老後・介護

日本の親の介護を考える海外在住者が直面する課題と解決策

live-abroad

海外在住の日本人にとって、日本に住む高齢の親の介護は避けて通れない課題です。物理的な距離や制度への理解不足など、遠く離れているからこそ直面する問題も多くあるでしょう。この記事では、海外から親の介護を考えるうえでの具体的な課題と解決策、将来に向けた備えについて詳しく解説します。

海外在住者が日本の親を見守る際に直面する課題

海外に住みながら日本の親の介護を考える際、物理的な距離や時差、制度の違いから様々な困難に直面しやすいのが実情です。海外在住者が直面しやすい主な問題について詳しく解説します。

遠距離による日常の見守り・情報共有の難しさ

海外在住者にとって最も大きな課題は、日本の親の日常生活を把握することの難しさです。定期的に電話やビデオ通話をしていても、親の体調や日常生活の変化に気づくことは容易ではありません。遠くに離れていると、親が心配をかけまいとして体調不良を隠すこともあるでしょう。

近隣住民や友人からの情報も直接得られないため、親の変化に気づくのが遅れるリスクがあります。日常的にサポートしてくれる近隣の親族や介護者との連携が不足していると、必要な情報が伝わりにくかったり誤解が生じたりして、適切な対応が遅れやすいのが現状です。

入院・通院・入所といった緊急時の対応の遅れ

突然の入院や手術などの緊急事態が発生した際に対応が遅れることは、海外在住者が最も心配する問題の一つです。手術同意書への署名、治療方針の決定、家族の立ち会いなどが必要なときにすぐ駆けつけられず、対応が遅れてしまう可能性があります。

海外からの航空券の手配、仕事の調整、現地の家族への説明など、必要な準備に時間がかかって帰国が遅れ、親本人が不安な状態で意思決定を迫られることもあるでしょう。最も必要な時に親のそばにいられないという精神的負担も大きな課題となります。

日本の介護制度やサービスの情報不足

海外在住が長期間に及ぶと、日本の介護保険制度や最新の情報を得るのが難しくなります。日本の介護保険制度は、要介護認定の手続きや各サービスの種類、利用条件などが複雑です。実際に介護が必要になってから調べ始めるケースが多く、制度の理解不足が手続きの遅れや不適切なサービス選定につながることもあるでしょう。

自治体ごとにサービス内容や窓口対応が異なるうえ、海外にいると実際に利用した人の声などを聞く機会もないため、情報収集に時間と労力がかかります。地域包括支援センターやケアマネジャーの役割、民間サービスとの違いなどが分からず、いざという時に適切な相談先を見つけられないことも少なくありません。

信頼できる支援体制づくりの難しさ

海外に住んでいると、近隣に住む家族や親族、地域の支援者との連携がとりづらいことも課題に挙げられます。特に一人っ子や兄弟姉妹が遠方にいる人の場合、親をサポートしたり緊急時に頼ったりできる人を見つけるのは難しいのが現実です。地域包括支援センターや見守りサービスといった事業者の見極めも、海外にいると容易ではありません。

親自身が第三者からのサポートに抵抗を示す場合も多く、信頼関係を築くのに時間がかかる場合もあります。複数のサービス提供者との連携や情報共有の仕組みづくり、緊急時の連絡体制の確立など、信頼できる支援体制を作るのは大きなハードルになるでしょう。

デジタル機器の利用やコミュニケーションの壁

スマートフォンやタブレットといったデジタル機器の操作に慣れていない親に対して、海外からサポートすることも非常に困難です。ビデオ通話アプリの設定、健康管理アプリの使用方法など、基本的な操作を教えるだけでも時間がかかります。海外と日本のインターネット事情やアプリの相性によっては、接続が不安定になることもあるでしょう。

さらに、耳が遠くなってきたり、認知機能が低下したりしている場合は、言葉のやりとりだけだと十分な理解や意思疎通が難しくなります。従来の電話でのコミュニケーションを好み、デジタル機器の使用に抵抗感を示す親世代も少なくありません。見守りカメラやセンサーなどの導入を検討しても、プライバシーの懸念から親が拒否するケースも見られます。

海外在住者の仕事・生活・お金にかかる負担

日本に住む親の介護問題は、海外在住者の現地での生活にも大きな影響を与えます。緊急時の帰国費用は高額になりやすく、頻繁な一時帰国や長期滞在にかかる費用は、経済的に重い負担となるのが現状です。帰国により仕事を一時的に休むことによる収入減や、キャリアへの影響も懸念されます。

時差の関係で日本の医療機関や介護施設からの連絡が早朝や深夜になったり、現地の勤務時間と重なって仕事中の対応を余儀なくされることもあるでしょう。現地での仕事や生活、子育てとの両立は、時間と経済面の両方で多くの負担を強いられることがあります。

親の老後を見守るために準備できること

海外在住者が親の介護に備えるためには「事前の話し合い」と「早期からの計画的な準備」が不可欠です。見守り体制を整えるために、海外在住者が今からできることを具体的に解説します。

親との定期的な連絡と将来の話し合い

日常的なコミュニケーションは、親の変化に早く気づく第一歩です。定期的な電話やビデオ通話で体調や生活の様子を聞くだけでなく、将来的な介護や医療についての意向も少しずつ確認していくことが重要です。

たとえば「どんな施設なら入ってもいいと思う?」「延命治療についてどう考えている?」といったデリケートな話題も、早めに話し合っておきましょう。事前に聞いておくことで、緊急時の判断に迷わず対応できます。海外在住者の場合は、一時帰国の際にまとまった時間を確保し、じっくりと向き合うことが大切です。

介護保険制度を活用する方法の把握

日本の介護保険制度は、高齢の親が安心して老後を過ごすための重要な支援制度です。制度の基本や申請の流れ、費用の目安などを正確に把握しておきましょう。

介護保険制度を申請するタイミング

海外在住者にとって、介護保険制度(要介護認定)を申請するタイミングを適切に判断することは非常に重要です。基本的に65歳以上になれば申請資格がありますが、実際には日常生活に支障が出始めた段階で申請します。40~65歳未満でも、脳血管疾患や関節リウマチなど、老化が原因の病気で介護や支援が必要になった場合も申請可能です。

たとえば、以下のような変化が見られたときが、申請を検討する目安です。

  • 最近転びやすくなった
  • 物忘れが目立つようになった
  • 料理や掃除が難しくなってきた
  • 外出する機会が減ってきた

申請から要介護認定が出るまでに数週間~1か月かかるため、できる限り早めに対応することが重要です。親の状態に不安を感じたら早めに地域包括支援センターに相談し、必要に応じて申請を検討しましょう。海外からでも電話相談できるため、親の状況を詳しく伝えることで適切なアドバイスを受けられます。

参考:全国の地域包括支援センター一覧

介護保険(要介護認定)の申請方法・必要書類

介護保険制度(要介護認定)の申請は親が住んでいる市区町村の介護保険担当課で行います。申請者は本人のほか、家族や民生委員、ケアマネジャー、地域包括支援センター職員などでも可能です。海外在住者が申請する場合は、一時帰国時に行うか、日本国内の親族や信頼できる第三者に委任して進めましょう。

申請時に必要な書類
  • 要介護認定申請書(役所の窓口または市区町村のホームページから入手)
  • 親の介護保険被保険者証(65歳以上)
  • 申請者(親または代理人)の本人確認書類
  • 親の個人番号確認書類
  • 委任状(代理人申請の場合)

要介護認定申請書には親の基本情報、現在の身体状況、通院歴などを記入する必要があります。代理申請する場合は、事前に親から情報を収集しておきましょう。申請後、市区町村から主治医に直接「主治医意見書」の作成が依頼されるため、必要に応じて医師との連絡調整も行っておくと安心です。

参考:千代田区 要介護・要支援認定の申請「介護認定申請書記入例

介護保険申請からサービス利用までの流れ

申請からサービス利用開始までの流れを理解することで、海外在住者も親の介護サービス利用をスムーズに進められます。介護保険制度(要介護認定)の申請からサービス利用までの主な流れは、以下のとおりです。

市区町村に要介護認定の申請を行う

認定調査(訪問による聞き取り)と主治医意見書の作成

介護認定審査会による判定(要支援1〜要介護5)

認定結果の通知(申請から約30日以内)

地域包括支援センターのケアマネジャーがケアプランを作成

サービス事業者と契約し、介護サービスを開始

海外から直接手続きを進めるのは難しいため、日本にいる家族や地域包括支援センターと連携し、段取りを把握しておくと安心です。電話やメールを通じてケアマネジャーと密に連絡を取り、親の希望と状況に適したサービス計画に参加しましょう。

参考:厚生労働省「介護サービス利用までの流れ

介護保険サービスの利用にかかる費用

介護保険サービスは、対象者の所得に応じて費用の1〜3割を自己負担する仕組みです。負担の割合は介護保険負担割合証に記載され、前年の所得に基づいて毎年8月に更新されます。

介護サービスの利用に伴う、要介護度別の支給限度額は以下のとおりです(2025年6月現在)。利用費用はサービスの種類や回数によって異なり、限度額を超えた分は全額自己負担となります。

要介護度支給限度額/月
要支援150,320円
要支援2105,310円
要介護1167,650円
要介護2197,050円
要介護3270,480円
要介護4309,380円
要介護5362,170円

高額介護サービス費制度により、所得に応じて月額自己負担額に上限(15,000~140,100円/月)が設けられていますが、居住費や食費などの日常生活費は介護保険の対象外です。施設サービスの利用時は、別途負担しなければなりません。親の収入とサービス費用を把握し、自己負担分の支援が必要かどうかを判断しましょう。

家族・親族との役割分担の明確化

海外在住者が親の介護に関わる際、日本にいる家族・親族との連携と役割分担が成功の鍵となります。それぞれの立場と能力を考慮した効果的な分担方法を検討しましょう。

兄弟家族

兄弟姉妹が日本に住んでいる場合は、現地での見守りや緊急対応を中心に役割分担を相談しましょう。それぞれの居住地、仕事の状況、家族構成に応じて役割を話し合います。介護費用の分担も事前に話し合い、それぞれの経済状況に合わせて公平な負担方法を決めておけば、後々のトラブルも避けられるでしょう。

重要なのは、一人に負担が集中しないよう配慮することと、定期的な情報共有の仕組みを作ることです。定期的に親の状況報告と今後の方針を話し合い、継続的なコミュニケーションを維持します。感情的な負担や不満を避けるため、こまめに情報を共有し、お互いへの感謝の気持ちも忘れないようにしましょう。

日本在住の家族が担える役割の例
  • 定期的な訪問と見守り
  • 緊急時の対応
  • 病院への付き添い
  • ケアマネージャーや介護サービス事業者との連絡・調整
  • 日常生活や介護に関する各種書類の提出・手続き など
海外在住者が担える役割の例
  • 電話やビデオ通話での安否確認
  • 金銭管理(オンラインバンクでの銀行振込や年金・公共料金の管理)
  • ネットでの生活用品・介護用品の購入・手配
  • 介護サービスの情報収集 など

親族

いとこ、甥姪、親の兄弟姉妹など、日常的に接点のある親族にも協力を依頼しましょう。親の居住地近くに住む親族は、緊急時の一時的な対応や日常的な見守りをしてもらえる可能性があります。緊急連絡先や地域包括支援センターとつながる役割を担ってもらえると安心です。

しかし、親族への依頼は慎重に行う必要があります。相手の負担や都合を十分に考慮したうえで協力をお願いしましょう。たとえば、月1回の安否確認の電話や、緊急時の一時的な付き添いなど、明確で限定的な役割を依頼するのが効果的です。親族には謝礼や贈り物でお礼の意を示し、長期的な協力関係を維持することがトラブルの防止につながります。

介護費用の送金や手続きの準備

海外在住者にとって介護費用の管理と送金は複雑な課題であり、事前の準備が不可欠です。介護にかかる費用は、サービス利用料、医療費、福祉用具購入費など多岐にわたります。親の収入(年金、預貯金等)で費用が不足する場合は、海外から送金する必要も出てくるため、国際送金の方法や手数料、送金スピードを比較検討して準備を整えておきましょう。

親の代理で金融機関や介護サービス事業者への支払いができるよう、支払い口座の共有や委任状の準備、家族信託の活用も検討する必要があります。海外の税務申告において、親への援助が控除対象になる場合があるため、現地の税理士に相談し、適切な手続きを行うことが重要です。

費用の管理・送金に関する準備の具体例
  • 日本国内に介護用の口座を作成し、家族が管理できるようにしておく
  • 緊急出費に備え、一定額の預金を介護用の口座に残しておく
  • 海外送金サービを比較し、利用手続きをしておく
  • 円建てでの送金タイミングを計画し、為替レートの変動リスクを意識する
  • 親族に費用管理を委任する場合は、事前に話し合いと信頼関係を築いておく

海外から親の老後・介護の課題を解決する方法

海外にいながらでも、日本に住む親の介護を支える方法は増えています。公的・民間サービスやオンラインツールを上手に活用することで、遠距離でも安心できる支援体制を整えることが可能です。

介護サービス・支援体制の活用

海外からの遠距離介護では、信頼できる現地の支援体制が重要です。日本には公的・民間の多様なサービスがあるため、親の状態や家族の状況に合わせて使い分けましょう。

公的サービス

日本の介護保険制度を利用すれば、訪問介護、デイサービス、ショートステイ、特別養護老人ホームへの入所など、生活の質を支える多様なサービスを受けられます。介護保険で利用できるサービスは、主に以下のとおりです。

居宅
サービス
訪問型 訪問介護、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリなど
通所型 デイサービス、通所リハビリなど
宿泊型 短期入所生活介護(ショートステイ)など
複合型小規模多機能型居宅介護(訪問+通所+宿泊の組み合わせ)

施設
サービス
介護福祉施設 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設
介護医療院、介護療養型医療施設など
特定施設入居者生活介護 有料老人ホーム、軽費老人ホームなど

地域密着
サービス
訪問型 定期巡回、随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護など
通所型 地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護など
宿泊型 地域密着型小規模多機能型居宅介護
(訪問+通所+宿泊の組み合わせ)
施設型 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
地域密着型特別養護老人ホーム
地域密着型特定施設入居者生活介護 など

そのほか、歩行器、車椅子、手すりといった福祉用具のレンタルも利用可能です。自治体によっては見守り訪問や高齢者安否確認サービス、緊急通報システムなど独自の取り組みも行われています。公的サービスは民間に比べ費用が安価で信頼性が高いので積極的に活用し、親の生活を支える基盤にすることが重要です。

民間サービス

介護保険の対象外となるサービスは、民間事業者による有料サービスで補うことが可能です。たとえば、以下のようなサービスを利用できます。

介護に利用できる民間サービスの例
  • 見守り代行サービス(定期訪問・緊急時の駆けつけ・センサーの設置など)
  • 家事代行・買い物代行サービス
  • 通院付き添い・外出同行サービス
  • 高齢者専門の宅配食サービス
  • 自費での訪問介護や24時間体制でのサポート

最近では、スマホアプリで日々の報告が届く「遠距離介護特化型サービス」も登場しており、海外からでも見守りやすくなっています。民間のサービスは公的サービスに比べると費用は高めですが、柔軟性があり必要なときに都度利用できるのが魅力です。

あわせて読みたい
海外在住者が介護保険サービスや民間サポートを利用して親を見守る方法
海外在住者が介護保険サービスや民間サポートを利用して親を見守る方法

遠距離から見守れるオンラインツールの活用

介護の現場でもITの活用が進んでおり、海外在住者でも親の日常生活をリアルタイムで見守れるようになってきました。たとえば、以下のようなオンラインツールが遠距離介護で利用されています。

遠距離介護に有用なオンラインツールの例
  • 見守りカメラ(家の中の様子をスマホで確認)
  • センサー付き機器(ドア開閉・トイレ使用・体動感知など)
  • 健康モニターアプリ(血圧・体温・服薬状況などを共有)
  • LINEやZoomといったコミュニケーションツールでの定期的なビデオ通話
  • 介護記録共有アプリ(CareViewerなど)

オンラインツールを組み合わせて活用することで、親の生活リズムや異変を即時に把握しやすくなります。日本にいるケアマネジャーや親族との「情報共有ツール」としての活用も効果的です。

医療・介護関係者との連携

海外在住者が親の医療・介護をサポートするためには、関係者との効果的な連携体制が不可欠です。以下のような方法で、情報共有や意思疎通を図りましょう。

  • ケアマネジャーと定期的に電話・メールで連絡を取る
  • 医師や介護施設とZoomなどで面談を行う
  • 日本にいる親族や信頼できる第三者を「連絡担当代理人」に指定する
  • 書面による「委任状」や「同意書」を用意しておく
  • 医療・介護関連の記録をクラウドで共有する体制を作る

海外から親を見守るうえで重要なのは「情報が途切れない」ように工夫することです。関係者とこまめに連絡を取り合えば、親の状態を正確に把握でき、医療・介護の方針を決めるときなどに適切な判断ができるでしょう。

緊急時の連絡・支援体制の確保

海外在住者が最も不安に感じるのは、親の急病や事故といった緊急時の対応です。対応が遅れるリスクを軽減するために、以下のような備えをしておきましょう。

  • 日本にいる親族・近隣の知人に「緊急連絡先リスト」を共有
  • 民間の見守りサービス(安否確認、緊急通報)を利用
  • 地域包括支援センターや主治医の連絡先リストを常備
  • 病院や介護施設に、緊急時の連絡先として海外の電話番号を知らせておく
  • 海外からでも即連絡可能な通信手段(Wi-Fi電話、LINEなど)の確認
  • パスポートや帰国手配の準備を常に整えておく

備えを怠らないことで「もしものとき」に冷静かつ迅速な対応が可能になります。万が一の事態に備えて、緊急時の対応体制をしっかり整えておきましょう。

ポイント:「介護=現地に行かなければできない」から意識を変えよう

「近くにいないと介護できない」という思い込みは、今や過去のものになりつつあります。ITツールと支援サービスを活用すれば、海外からでも親を見守り、支えることは十分可能です。大切なのは、介護の“かたち”を柔軟に捉えることです。「できること」にフォーカスし、無理なく持続できる仕組みを整えましょう。

帰国のタイミングを判断するポイント

海外在住者が最も悩むのは、帰国のタイミングです。一時帰国で対応できる場合と本帰国を検討すべき状況を見極め、適切に判断するためのポイントを解説します。

一時帰国で対応できるケースとは

基本的な日常生活に変化が見られない場合、一時帰国での定期的なサポートで十分対応が可能です。具体的に、以下のようなサポートであれば、数か月~1年に1回程度の帰国でも対応できるでしょう。

  • 介護認定の申請や更新手続き
  • ケアマネジャーとの面談や介護プランの見直し
  • 医療機関での検査結果の説明や入退院への立ち会い
  • 介護サービス事業者との契約や打ち合わせ
  • 家の改修や福祉用具導入の立ち会い
  • 親族間での役割分担や話し合いの場への参加

一時帰国中は、集中的に対面での調整や契約を進め、帰国後はオンラインでのフォローアップに切り替える方法が効果的です。親の健康状態がまだ安定している場合は、無理に本帰国を急ぐ必要はありません。基本的な判断能力が保たれている段階では、見守りサービスや家事支援サービスを充実させることで、海外からでもサポートが可能です。

海外在住者が一時帰国する場合、航空券を手配するための日程調整や、日本滞在中のスケジュール管理が必要です。介護目的の一時帰国であっても、心身への負担は大きくなるため、滞在先やサポート体制を事前に確保しておきましょう。

本帰国を検討すべき状況とは

現在の支援体制で親の安全確保や生活の質の維持が困難になった場合、本帰国を真剣に検討すべきタイミングといえます。要介護3以上に認定され、食事や入浴など日常生活の多くの場面で介助が必要になった状況では、家族による直接的なサポートの重要性が高まるでしょう。具体的には、以下のようなケースが考えられます。

  • 親が認知症を発症し、24時間の見守りが必要になった
  • 一人暮らしで介護サービスを拒否し、安全確保が困難になった
  • 親が頻繁に入退院を繰り返すようになった
  • 緊急対応が間に合わない、日本の家族だけで支援が不十分
  • 近くにいる家族や親戚の病気、転居などで支援体制が破綻した
  • 親が強く同居を希望するようになった

自身の仕事や家族生活に大きな影響が出ている場合にも、本帰国の検討は避けられません。本帰国は海外在住者の人生設計に大きな影響を与えるため、現地の家族との話し合い、現地での仕事の調整、日本での生活再建の準備など、慎重な計画が必要です。

自治体によっては、介護離職後の再就職支援や介護者向けの地域サービスが用意されていることもあります。必要に応じて、ハローワークや地域包括支援センターで情報を収集しておきましょう。

離れて暮らす親の介護は早めの準備がカギ

海外在住であっても、日本にいる親の介護に関して無関係ではいられません。介護は突然始まることも多く、事前の話し合いや情報収集を怠ると、対応が後手に回ってしまいがちです。海外からでもできることは確実にあるため「介護=現地で直接行うもの」という考え方から脱却し、親が元気なうちから「もしものとき」に備えた準備を始めましょう。

あわせて読みたい
海外在住者が日本の親を介護するために準備すべきこと
海外在住者が日本の親を介護するために準備すべきこと
記事URLをコピーしました