海外在住者が知るべき親の認知症と初期対応の重要性

海外在住という立場にいると、日本にいる親のちょっとした変化にすぐ気づくことが難しくなります。「最近、物忘れが増えたかも」「電話での会話がかみ合わない」――そんな違和感を覚えながらも、距離があることで判断を先延ばしにしてしまう方は少なくありません。
しかし、認知症は“早期発見・早期対応”が何より重要です。初期段階での気づきが、その後の介護の負担や家族の悩みを大きく左右します。
海外在住だからこそ知っておきたい、日本の認知症の現状と、親の介護にどう向き合うべきか。本記事では、遠くからでもできる備えと判断のポイントをわかりやすく整理します。
- 日本の認知症の現状と備えの必要性
- 日本の65歳以上の約3人に1人が認知症または軽度認知障害(MCI)
- 自分の親も例外ではないと認識し、日本の制度を理解することが重要
- 認知症には4つの種類があり、それぞれ症状が異なる
- 初期症状(変化)の早期発見と記録が重要
- 認知症は加齢による物忘れとは違い、脳細胞の損傷や働きの悪化が原因
- 日常生活での小さな変化に気づくことが、認知症の早期発見につながる
- 「違和感」を見逃さず記録に残しておくと、専門家への相談がスムーズ
- 家族ができるケアを知り、早めに対策を行う
- 本人のせいではなく、病気によるものだと理解する
- 感情的になりそうなときは、無理せず少し距離を取る
- 専門家に早めに相談し、一人で抱え込まないことが大切
※本記事は、海外在住者の老後・介護をサポートする一般社団法人Hearth(ハース)代表・よこばたけあやみ氏が、日刊サンで連載中のコラムに基づき、再構成したものです。
日本では高齢化が進み、認知症の人は年々増加しています。厚生労働省の調査では、65歳以上の高齢者の約3人に1人が、認知症または軽度認知障害(MCI)であるとの推計が発表されました。認知症は、もはや特別な病気ではなく「誰にでも起こりうる身近な問題」です。

海外在住者にとって重要なのは「親も例外ではない」という前提を持つことです。認知症はゆっくり進行することが多く、最初は家族も変化を察知できないケースが少なくありません。今は元気に見えていても、数年後に介護が必要になる可能性は十分にあります。
将来の帰国予定や仕事との両立を考えると、万が一に備えて早めに日本の医療・介護制度を理解しておくのがおすすめです。認知症の進行に応じた介護方法や制度活用のポイントを把握しておくことで、帰国時に迅速な対応が可能になります。
認知症の初期症状は、人によってさまざまです。親の様子が「以前と少し違う」と感じたら、それは認知症の初期サインかもしれません。単なる物忘れだけでなく、性格や行動の変化も認知症の兆候として現れることがあります。

そもそも認知症は、脳細胞の損傷や働きの悪化が原因で認知機能が低下した状態であり、加齢による物忘れとは異なります。両者には大きな違いがあるため、単に年齢のせいだと片付けず、早めに専門機関や医師に相談することが重要です。
認知症のサインを見逃して症状が進行すると、日常生活に支障をきたすようになります。認知症の最初の”変化”を見極めるポイントを理解し、早期発見につなげましょう。
何度も同じ話や質問を繰り返す
身なりを構わなくなった
以前より文字を書かなくなった
早朝や深夜に電話をかけてくる
冷蔵庫に賞味期限切れの食材が多い
通院日や外出の予定日を勘違いしてしまう
ゴミ出しを忘れることが増えた
会計時に小銭を出さなくなった
包丁を握る機会が減った
冷蔵庫に食材以外のものが入っている
表情が乏しくなった
季節や天候に合わない服を着ている
外出を避けるようになった
海外在住の場合、一時帰国やビデオ通話が変化に気づく貴重な機会です。認知症は早い段階での気づきがポイントなので、違和感を覚えたら「気のせい」と流さず、時系列で記録を残しておくと後々役に立つでしょう。
認知症の種類によって異なる症状
認知症と一口に言っても、種類によって症状は異なります。代表的なものは「アルツハイマー型認知症(67.6%)」「血管性認知症(19.5%)」「レビー小体型認知症(4.3%)」「前頭側頭型認知症(1.0%)」の4つです。

それぞれ症状の出方はさまざまで「性格の問題」と誤解されるケースも少なくありません。正しい理解が、家族の悩みを軽減する第一歩になります。
参考:政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」
親に認知症の兆しが見えたとき、海外在住であってもできることはあります。大切なのは、感情的に反応するのではなく、認知症についての理解と早めの対応を心がけることです。家族が意識したい3つのポイントを把握しておきましょう。

ー1. 本人のせいではないと理解する
怒りや混乱、同じ話の繰り返しは、性格の問題ではなく脳の変化による症状かもしれません。特に、認知症による暴言や暴力は、身近な家族に向かいやすくなります。暴言や暴力が出たときにはまず、それは認知症による症状であることを理解しましょう。
ー2. 状況に応じて距離を取る
感情的になりそうなときは、無理に向き合い続けず、一度距離を取ってみましょう。海外在住の場合、電話やオンラインでのやり取りが中心になりますが、うまくいかないときは距離を置く選択も必要です。自分自身の心身を守ることが、長く支える力につながります。
ー3. 専門家に早めに相談する
違和感を覚えたら、早めに専門家へ相談することが重要です。日本には地域包括支援センターなどの窓口があります。初期段階で相談しておくことで、介護保険の手続きや必要な支援につながりやすくなります。海外在住でも、情報収集と連携の準備は十分に可能です。
親の認知症は、海外在住の家族にとって大きな不安要素の一つです。しかし、何より大切なのは「一人で抱え込まない」こと。認知症の初期症状に対応する家族は、かなりの混乱やストレスを抱えることが多く、我慢し続けると心もカラダも壊れてしまいます。
日本には高齢の親や家族を支援する制度やサービスがたくさんあるため、介護者が一人で抱え込まず、専門家や制度の助けを上手に使うことが大切です。介護の専門家に相談することでサポートの幅が広がり、家族の負担軽減にも繋がるでしょう。
「サロンドハース」では、個々の状況に寄り添いながら最適なサポートをご案内します。ぜひお気軽にご相談ください。
※この記事のオリジナル版は、日刊サン連載『日本の介護最新情報 Vol.60・Vol.70』に掲載されました。
※執筆:海外暮らしINFO/監修:一般社団法人Hearth(ハース)代表 よこばたけあやみ氏










