行政関係

海外での年金の受給方法は?

海外居住者が外国の口座にて年金を受給したい場合には、日本国内の居住者とは申請の仕方が異なります。住んでいる国によって必要な書類や、送金に必要な情報が異なるため、しっかり確認しておくことが大切です。

そこで今回は、海外で年金を受給する前に知っておきたい受給条件・受給方法について詳しくお伝えします

受給資格:日本での年金加入期間と外国居住期間が10年以上

日本国籍を持つ海外居住者の場合、日本での年金加入期間と、外国での居住期間(海外転出申請をしてからの期間)を合わせて10年以上であれば、受給が可能です。海外移住後、任意で年金に加入していなくても、日本で年金を納めていた時期があるなら受給対象となる可能性が高いので、必ずチェックしておきましょう。

元日本国籍の人など、上記の受給条件を満たせていなくても、居住している国が日本と社会保障協定を結んでいる場合は、受給できる可能性があります。海外居住時の合算措置や社会保障協定については、以下の記事で詳しくお伝えしていますので参考にしてください。

受給開始時期:満65歳が原則

海外居住者も国内で受け取る場合と同様、年金の受給開始時期は原則65歳です。受給開始年齢になったと同時に支給されるわけではないので、自分で年金請求をしなければなりません。満65歳を過ぎてからも年金の請求をせずに5年経過した場合、時効により受け取れなくなるので注意が必要です。

なお、昭和36年4月1日以前に生まれた男性、昭和41年4月1日以前に生まれた女性のうち、厚生年金保険等に1年以上加入していたことがある人は、受給開始年齢が異なります。また在職がどうかによっても支給条件が変わるため、対象者は事前に確認しておきましょう。

申請方法:日本の年金事務所に必要書類を提出

年金の申請に必要な書類は、居住国や申請者の納付状況などによって異なります。申請は日本の年金事務所のほか、一部の国の実施機関でも対応可能です。

必要書類

海外居住者が、年金請求時に必要な書類は以下の通りです。

年金請求書・日本年金機構のホームページからダウンロードして必要事項を記入
・ねんきんネットでも作成が可能
在留証明書・海外居住地にある日本領事館で発行されたもの
・誕生月を含めて過去6か月以内に発行されたもののみ有効
年金の支払を受ける者に関する事項・日本年金機構のホームページからダウンロードして必要事項を記入
・口座証明書・小切手帳(Void Check)のコピー・通帳のコピーなどのいずれかを添付
租税条約に関する届出書・日本年金機構のホームページからダウンロードして必要事項を記入
・原本を2部提出
※日本と租税条約を締結している国に居住している場合のみ
特典条項に関する付表
居住者証明書
・日本年金機構のホームページからダウンロードして必要事項を記入
※アメリカに居住している場合のみ
居住者証明書・Internal Revenue Service(米国歳入庁)で発行されたももの
※アメリカに居住している場合のみ
所得証明書以下のいずれか1点
・(該当国の)税申告書のコピー
・所得に関する申立書
※居住国で税の申告を行っている場合、加給年金額の対象者がいる場合など
合算対象期間が確認できる書類以下のいずれか1点
・戸籍の附票のコピー(本籍地の市区町村から発行されたもの)
・出入国記録(出入国管理庁から発行されたもの)
・海外転出時から60歳までの期間のすべてのパスポート
※合算措置が必要な場合

申請先

日本で申請する場合は、最終居住地を管轄する年金事務所、もしくは全国にある年金相談センターに必要書類を提出します。直接訪問できない場合は、郵送でも申請可能です。年金の支払日の前々月末日までに手続きを終えるようにしてください。

日本と社会保障協定を締結している国に居住している場合は、協定相手国の実施機関でも請求できます。ただし、相手国から日本の日本年金機構に送付されるまで時間を要したり、条件によっては受付できなかったりする場合もあるので、注意しましょう。

2019年10月時点で、申請を受け付けている国は以下の17か国です。

ドイツ・アメリカ・ベルギー・フランス・カナダ・オランダ・オーストラリア・チェコ・スペイン・アイルランド・ブラジル・スイス・ハンガリー・インド・ルクセンブルク・フィリピン・スロバキア

参考:各国の年金請求実施機関

受け取り方:偶数月の15日に、日本・海外の金融機関にて受給

国内でも海外でも年金請求から受け取りまでの流れは同じです。ただし、海外の金融機関で受け取る場合は、申請時に必要な情報が異なり、受け取り日や受給額に若干の違いが生じる場合があります。

受け取り口座

日本国内の金融機関(ゆうちょ銀行を除く)、海外の金融機関のどちらでも受け取りが可能です。以下のインターネット専業銀行も指定できます。(2021年4月時点)

ソニー銀行・楽天銀行・住信SBIネット銀行・イオン銀行・PayPay銀行・GMOあおぞらネット銀行

なお海外の金融機関を指定する際は、口座番号・口座名義人・銀行所在地の他、8ケタか11ケタの送金コード(SWIFT)が必要な場合があります。また、欧州ではSWIFTの代わりにIBANやBICが採用されていたり、アメリカではSWIFT以外に ABA NUMBERが必要であったりする場合もあるので、現地の銀行に確認しておきましょう。

申請から受給までの流れ

年金請求をしてから約1~2か月後に「年金証書・年金決定通知書」が発送されます。それからさらに1~2カ月後に、「年金振込通知書・年金支払通知書または年金送金通知書」が送られると、年金支給が始まります。これら年金に関する通知書は「ねんきんネット」でも確認できるため、海外居住者はあわせてチェックしておくとよいでしょう。

年金は原則、偶数月の15日に振り込まれます。15日が土・日・祝日のときは、その直前の平日が振込日です。ただし、海外の金融機関を指定している場合は、外国送金の方法に基づいて行われるため、受け取りまでに時間を要します。また、為替レートの影響を受けるので、毎回送金額が異なる可能性があることも覚えておきましょう。

現況届:毎年の誕生月末までに在留証明書を添付して提出

海外居住者が年金を受給する場合、年1回「現況届」の提出が必須です。誕生日の前月に日本年金機構から発送される「現況届」に必要事項を記入し、居住国の日本領事館等で発行された在留証明書(誕生月を含めて過去6か月以内に発行されたもの)を添付して、誕生月の末日までに提出しましょう。

誕生月の前に一時帰国していて在留証明書を用意できない場合は、本人確認書類(パスポート・戸籍抄本など)を持参すれば、年金事務所でも手続きが可能です。また、何らかの原因により現況届が届かない場合は、日本年金機構のホームページから書式をダウンロード・印刷して提出することもできます。

万が一、現況届の提出が遅れたり、提出できなかったりした場合には、年金の支払いが一時停止します。現況届が提出されれば、止まった期間分の年金をさかのぼって受給されますが、手続きに2か月ほど要することも覚えておきましょう。

参考:現況届の様式

まとめ

海外居住者が年金を請求する場合は、国内居住者よりも多くの書類が必要です。居住している国、年金の加入状況などによっても必要な書類や手続き方法が異なるため、年金受給時期になって慌てることのないよう、あらかじめ情報を確認しておくとよいでしょう。