日本の運転免許証を持つ人が外国で運転するには、国際運転免許証が必要です。しかし、中には国際免許を取得しても運転できない国があるのはご存じでしょうか。また、日本の免許証で運転できたり、現地の免許証に切り替えたりできる国もあります。
国際免許を準備したのに運転できない、なんてことのないよう渡航前にチェックしておきましょう。
短期滞在なら国際運転免許証を利用しよう
1年以内の滞在を予定しているのであれば、国際運転免許証(IDP)を取得して渡航するのが確実です。なお日本においては、外国で運転するためのものを「国外運転免許証」、外国免許を有する人が日本で運転するためのものを「国際運転免許証」として区別しています。
国際免許で運転できるのは、ジュネーブ条約加盟国のみ
日本で発給された国際運転免許証は、ジュネーブ条約に加盟している国でのみ有効です。ジュネーブ条約を締結していない中国(香港・マカオ除く)やベトナムなどでは、国際免許を持っていても運転できません。
参考)ジュネーブ条約加盟国一覧
有効な日本の免許証があれば誰でも申請可能
国際運転免許証は、有効な日本の運転免許証を持っている人であれば誰でも申請できます。申請に必要な書類、取得までにかかる時間などを事前に確認し、余裕を持って手続きを進めましょう。
各都道府県の免許センター・免許試験場で申請
住民登録されている各都道府県の運転免許更新センター・運転免許試験場で申請ができます。神奈川県・福岡県など、一部の都道府県では指定警察署でも申請可能です。
ただし、免許センター・免許試験場であっても、対応窓口を限定している場合があるため、各都道府県警察のホームページなどで事前に確認してから訪問しましょう。
申請には渡航を証明する書類が必須
申請時には運転免許証・写真などのほか、パスポート・海外赴任証明書などの渡航を証明する書類が必要です。
運転免許証 | 有効期限内のもの |
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証明写真1枚 | 縦5cm×横4cm、申請前6か月以内に撮影したもの ※パスポート用より大きいので注意 |
渡航を証明する書類 | ・パスポート(原本の提示) ・海外赴任証明書・留学証明書・eチケット(控)・ホテル等の予約表・VISA申請中の書類など(書面での提出) |
古い国外運転免許証 (ある場合) | 古い国際免許証を所持している場合、返納しないと新たに交付できない場合あり |
手数料 | 2,350円 |
本人が申請するのが原則ですが、出国後であれば親族などが代理申請できます。その場合は、上記のほかに次の必要書類も準備しましょう。代理申請であっても、運転免許証は原本が必要ですので注意してください。
パスポートのコピー | ・未使用のページを含む全ページ(出入国時のスタンプ必須) |
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委任状等 | ・本人から代理人にあてた依頼文書 ・自筆の署名が必要な場合あり |
代理人の身分証明証 | 運転免許証等 |
免許センター・試験場は即日交付。警察署は2週間以上
免許更新センターや免許試験場で申請すると、多くの場合は即日交付されます。ただし、警察署や一部試験場では2週間以上かかる場合もあるため、余裕を持って申請しておくと安心です。
交付後1年有効。日本の免許の期限にも注意しよう
国際運転免許証は日本国内で交付されてから1年有効です。外国では現地に上陸してから1年間有効(例外の国・都市あり)ですが、交付日に外国に上陸するケースは稀なため、実際に外国で運転できるのは1年よりも数日短くなります。また更新はできないため、1年を過ぎた場合は新たに申請が必要です。
なお、国際運転免許証の有効期限内であっても、日本の運転免許証が失効すると外国で車の運転はできません。日本の免許の更新期間に海外滞在予定である場合は、期間前更新を済ませてから国際免許証を申請するとよいでしょう。
有効期間が満了した国際運転免許証は、最寄りの運転免許試験場または警察署への返納が義務づけられています。返納しなかったり破棄してしまったりすると、新たに申請するときに交付されない可能性もあるので注意が必要です。
車の運転時は、国際免許と日本の免許の両方を携帯しよう
車を運転するときは、国際免許証だけでなく日本の運転免許証も携帯しなければなりません。国際運転免許証はあくまで許可証にすぎないため、日本の免許を携帯することで有効になります。
場合によってはパスポートの提示を求められたり、日本の運転免許証の翻訳書が必要だったりするケースもあるので、滞在国の大使館などの情報を確認しておくと安心です。
なお、レンタカーを借りる場合には、このほかにビザやクレジットカードなどが必要な場合があります。レンタカーを利用する予定があるなら、あらかじめ携帯して訪問するか、事前に問い合わせておきましょう。
一部の国・地域では日本の免許で運転可能
ジュネーブ条約に加盟していない国では、国際運転免許証を持っていても車の運転はできません。しかし、ドイツ・スイス・台湾のほか、アメリカのハワイ・グアム・サイパン・カリフォルニア州では、日本の運転免許証で運転することが認められています。
運転できる期間はそれぞれ入国から1か月~12か月間と制限があるため、滞在期間を証明するためにパスポートも必ず携帯しましょう。
ドイツ:日本免許+ドイツ語翻訳文書で入国後6か月間可能
日本の運転免許証と国際運転免許証、もしくは日本の運転免許証とそのドイツ語翻訳文書があれば、ドイツに入国してから6か月間運転が可能です。滞在期間が1年未満であることを証明できる場合に限り、有効期限を6か月以上に延長できることもあります。
運転条件 (①②のいずれか) | ①日本の運転免許証+国際運転免許証 ②日本の運転免許証+ドイツ語翻訳文書 |
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有効期間 | 入国後6か月以内 |
翻訳文書の入手方法 | ・在独日本大使館・総領事館にて発行 ・各地のADAC(ドイツ自動車連盟)にて発行 ・ドイツ国内の公認翻訳士資格を持つ翻訳者による翻訳 |
スイス:日本免許で入国後1年間可能。翻訳文書もあると安心
日本の免許証があれば、入国後1年間運転が可能です。ただし、現地では日本語が理解されないことが多いため、日本の免許の翻訳として、国際運転免許証や自動車運転免許証抜粋証明等を携帯しておくのが望ましいでしょう。自動車運転免許証抜粋証明は、在スイス日本大使館・総領事館で発行してもらえます。
運転条件 | 日本の運転免許証のみ ※翻訳文書(国際運転免許証、自動車運転免許証抜粋証明)もあると安心 |
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有効期間 | 入国後12か月以内 |
自動車運転免許証抜粋証明の入手方法 | 在スイス日本大使館・総領事館にて発行 |
台湾:日本免許+中国語翻訳文書で入国後1年間可能
日本の運転免許証と中国語の翻訳文書があれば、入国後1年間運転ができます。翻訳文書は現地の日本台湾交流協会のほか、JAFが作成したものも有効です。
運転条件 | ・日本の運転免許証+中国語翻訳文書 |
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有効期間 | 入国後12か月以内 |
翻訳文書の入手方法 | ・公益財団法人日本台湾交流協会(台北・高雄事務所)にて発行 ・日本自動車連盟(JAF)にて発行 |
ハワイ:日本免許で入国後1年間可能
入国後1年以内であれば、日本の運転免許証だけで運転ができます。ただし、現場の警察官などに無免許と判断される可能性があるため、翻訳代わりとして国際運転免許証も携帯しておくと安心です。
運転条件 | ・日本の運転免許証 ※翻訳代わりとして、国際運転免許証もあると安心 ※レンタカー利用時は、21歳以上で免許取得後1年以上経過しているのが条件 |
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有効期間 | 入国後12か月以内 |
グアム・サイパン:日本免許で入国後30日間可能
入国後30日以内であれば、日本の運転免許証だけで運転が可能です。グアム・サイパンでもハワイ同様、国際運転免許証をを準備しておくとよいでしょう。
運転条件 | ・日本の運転免許証 ※翻訳代わりとして、国際運転免許証もあると安心 ※レンタカー利用時は、21歳以上で免許取得後1年以上経過しているのが条件 |
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有効期間 | 入国後30日以内 |
カリフォルニア州:観光・商用目的の短期滞在者のみ、日本免許で運転可能
カリフォルニア州でも、日本の運転免許証で運転が可能です。国際運転免許証は有効ではないため、あくまでも日本の免許証の翻訳代わりとしてのみ機能します。
カリフォルニアでは住所を定めてから10日以内に州の運転免許証を取得する必要があるため、観光や商用目的で訪米した短期滞在者のみ、日本の免許で運転ができると認識しておきましょう。
運転条件 | ・日本の運転免許証のみ ・観光・商用目的で訪米した短期滞在者のみ対象 ※翻訳代わりとして、国際運転免許証もあると安心 |
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有効期間 | 入州後10日目安 ※住所登録日から10日以内に州の免許取得が必須 |
日本免許をもとに現地の免許証を交付する国もあり
外国に1年以上滞在予定の場合は、現地の運転免許証の取得を検討してみましょう。現地で筆記・実技試験を受けて取得するほか、一部の国では、日本の運転免許証をもとに現地の免許証に切り替えられます。
日本免許からの切り替えに対応している主な国と、申請条件などについては以下の通りです。ただし、州や地域によって必要な書類や条件が異なるため、必ず事前に問い合わせてから申請してください。
アメリカ(ワシントンD.C.の場合) | |
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対象者 | 30日以上居住予定の者 |
必要書類 | ・申請書・身分証明書(パスポート含む)・日本の運転免許証 ・社会保障番号証明書類(SSNカード等) ・居住証明書類2点 ・翻訳文書(運転免許証抜粋証明書等)ほか |
切り替え方法 | 視力検査・学科試験が必須(実技試験は免除) |
参照 | 米国における自動車運転の手引き |
イギリス | |
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対象者 | 住民登録後5年以内の在留届提出者 |
必要書類 | ・申請書・身分証明書(パスポート含む)・日本の運転免許証 ・自動車運転免許証抜粋証明書 ・BRPカード ほか |
切り替え方法 | DVLA(北アイルランドはDVA)に郵送にて申請 |
参照 | 英国運転免許証への切り替え手続き |
フランス | |
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対象者 | 入国後1年以内の滞在許可証取得者 |
必要書類 | ・申請書・身分証明書(パスポート含む)・日本の運転免許証 ・日本の免許証のフランス語訳 ・日本の運転免許証の有効性に関する証明書 ほか |
切り替え方法 | 専用サイト(ANTS)からオンラインにて申請(2020年8月より) |
参照 | フランスの運転免許証への切り替え |
ドイツ | |
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対象者 | 6か月以上居住予定の者 |
必要書類 | ・申請書・身分証明書(パスポート含む)・日本の運転免許証 ・日本の免許証のドイツ語訳(運転免許証抜粋証明書など) ・住民票 ほか |
切り替え方法 | 住民登録日から6か月以内であれば事務手続きのみ(学科・実技試験免除) |
参照 | ドイツ運転免許証への書き換え |
カナダ(オンタリオ州の場合) | |
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対象者 | ・Gクラス:日本の免許取得後2年以上経過している者 ・G2クラス:日本の免許取得後2年未満の者 |
必要書類 | ・申請書・身分証明書(パスポート含む)・日本の運転免許証 ・自動車運転免許証抜粋証明書 ほか |
切り替え方法 | 適性検査のみ(学科・実技試験免除) |
参照 | オンタリオ州運転免許証への切り替え |
オーストラリア(ACTの場合) | |
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対象者 | 住民登録日から3か月以内 |
必要書類 | ・申請書・身分証明書(パスポート含む)・日本の運転免許証 ・日本の免許証の英語訳(運転免許証抜粋証明書など) ・居住証明書 ほか |
切り替え方法 | 適性検査のみ(学科・実技試験免除) |
参照 | ACTの運転免許への切り替え |
中国(北京市) | |
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対象者 | 3か月以上の有効なビザ、もしくは北京市の居留許可取得者 |
必要書類 | ・申請書・身分証明書(パスポート含む)・日本の運転免許証 ・日本の免許証の中国語訳 ・住宿証明書 ほか |
切り替え方法 | 身体検査と筆記試験のみ(実技試験は免除) |
参照 | 中国(北京)で運転するには |
韓国 | |
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対象者 | 1年以上居住予定の者 |
必要書類 | ・申請書・身分証明書(パスポート含む)・日本の運転免許証 ・外国人登録証 ・運転免許証抜粋証明 ・韓国の出入国事実証明書 ほか |
切り替え方法 | 指定病院での視力検査のみ(学科・実技試験は免除) |
参照 | 韓国の運転免許証への書換え |
台湾 | |
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対象者 | ・居留期間6か月以上の居留証取得者 |
必要書類 | ・身分証明書(パスポート含む)・日本の運転免許証 ・身体検査の結果を記載した申請書 ・日本の運転免許証の中国語訳(発行日から1年以内のもの) ・居留証(居留期間が6か月以上のもの)ほか |
切り替え方法 | 医療機関での身体検査のみ |
参照 | 台湾の運転免許証の取得 |
まとめ
国際運転免許証を取得し、日本の運転免許証とパスポートを携帯すれば、多くの国で車の運転が可能です。日本の免許証だけで運転が許可されている国であっても、現地でのトラブルを回避するために、国際運転免許証は準備しておいたほうがよいでしょう。
また国際運転免許証の使用条件や、日本の免許証からの切り替えについても、各国・州・都市によって対応が異なります。同じ国でも州によって条件が大きく変わる場合があるため、事前に各国大使館・領事館などに確認しておくと安心です。