在留証明書とは?海外在住者が必要な4つの場面と取得方法を解説

海外での在留事実を証明するために交付される「在留証明書」。日本の行政手続きや各種制度の利用時に「在留証明書」が必要になる場面は少なくありません。この記事では、在留証明書の概要から、取得が求められる具体的なケース、申請方法、申請時の注意点まで詳しく解説します。スムーズに証明書を取得するためにも、事前にチェックしておきましょう。
在留証明書とは
「在留証明書」は、海外在住の日本人が現地での住所や居住実態を証明するための公的な書類です。日本国内外での各種手続きにおいて、重要な役割を果たします。
在留証明書の役割
「在留証明書」とは、日本国籍を有する人が海外に居住していることを日本国が公的に証明する文書のこと。海外での生活基盤があることを示す公的な証明書として、日本国内での各種手続きや、在留先で日本人であることを証明する必要がある場合に利用されます。
「在留証明書」には、氏名、生年月日、本籍地、現住所などの基本的な個人情報のほか、在留開始年月日などが記載されます。目的に応じて、正確かつ最新の情報が記載された証明書を適切なタイミングで取得することが大切です。
在留証明書の交付場所
在留証明書は、居住地を管轄する日本の在外公館(大使館や総領事館)で交付されます。申請者は、原則として本人が直接窓口で申請する必要がありますが、やむを得ない事情がある場合は、委任状を用いて代理人による申請も可能です。
なお、2025年3月からは、一部の在外公館において「e-証明書」による交付が可能になりました。「e-証明書」に対応している在外公館の管轄地域にお住まいの方は、オンライン申請によりPDFファイルで証明書を受け取れます。ただし、提出先によっては「e-証明書」を印刷したものだと受理されない場合もあるため、よく確認してから利用しましょう。
参考:在外公館における電子化した証明書(e-証明書)の発給開始について
在留証明書の申請条件(対象者)
在留証明書を申請できるのは、主に以下の条件を満たす日本国籍保持者です。
- 申請する在外公館の管轄市域内に居住していること
- 現地に3か月以上滞在中、または今後3か月以上の滞在が見込まれること
- 日本に住民登録がないこと
駐在員や留学生などの一時的滞在者でも、3か月以上の滞在予定があれば申請できます。ただし、観光や短期商用で滞在している場合は対象外です。日本国籍を離脱または喪失した方も対象外となるため、年金の受給などで必要な場合は「居住証明」での対応となります。
在留証明書が必要となる4つの場面

在留証明書は、海外在住の日本人が日本国内外でさまざまな手続きを行う際に必要となる重要な書類です。「在留証明書」の用途を知るために、提出を求められる具体的な場面について紹介します。
1.日本での消費税免税制度の利用
日本に一時帰国した際に家電や衣類、化粧品などを免税で購入するためには、非居住者であることの証明が必要です。「在留証明書」は、日本国外に継続して居住していることを公的に証明する書類として、消費税免税制度を利用する際に提示を求められることがあります。
海外在住の日本人が消費税免税制度を利用するには、国外(同一国)に2年以上継続して居住していることが条件です。複数国で通算2年以上の場合、免税目的での発給はできません。パスポートのスタンプだけでは、国外での居住期間を証明するのが難しいため、事前に準備しておきましょう。
参考:外務省「消費税免税制度利用における在留証明」
2.日本国内の各種行政手続き
海外に住んでいても、日本国内での行政手続きが必要になる場面は少なくありません。住民票がない海外在住者が日本国内の手続きを行う際、在留証明書が「住民票の代わり」として重要な役割を果たします。たとえば、年金受給、不動産登記、相続に関する手続きでは、海外在住者の居住実態を証明するために「在留証明書」が必要です。
年金の受給手続き
日本の公的年金を海外から受給する際には、毎年「現況届」と「在留証明書」の提出が必須です。「在留証明書」は、受給者が現在も生存しており、かつ海外に居住していることを証明するために使われます。
国民年金や厚生年金を海外で受給するために「在留証明書」を申請する場合、年金に関する書類も必要です。年金の受給決定後に交付される「年金証書」や、日本年金機構からの案内書などの提示を求められる場合があるため、申請する在外公館に確認しましょう。

参考:日本年金機構「海外にお住まいの方の年金の請求」
不動産登記の手続き
海外在住の日本人が日本国内の不動産を相続したり売却・譲渡したりする際、本人確認書類として「在留証明書」の提出を求められます。不動産の登記手続きでは、申請者の本人確認書類として一般的に住民票の写しが必要です。しかし、海外在住者の場合は住民票がないため、本人確認と現住所を証明する書類として「在留証明書」が用いられます。
海外在住の日本人が登記手続きをする際は「在留証明書」のほかに「印鑑証明書」または「署名証明書」も必要です。不動産取引の際は「在留証明書」と併せて取得しておきましょう。登記手続きにおける必要書類は、事前に法務省もしくは司法書士などに確認のうえで準備を進めることをおすすめします。
遺産相続の手続き
日本国内にある財産を相続する際、相続人が海外に住んでいる場合には、その居住地や身元を証明する必要があります。「在留証明書」は、相続人の現在の住所や氏名を日本の公的機関に証明する手段として有効です。
とくに複数の相続人がいる場合や、相続財産に不動産や預金が含まれている場合は、金融機関や法務局から証明書類として「在留証明書」や「印鑑証明書(署名証明書)」の提出を求められることがあります。在外公館での交付には時間を要する場合もあるため、早めの取得を検討しましょう。
3.日本の学校での受験・進学・編入手続き
子どもが日本の小・中・高校、大学などの教育機関に進学・編入する際に、保護者が海外在住であることや現住所、在住歴などを証明するために「在留証明書」がよく活用されます。とくに帰国生入試や海外在住者向けの編入学試験などでは、出願要件として「海外在住期間が2年以上であること」など、一定期間の海外在住経験を求められるのが一般的です。
学費の減免や特別措置を受ける際にも、在外公館発行の証明書として提出を求められることがあります。「在留証明書」の申請目的や在留期間、現住所などの内容は、各教育機関の募集要項に従って正確に記載する必要があるため、申請の際には十分に注意しましょう。
4.ジャパンレールパスの利用
全国の新幹線や特急列車が乗り放題になる「ジャパンレールパス」。外国人旅行者向けの特別割引きっぷですが、海外在住の日本人も利用できます。ただし、海外在住の日本人が利用するには「在留証明書」などを提示し、非居住者であることを証明しなければなりません。
「ジャパンレールパス」は、海外に10年以上居住していることが条件のため、パスポートだけでは確認が難しく、在留期間を証明する書類の提示が必要です。旅行を計画する際は、渡航前に在外公館で「在留証明書」もしくは「在留届の写し」を取得しておきましょう。

在留証明書の取得方法

「在留証明書」の取得方法は「在外公館の窓口での申請」と「オンライン申請」の2通りです。それぞれの申請方法の詳細と、取得手続きの流れについて詳しく説明します。
在外公館の窓口で申請
「在留証明書」を取得する方法としては、居住地を管轄する日本の在外公館(大使館または総領事館)の窓口で申請するのが一般的です。在外公館での申請時に必要な書類や手数料、申請から受け取りまでの流れを説明します。
必要書類と準備物
在外公館の窓口で「在留証明書」を申請する際には、以下の書類が必要です。「在留証明書」の発給申請書は「①申請者の現住所を証明する形式」と「②現住所と過去の住所、同居家族を証明する形式」の2通りがあります。目的に適した形式の申請書に記入しましょう。
- 在留証明書発給申請書
- 有効な日本国旅券(パスポート)の原本
- 滞在資格を証明するもの(例:グリーンカード、外国人登録証など)
- 現地の住所を確認できる書類(例:滞在許可証、運転免許証など)
- 滞在開始時期を確認できる書類(例:賃貸契約書、公共料金の請求書など)
- 本籍地を確認できる書類(例:戸籍謄本/本籍地の記載が必要な場合のみ)
同居家族を証明する場合(②)は、家族分の書類も必要です。同居家族が来館できない場合は「申出書」や「委任状」も用意して申請してください。
申請書は、居住地を管轄する在外公館のホームページでダウンロード、または在外公館で直接受け取れます。申請に必要な書類は国や地域によって異なる場合があるため、申請前に必ず管轄の在外公館ウェブサイトで確認するか、電話で問い合わせて準備を進めましょう。
申請手数料と支払い方法
「在留証明書」の申請手数料は、1通につき1,200円相当です。在外公館で申請する場合、基本的に現地通貨での現金払いとなります。
なお「在留証明書」の申請理由が、恩給・国民年金・厚生年金などの受給手続きの場合は、手数料免除の対象です。詳細は、各在外公館にお問い合わせください。
申請から受け取りまでの流れ
窓口での申請から受け取りまでの一般的な流れは以下の通りです。
事前準備
必要書類を揃え、在外公館(領事館、大使館)窓口の受付状況を確認します。一部の在外公館は予約制で受け付けているので、事前に確認してから訪問しましょう。
申請書の提出

現在の居住地を管轄する在外公館(領事館、大使館)を訪問し、領事窓口で「在留証明書」の申請を行います。記入済みの申請書と必要書類を提出し、係員の確認を受けましょう。
証明書の受け取り
「在留証明書」は申請当日に交付されるのが一般的です。ただし、交付に時間を要する場合は、引換証が発行されます。即日交付の場合は、手数料を支払って受け取れば完了です。後日受け取る場合は、再度窓口を訪問し、本人確認のうえで受け取ります。
オンラインで申請
一部の国や地域では、外務省の「在留届電子届出システム(ORRネット)」を利用し、「在留証明書」をオンラインで申請できる仕組みが導入されています。ただし、対応状況や必要な手続きは地域によって異なるため、事前の確認が必須です。
国・地域による対応の違い
オンライン申請が可能かどうかは、国・地域、在外公館によって対応が分かれます。2025年5月現在、申請から受け取りまでオンラインで対応できる在外公館は以下のとおりです。
- 在シンガポール日本国大使館
- 在タイ日本国大使館
- 在チェンマイ日本国総領事館
- 在サンフランシスコ日本国総領事館
- 在ドイツ日本国大使館
- 在デュッセルドルフ日本国総領事館
上記以外でも、申請のみオンラインで受け付けている在外公館は多くあります。今後は、完全にオンラインで対応できる公館が増える可能性があるため、定期的に各在外公館のホームページで確認しましょう。

必要書類と準備物
オンラインで申請する場合でも、必要書類の内容は窓口申請と基本的に同じです。「在留証明書発給申請書」は、管轄の在外公館ホームページからダウンロードして必要事項を記入してください。先述のとおり、申請書の形式は2通りあるので、目的に応じて選びましょう。
パスポートや各種書類のデータは、PDFやJPEG形式で貼付(アップロード)します。添付できるファイルの容量は、1ファイルに付き10MBまでです。また、戸籍謄(抄)本が必要な場合は「戸籍電子証明書提供用識別符号」を入力する必要があります。
申請手数料と支払い方法
オンライン申請も、手数料は原則として同額(1,200円相当/現地通貨)です。オンラインでの受け取りは、クレジットカードでの支払いとなります。オンラインで申請し、在外公館で受け取る場合、現金(現地通貨)または、クレジットカード払いから選択が可能です。クレジットカード払いを希望するなら「ORRネット」にカード情報を登録しておきましょう。
申請から受け取りまでの流れ
オンライン申請は24時間いつでも行えますが、審査や発行には通常3〜5営業日程度かかります。審査期間を考慮しつつ余裕を持って申請しましょう。
事前準備
居住地を管轄する在外公館のウェブサイトから「在留証明書発給申請書」をダウンロードし、必要事項を記入します。「在留届電子届出システム(ORRネット)」への登録状況も確認しておきましょう。
証明書の交付申請

「ORRネット」にログインしたあと「証明申請」を選択し、登録者情報に間違いがないかを確認します。次に「証明書選択」のページで、交付を希望する証明書(在留証明書)と交付方法を選択してください。「証明書申請情報入力」のページで必要事項を入力し、添付書類をアップロードしたあと、申請内容を確認して申込をすれば完了です。
証明書の受け取り(オンラインの場合)
申請後は在外公館での審査が行われ、承認されると在外公館からメールが届きます。オンラインで受け取る場合は、クレジットカードの登録が完了した時点で「ORRネット」から「在留証明書」のダウンロードが可能です。
証明書の受け取り(在外公館窓口の場合)
在外公館で受け取る場合は、審査完了メールが届いたあと、在外公館に直接出向きます。窓口で受付番号またはQRコードと、申請時にアップロードした根拠資料の原本(パスポートなど)を提示し、手続きが完了すると証明書が交付されます。受付番号は審査完了メールに記載されており、QRコードは「ORRネット」の申請状況から確認が可能です。
在留証明書の取得に関する注意点
「在留証明書」を取得する際は、有効期限や代理申請の可否など、いくつかの注意点を事前に確認しておくことが重要です。「在留証明書」を取得する際、とくに気をつけるべきポイントについて解説します。
在留証明書の有効期限
「在留証明書」には通常、有効期限が明記されていません。しかし、提出先によっては「発行後◯日以内のもの」という条件が設けられていることがあります。
手続きの種類 | 有効期限 |
消費税免税 | 日本入国日から遡って6か月以内に作成されたものが有効 |
年金受給 | 誕生月を含めて過去6か月以内に証明を受けたものが有効 |
不動産登記 | 明確な有効期限はなし。発行日から6か月以内が目安 |
遺産相続 | 明確な有効期限はなし。発行日から6か月以内が目安 |
日本の学校の手続き | 最新の証明書が必要(各学校の募集要項による) 発行日から6か月以内が目安 |
ジャパンレールパス | 引換証の購入日から遡って6か月以内に発行されたものが有効 |
たとえば、一時帰国時の免税やジャパンレールパスの利用に使用する場合、有効期限が設けられています。不動産登記や遺産相続など、とくに有効期限がないケースでも、発行日から6か月以内の証明書を用意するのが無難です。提出先の要件を事前によく確認してから取得しましょう。
在留証明書の代理申請
「在留証明書」の申請は本人が在外公館に出向いて行うのが原則ですが、やむを得ない事情がある場合には代理人による申請が認められる場合があります。代理申請を行う際は、委任状や代理人の身分証明書など、追加書類の提出が必要です。
なお、一部の在外公館では、申請者が未成年者の場合を除き、原則として代理申請が認められていません。代理申請を希望する場合は、居住地を管轄する在外公館での受付可否や必要書類について確認・相談してから準備を進めましょう。
在留証明書に関してよくある質問(Q&A)
在留証明書に関してよくある質問をまとめました。
- Q1.在留証明書と在留カードは違いますか
はい、異なります。在留証明書は、海外に居住している日本人が現住所を証明するもので、在外公館が発行する書類です。一方、在留カードは外国人が日本国内での在留資格を証明するための身分証明書で、法務省が発行します。在留資格認定証明書も外国人を対象に入国管理局が発行する書類なので、間違わないように注意してください。
- Q2.在留証明書は日本で取得できますか
原則として在外公館が発行するため、日本国内では取得できません。海外在住者が現住所を証明する書類であり、現地に居住していることが申請条件です。一時帰国中に必要な場合は、渡航前に海外で取得しておく必要があります。ただし、e-証明書であれば、一部の在外公館でオンラインによる対応が可能です。
- Q3.日本に住民票を残していても在留証明書は申請できますか
原則として、日本に住民票がある方は「日本に居住している」とみなされるため、在留証明書は交付されません。申請には、日本の住民票を除票し、海外居住が確認できる状態であることが必要です。在外届の提出も前提となります。
- Q4.二重国籍者も在留証明書を申請できますか
可能です。日本国籍を有していれば、二重国籍であっても在外公館で在留証明書を申請できます。ただし、申請時には日本旅券の提示や在外届の提出など、日本国籍を有する証明と海外居住の確認が必要です。
- Q5.在留証明書は郵送で申請できますか
在外公館によっては郵送申請が可能です。ただし、国や地域によって対応が異なるため、事前に領事館の公式サイトで確認しましょう。必要書類や手数料の送付方法など、郵送に関する条件が細かく指定されている場合があります。