 相続人が外国に居住しているとき」「NO.4102 相続税がかかる場合」
財務省「租税条約に関する資料」「我が国の租税条約等の一覧」
三井住友銀行「外国税額控除とは?」
相続税の申告・納付期限と注意点
相続税の申告および納付は「相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人の死亡日)」の翌日から10か月以内に行うのが原則です。相続人が海外在住であることだけを理由に、申告期限が延長されることはありません。
海外在住の場合は、戸籍書類の取得、領事館での証明書発行、翻訳・公証手続きなどに時間を要するため、日本国内だけで行う相続手続きよりも準備期間がタイトになります。
遺産分割協議が期限内にまとまらない場合でも申告期限は延びないため、早期に着手することが極めて重要です。
参考:国税庁
「No.4205 相続税の申告と納税」「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」
海外在住者が押さえるべき日本の相続手続きの流れ

日本で暮らす親が亡くなった際、相続人が海外に住んでいると日本国内とは異なる書類が必要となり、準備に時間を要します。手続きを滞りなく進めるために、全体の流れとポイントを押さえておきましょう。
相続に必要な情報の確認
親が亡くなった際は、まず「遺言書の有無」「相続人の範囲」「相続財産」を確認します。日本国内に住む兄弟姉妹や親族と密に連絡を取り、情報を集めることが大切です。
特に不動産や預貯金などの財産を早い段階で把握しておくと、その後の遺産分割協議や相続税申告をスムーズに進めやすくなります。
遺言書の確認・検認
遺言書がある場合、種類によっては検認(遺言書の内容などを明確にし、偽造や変造を防ぐための手続き)が必要になります。
- 検認が不要: 公正証書遺言、法務局で保管されている自筆証書遺言
- 検認が必要: 自宅等で保管されていた自筆証書遺言
検認手続きには一定の期間を要します。相続放棄や相続税申告など期限のある手続きへの影響も考慮し、遺言書が見つかった場合は早めに対応しましょう。
参考:法務省「自筆証書遺言書保管制度」,裁判所「遺言書の検認」
相続財産の把握
遺言書の確認と並行して、相続財産(負債を含む)を確認します。預貯金や株式だけでなく、不動産や生命保険(死亡保険金)、一定の期間前に贈与を受けた財産なども対象です。
| 課税対象となる財産の範囲 | ||
| 相続財産 | みなし相続財産 | 贈与財産 |
| ・現金 ・預貯金 ・不動産(土地・家屋など) ・有価証券(株式・社債など) ・借地権 ・特許権 ・著作権 ・宝石 ・車 ほか | ・生命保険金(死亡保険金など) ・死亡退職金 ほか | ・~2026年12月31日 相続開始前3年以内の財産 ・2027年1月1日~2030年12月31日 2024年1月1日から死亡の日までの間の財産 ・2031年1月1日~ 相続開始前7年以内の財産 |
なお、2026年2月にスタートした「所有不動産記録証明制度」を活用すれば、亡くなった方が所有権の登記名義人となっている不動産を一覧で確認でき、把握漏れを防げます(代理人による請求も可能)。
離れて暮らす海外在住者は、実家の不動産状況を把握しきれていないケースが多いため、必要に応じて制度を活用しましょう。
相続人の把握
誰が法定相続人になるのか、その優先順位と範囲を正しく把握する必要があります。日本の民法では、亡くなった人の「配偶者」は常に相続人となり、その他の親族は以下の優先順位に従って相続人となります。
| 優先順位 | 法定相続人 | 備考 |
| 常に相続人 | 配偶者 | 婚姻関係にある妻・夫 |
| 第1順位 | 子 | 子が死亡している場合は孫:代襲相続 |
| 第2順位 | 直系尊属 (親や祖父母) | 第1順位の相続人がいない場合 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹 | 第1・第2順位がいない場合 兄弟姉妹が死亡している場合は甥・姪 |
戸籍謄本を出生から死亡まで遡って取得し、相続人を確定させます。遺産分割協議は「相続人全員」で行う必要があり、一人でも欠けると協議自体が無効になってしまうため、正確な確認が必要です。
参考:国税庁「No.4105 相続税がかかる財産」「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」,法務省「所有不動産記録証明制度について」
遺産分割協議への参加
遺言書がない場合、相続人全員で財産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を行います。
海外在住だからといって対面のために帰国する必要はなく、電話やWeb会議ツールなどを活用して参加可能です。合意後は遺産分割協議書を作成し、全員が署名・捺印(またはサイン証明の添付)を行って完了させます。
参考:法務省「相続登記の申請」「登記申請手続のご案内」,日本公証人連合会「遺産分割協議」
相続手続きに必要な書類の準備
海外在住者が相続手続きを行う場合、日本国内の居住者とは異なる特有の書類が必要です。
ただし、提出先や手続き内容によって求められる書類が異なり、書類の認証や翻訳が必要になるケースもあるため、早めに準備しておきましょう。
在留証明書
海外に住所を有していることを証明する書類で、住民票の代わりとして使用します。現地に3か月以上滞在している(または見込まれる)日本国籍の方が対象で、原則として現地の日本大使館・総領事館などで申請します。
なお、外国籍となった元日本人は在外公館で取得できません。海外の住所を証明する書類が必要な場合は、事前に専門家へ確認してください。
参考:
外務省「在外公館における証明」
署名証明書/サイン証明書
印鑑証明書を取得できない海外在住者が、遺産分割協議書等の署名が本人によるものであることを証明する書類です。現地の日本大使館・領事館や現地の公証人役場で発行されます。
参考:
法務省「外国に居住しているため印鑑証明書を取得することができない場合の取扱いについて」
外国語書類の翻訳・認証
海外で取得した外国語の書類を日本の手続きで使用する場合、日本語訳の添付を求められることがあります。また、現地公証人による認証やアポスティーユ(在外公館確認)が必要になる場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
参考:法務省「不動産登記」,外務省「公印確認・アポスティーユとは」
日本国内の手続きを代理人に依頼
相続手続きは、すべて自分一人で行う必要はありません。日本国内に住む親族への委任や専門家への依頼が可能です。
「不動産登記(司法書士)」「相続税申告(税理士)」「遺産分割の調整(弁護士)」など適した専門家が異なるため、自分で対応する範囲と任せる範囲を切り分けることがスムーズな進行のカギとなります。
相続税の申告(納税管理人の選任)
海外在住者が日本の相続税について手続きを行う場合、納税管理人を選任して税務署へ届け出ます。国内に住む親族や担当税理士が納税管理人となり、申告書の提出や納税、税務署からの連絡受領を代理で行います。
納税管理人を選任しておけば、海外にいながらでも国内の手続きを滞りなく完了できます。
相続税の納付
相続税の納付は、申告期限と同じ「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」に行わなければなりません。
納付の基本ルールと支払方法
相続税は、指定の納付書を使って金融機関や税務署の窓口で「現金で一括納付」するのが原則です。ただし、現在はキャッシュレス納付等、以下のような多様な方法が用意されています。
- 金融機関・税務署の窓口納付(現金)
- クレジットカード納付(専用サイトから納付。一定の手数料が発生)
- インターネットバンキング納付
- ダイレクト納付(事前に税務署へ届出をした預貯金口座から即時引き落とし)
海外在住者が納付する際の注意点
海外の金融機関から日本の税務署へ直接振り込むことは原則できません。そのため、以下のいずれかの方法で納付を進めるのが一般的です。
・納税管理人が代わりに納付する(国内の納税管理人の口座から納付・振込を行う)
・日本の自身の預貯金口座からネットバンキングやダイレクト納付で支払う
期限を過ぎると延滞税が課されるため、申告書の作成と並行して「誰のどの口座から、どうやって納税資金を出すか」を事前に決めておくことが非常に重要です。
参考:国税庁
「No.4138 相続人が外国に居住しているとき」
「B1-28 相続税・贈与税の納税管理人の届出手続」
「No.4205 相続税の申告と納税」「納税に関する総合案内」
海外在住者が注意すべき税務・法務のポイント

海外在住者が日本の親から財産を相続する際は、納税資金の準備や海外送金、居住国での税務上の扱いにも注意が必要です。
相続税の納期限と延納・物納
申告期限までに金銭で一括納付することが難しい場合、一定の要件を満たせば「延納」や「物納」を利用できます。
- 延納:税務署長の許可を得て、最長20年の分割払いができる制度(要担保・利子税が発生)
- 物納:延納によっても金銭での納付が難しい場合、相続財産そのものを納付に充てる制度
物納の対象は日本国内の財産に限られ、海外の不動産などは充てられません。また、海外在住者がこれらを利用する場合も納税管理人を通して行われるため、通常より時間を要します。検討される場合は、早めに税理士などへ相談しましょう。
参考:国税庁「No.4211 相続税の延納」「No.4214 相続税の物納」
国外送金と税務上の扱い
100万円を超える国外送金・受領があった場合、金融機関から税務署へ「国外送金等調書」が提出されます。相続預金を海外口座へ送金すること自体に課税されるわけではありませんが、後日税務署から資金の趣旨確認を求められることがあります。
相続預金を送金する際は、資金の裏付けとして相続税の申告書控え、遺産分割協議書、金融機関の送金・取引記録などの資料を保管し、いつでも説明できるようにしておきましょう。
参考:国税庁「Ⅲ 適正・公平な課税・徴収」
海外在住者が相続手続きを専門家に依頼する方法

相続手続きは「税金」「登記」「紛争対応」など、内容によって適した専門家が異なります。手続きをすべて自身でこなすのは困難なため、早期に「誰に何を依頼できるか」を整理しておくことが重要です。
専門家ごとの役割と選び方
相続に関わる専門家としては、税理士・弁護士・司法書士が挙げられます。しかし、一人の専門家だけですべての手続きが完結するとは限りません。必要に応じて、各専門家と連携できる事務所を選ぶのも一つの方法です。
税理士:相続税申告・税務相談
相続税の試算・申告や、各種控除・特例の適用についてサポートします。海外在住者の相続では、国外財産の評価や外国税額控除など国際税務の知識が不可欠なため、「国際相続」や「海外居住者の申告実績」が豊富な税理士を選ぶと安心です。
弁護士:相続トラブル・遺産分割対応
相続人同士で遺産の分け方が対立した場合や、交渉を代理で進めたい場合に頼りになります。代理人として他の相続人と直接交渉することや、裁判所での手続き(調停・審判)を代行できます。
司法書士:不動産登記・名義変更
相続登記の申請代理や登記関係書類の作成を担います。2024年4月からの「相続登記義務化」に伴い、日本の不動産を相続した海外在住者にとって必須の相談先です。在外公館で取得する署名証明書の扱いに慣れた司法書士であれば、相談しやすいでしょう。
海外対応実績とサポート体制の確認
専門家を選ぶ際は「国際相続の実績」を確認しましょう。海外発行証明書の扱いや、時差を考慮した連絡体制、国際郵便・メールでの柔軟なやり取りができるかがポイントになります。
また、税理士が「納税管理人」を引き受けてくれるかも事前に確認しておくと安心です。
海外在住の相続税は早めの準備・相談がカギ
海外在住者が日本の財産を相続する際、海外に住んでいるからといって日本の相続税がかからないわけではありません。また、海外在住者特有の提出書類も多いため、計画的な対応が求められます。
10か月の申告期限内に滞りなく進めるためにも正確な情報を把握し、必要に応じて専門家と連携しながら準備を進めていきましょう。
- 課税範囲の確認: 居住地・国籍・居住歴などで課税対象が変わる
- 期限の厳守: 相続税の申告・納税期限は原則10か月以内(延長なし)
- 書類の準備: 在留証明や署名証明など、在外公館での取得が必要な場合がある
- 送金資料の保管:100万円超の国外送金は税務署に調書が提出されるため、立証資料を残す
- 専門家の選定: 納税管理人を依頼できる税理士や国際相続に強い士業を選ぶ









