子育て・教育

海外在住の子どもは現地校と日本人学校のどちらにすべき?

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海外で子育て中の方にとって、子どもを「現地校」と「日本人学校」のどちらに通わせるべきかは大きな悩みの一つです。学習環境や将来の進路、言語力の育成など、検討すべきポイントは多岐にわたります。この記事では、それぞれの学校の特徴や選び方、迷ったときの対処法まで、親として知っておきたい情報を詳しく解説します。

現地校と日本人学校の比較

海外で子育てをする家庭にとって、子どもを現地校と日本人学校のどちらに通わせるかは悩ましい問題です。それぞれのメリットとデメリットをよく把握したうえで決断しましょう。

現地校のメリット・デメリット

現地校はその国の教育制度に基づいたカリキュラムで授業が行われます。語学や文化の習得には効果的ですが、日本との違いも多いため、慎重な検討が必要です。

現地校のメリット

現地校のメリット
  • 現地語を自然に習得できる
  • 現地の文化や価値観に触れ、多様性への理解が深まりやすい
  • 多様な学習機会に恵まれ、柔軟な思考力や想像力が身につきやすい
  • 現地の子どもとの交流から、コミュニケーション力や適応力が育まれやすい
  • 国際的な感覚を育てられる

現地校の最大のメリットは、現地語(英語やその国の言語)を自然に習得できる点です。日常生活の中で現地の文化や価値観に触れることで、多様性への理解も深まります。現地独自の科目や教育方針により、日本では体験できない学習機会に恵まれ、柔軟な思考力や創造力も養われるでしょう。

さらに、現地の子どもたちとの交流により、コミュニケーション力や適応力も育まれます。グローバル社会を生き抜く力を養いたい家庭にとっては、国際的な視野を持った人材として成長する基盤を築けることは大きな魅力です。

現地校のデメリット

現地校のデメリット
  • 言葉の壁が学習や友人関係に影響を与えやすい
  • 言葉の壁や文化的な違いによる戸惑い、ストレスを感じやすい
  • 日本語の読み書き能力に影響が出る可能性がある
  • 日本の学校への進学・編入が難しくなる場合がある

現地校に通う場合、言語の壁が学習や友人関係に影響を与えるリスクがあります。とくに渡航初期は、授業の内容が理解できずにストレスを感じる子どもも多いのが現実です。文化的な違いによる孤立感や、日本の教育スタイルとの違いによる戸惑いを感じやすいことも見逃せません。

現地語が上達する一方で、日本語(とくに読み書き)の発達に影響が出る可能性もあります。家庭で意識的に日本語環境を整えないと、日本語の読み書き能力が同年代の日本の子どもより劣ってしまうリスクがあるでしょう。日本の学習指導要領とはカリキュラムが異なるため、将来的に日本の学校への進学・編入に不安が生じる可能性もあります。

日本人学校のメリット・デメリット

文部科学省の指導要領に沿った教育が行われる日本人学校は、海外にいながら日本と同じ教科書や授業内容で学べる貴重な環境です。ただし、日本語環境で安心して学べる一方、現地との接点の少なさが課題になる場合もあります。

日本人学校のメリット

日本人学校のメリット
  • 日本の学校と同じ教育を受けられる
  • 日本の学校の受験や編入にも対応しやすい
  • 日本人のアイデンティティを育める
  • 先生と日本語でコミュニケーションが取れる
  • 現地語の授業を取り入れている学校もあり、言語をバランスよく学べる

日本人学校の大きな魅力は、日本国内の学校と同じ教育を受けられる点です。国語や算数・理科・社会といった教科は日本語で指導されるため、学習内容のギャップが少なく、帰国後の受験や編入にも対応しやすくなります。豆まきやかるた大会といった日本文化を学ぶ機会も得られ、日本人のアイデンティティを育める点も魅力でしょう。

教師は日本から派遣されたり、現地で採用されたりした日本人なので、日本語でやり取りができ、生活面でのストレスが軽減されやすいことも安心材料です。一部の学校では現地語の授業も取り入れており、バランスよく学べる環境が整っています。

日本人学校のデメリット

日本人学校のデメリット
  • 現地語に触れる機会が限定され、ネイティブレベルになるのは難しい
  • 多文化への適応力や国際感覚が育ちにくい
  • 高等部がない地域では、中学卒業以降の進路が問題になりやすい
  • 日本人学校卒業者を帰国子女枠の対象外とする場合がある
  • 給食がない、居住地によっては学校が遠いといった問題もある

日本人学校で学ぶデメリットは、現地語に触れる機会が限定されることです。日本語中心の環境で学ぶため、ネイティブレベルの語学力を習得するのが難しくなります。現地の子どもと交流する機会が少なく、多文化への適応力や国際感覚が育ちにくいこともあるでしょう。

高等部がない地域では、中学卒業後の選択肢が限られてしまう点も問題です。帰国子女枠での高校・大学受験を考えている場合、日本人学校出身者を対象外とするケースがあることも認識しておく必要があります。給食がなくお弁当が必要だったり、居住地によっては学校が遠かったりと、生活面での負担も無視できません。

ポイント:補習授業校も選択肢に

現地校と日本人学校の中間的な選択肢として「補習授業校」もあります。週末や放課後に日本語で国語や算数などを教える学校で、現地校に通いながら日本語力を維持・向上させるために利用する家庭も少なくありません。

日本人学校が近くにない場合や、現地校に通いながら日本語教育も確保したい家庭にとっては、柔軟な選択肢となります。ただし授業時間が限られているため、家庭学習との併用が重要です。場合によっては子どもの負担が大きくなることもあるので、慎重に検討する必要があります。

現地校か日本人学校かの選択を判断するポイント

学校の選択は、子どもの将来に大きく影響する重要な決断となります。子どもの年齢や滞在期間、家庭の価値観、将来設計など複数の要素を総合的に判断し、慎重に決断しましょう。

子どもの年齢・学年・時期

子どもの成長段階によって、適応力や言語習得の柔軟性が異なります。どの時期にどの学校を選ぶかで将来に与える影響も大きく変わるため、言葉を覚えるのに最適な時期や、学習内容の違いを考慮することが重要です。

幼稚園~小学校低学年

幼児期から小学校低学年までは、日本語の基礎力を育てる大切な時期です。言語の発達が不十分なまま現地校に通うと、日本語の読み書きの習得が遅れる可能性があるため、日本人学校でしっかりと母語としての日本語を学び、基盤を整えることが推奨されます。

小学校低学年くらいまでの時期は、文化的アイデンティティを形成する段階です。日本人学校では日本の行事や伝統に触れる機会が多く、日本の文化や価値観に触れられるため、自分のルーツを理解するのにも役立つでしょう。

ただし、日本に帰省予定がなく、現地での生活が長期にわたる見込みがある場合は例外です。とくに二重国籍で、将来的に現地での進学や就職を視野に入れている子どもは、現地校に通うことで現地の言葉や文化、価値観を身につけられる利点があります。家庭内での日本語教育や補習校などを併用すれば、日本語と現地語のバイリンガルも叶うでしょう。

小学校高学年

小学校4年~6年生は、学校選択の判断が難しい時期です。一つの目安として、帰国の予定や、日本の教育制度で進学する予定がある場合は、日本人学校で学習を継続するのが望ましいでしょう。

10歳頃だと基礎的な日本語能力はある程度身についていますが、学習内容が複雑になり始める時期のため、現地校では言葉の壁による学習遅れのリスクがあるためです。

一方で、すでに一定の日本語能力があれば、現地校にチャレンジして現地語の習得や多文化交流を深めるという選択もあります。滞在期間が長期に及ぶ場合や、子どもの適応力が高い場合は、現地校に通うことも検討してみましょう。家庭の教育方針や子どもの性格に応じて柔軟に考えることが重要です。

中学生・高校生

中学・高校の年齢になると、自身の進路や将来の目標が見え始めてくるため、進学先を意識した学校選びが重要になります。本での大学進学を目指す場合は、日本人学校や日本のカリキュラムに近い教育機関の方が有利です。

一方、現地や第三国の大学進学を視野に入れるなら、現地校で学ぶのが適しています。とくに英語圏では、高い英語力を身につけることで将来のキャリア選択の幅が大きく広がるでしょう。本人の意思や適応力、受験対策とのバランスを慎重に見極める必要があります。

滞在期間と将来の見通し

海外滞在の期間は、学校選択において最も重要な判断基準の一つです。滞在期間の長さや帰国予定の有無によって、選ぶべき学校の方向性が変わります。

2年未満の短期滞在の場合

1~2年の短期滞在であれば、帰国後の教育との連続性を保つために日本人学校に通うのが望ましいでしょう。とくに受験を控えた学年の場合、現地校ではカリキュラムの違いや言語の壁で不利になる可能性もあります。

日本人学校では国内と同様の教科書・授業内容で進められるため、帰国後の編入や進学にもスムーズに対応しやすいことが利点です。日本語による学習を維持することで、学力のギャップを最小限に抑えられるでしょう。

2年以上の長期滞在予定または未定の場合

長期滞在や滞在期間が未定の場合は、現地校への通学を積極的に検討すべきです。十分な時間があれば言語の壁を乗り越え、現地の教育制度に適応できる可能性があります。現地での進学も視野に入れることで、将来的に選択肢が広がるでしょう。

ただし、日本語能力の維持には特別な配慮が必要です。家庭学習や補習校の活用、定期的な一時帰国などを通じて、日本語能力の低下を防ぐ工夫が欠かせません。長期的な視点で子どもの言語能力をバランス良く育成することが重要です。

言語力(日本語・現地語)のバランス

日本語と現地語の両言語をバランスよく育てるには、日本語の基礎を家庭でしっかり支え、現地語は学校生活の中で自然に習得する形が理想です。しかし、子どもの現在の言語能力や将来的に目指したい言語レベルによって、適切な学校は異なります。バイリンガル教育の理想と現実のギャップを理解し、現実的な目標を設定することが重要です。

どちらの言語も中途半端になるリスクを避けるためには、家庭での言語使用ルールや学習サポート体制を整える必要もあります。どちらか一方に偏りすぎると思考力や学力に影響し、子どもの将来に影響を及ぼしかねません。現地校に通わせる場合は、日本語能力を維持するために、補習校や通信教育、読書支援などを活用しましょう。

保護者の教育方針と価値観

どの学校を選ぶかは、家庭ごとの教育観や価値観にも大きく左右されます。国際的な人材育成を重視するか、日本的な教育を大切にするか、明確なビジョンを持つことが重要です。「グローバル人材として育てたい」「日本の受験に備えたい」「安心できる環境でのびのび育てたい」など、親が描く将来像によって選ぶべき道は変わります。

ただし、子どもの個性や適性を十分に考慮し、その子にとって最適な環境を選択することが何よりも大切です。保護者の価値観を押し付けるのではなく、子どもの意見も尊重しながら、家族全体のライフプランや教育観とすり合わせることが、最も納得のいく選択につながるでしょう。  

学校の選択による進路や将来への影響

現地校と日本人学校のどちらに通うかは、子どもの将来の進路や進学先に少なからず影響を及ぼします。とくに中学・高校以降は、大学受験から就職まで長期的な視点を持って選択することが重要です。

現地校から日本の高校・大学進学を目指す場合

現地校から日本の教育機関への進学を目指す場合は、計画的な準備が必要です。帰国子女としての優遇措置を活用できる一方で、日本の教育制度との違いによる課題も存在します。

現地校から日本の高校への進学・編入

現地校から日本の高校に編入する場合、学習内容の違いが大きな壁となるでしょう。特に数学や理科では、日本の学習指導要領と現地のカリキュラムに差があることが多く、追加学習が必要になるケースが少なくありません。日本語での表現力や漢字の読み書き能力が不足し、国語や社会科での苦労も予想されます。

帰国子女枠を活用した高校受験でも、日本語での読み書きや記述試験、小論文、面接などが求められるので、日本語力の維持と強化は欠かせません。補習校や通信教育などを併用し、日本語での学力を保つ努力が必要です。

現地校から日本の大学への進学

大学受験では帰国子女枠を活用し、有利な条件で受験できる可能性があります。多くの大学では帰国子女向けの特別入試を実施しており、一般入試とは異なる評価基準が適用されます。英語力や国際経験が高く評価される傾向があり、現地校での学習経験が大きなアドバンテージとなるでしょう。

ただし、帰国子女枠は、海外滞在期間や現地校での在籍期間、帰国からの経過年数といった要件を満たす必要があります。募集人数も限られているため、競争は決して楽ではありません。一般入試への対策も並行して進めることが賢明です。

ポイント:帰国子女枠や受験で考慮すべきこと

帰国子女枠受験では、単なる学力だけでなく、海外経験を通じて得た独自の視点や国際性が重要な評価要素となります。

小論文や面接では、異文化体験から学んだことや、将来のビジョンを明確に表現する能力が求められるでしょう。英語資格試験(TOEFL、IELTS、英検など)のスコアも重要な判定材料となるため、計画的な受験が必要です。

なお、帰国子女枠は全ての大学・学部で設けられているわけではありません。志望校の受験情報を早期に収集し、必要な準備を進めることが重要です。一般入試との併願も視野に入れ、幅広い選択肢を確保しておくことをおすすめします。

日本人学校から現地や他国の学校へ進学する場合

日本人学校から現地の高等教育機関や第三国への進学を目指す場合、日本式教育の利点を活かしながら、国際的な基準に対応する必要があります。日本人学校卒業後の進路と、日本以外の大学進学における課題を把握しておきましょう。

日本人学校卒業後の進路

日本人学校で学んでも、進路の選択肢は日本国内だけではありません。近年では、現地の国際高校や、他国のインターナショナルスクールへの進学を検討する家庭が増えています。たとえば、国際バカロレア(IB)プログラムを提供している日本人学校では、世界共通の大学入学資格を取得できるため、より多くの選択肢から進路の検討が可能です。

海外の大学進学における課題と対策

日本人学校の卒業資格は、多くの国で高校卒業と同等の学歴として認められています。しかし、海外の大学入学資格として認められるかは国や大学次第です。とくに英語圏にある多くの大学では、TOEFL、IELTS、SATといった標準テストでの高得点が求められます。

現地校とは評価方法や学年区分が異なるため、出願時に追加書類や語学試験が必要になるケースも少なくありません。現地の大学が重視するエッセイ(志望理由書)の作成や面接対策も、現地の教育システムに慣れ親しんでいない分、より入念な準備が必要です。

一方で、日本人学校で培った基礎学力や学習習慣は、大きな強みとなります。とくに数学や理科系の科目では、日本の教育水準の高さが評価されることが多いでしょう。日本式の教育で得た強みを活かしつつ、国際的な水準に合わせることが成功への道を開くでしょう。

迷ったときに親ができるサポートとは

学校選びに正解はなく、子どもの状況や環境により最適な選択は変わります。重要なのは子どもの気持ちを尊重しながら、長期的な視点でサポートすることです。迷ったときこそ、親のサポートや柔軟な対応が大きな助けになるでしょう。

子どもとの対話と意思確認

学校選びで最も重要なのは、子ども自身の気持ちを尊重することです。言葉の不安や友達関係、将来の夢など、子どもなりに感じていることが必ずあります。

親が一方的に決めるのではなく、日常の会話の中で学校生活に対する気持ちや希望を丁寧に聞き取ることが大切です。たとえ低年齢であっても、小さな違和感を見逃さず、安心して話せる環境をつくることで、より良い選択につながるでしょう。

日本語力維持の工夫

現地校を選んだ場合、とくに気を付けたいのが日本語力の維持です。日本語での読み書きや表現力が弱まると、将来の進学や帰国後の生活に支障が出ることもあります。

家庭での読書習慣や日本語での会話を意識的に取り入れるほか、日本語の補習校やオンライン教材、国語ドリルなどを活用するのも効果的です。学年が上がるほど学習内容は高度になるため、早めに無理のない形で学びの習慣を作っておくことが成功の鍵となります。

一時帰国での体験入学を有効活用

一時帰国のタイミングで、日本の学校に体験入学するのも有効な方法です。日本の授業や学校文化を実際に体験することで、子ども自身が比較しやすくなり、将来の進学に向けた適応力も養われます。実際に学校生活を体験することで「日本に戻ったときの自分」をイメージしやすくなり、モチベーションの向上にもつながるでしょう。

体験入学では、子どもの日本語能力や学習レベルを客観的に評価できる点もメリットです。同年代の日本の子どもたちとの学習について行けるか、コミュニケーションに問題はないかを確認することで、帰国時期の判断材料にできます。体験入学は市区町村や教育委員会に事前申請が必要なため、早めの準備と情報収集が大切です。

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途中変更も視野に入れる柔軟性も必要

一度決めた学校にずっと通う必要はありません。子どもが新しい環境に合わなかった場合や家庭の事情が変わった場合には、現地校から日本人学校へ、日本人学校から現地校へと転校するケースも多くあります。

最初は現地校に入れて言語や文化に慣れた後、日本人学校へ移る、またはその逆も選択肢の一つです。親が柔軟に対応し、必要なサポートを惜しまない姿勢こそが、子どもにとって安心材料になります。

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