行政関係

一時帰国時、国民健康保険には加入できる?

日本国内に住民票をおいていない海外在住者が、一時帰国中に病院を受診した場合、医療費は全額支払わなければなりません。しかし、治療内容によってはかなりの負担になることから、滞在期間中だけ住民票を戻し、国民健康保険に加入しようと考えている人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、一時帰国時の国民健康保険への加入可否や注意点のほか、国保以外で医療費をカバーする方法についてお伝えします。日本での滞在期間や同伴家族、保険内容などを考慮して、万が一のときに備えましょう。

一時帰国時だけの加入は原則不可

原則として、日本に帰国して1年以内に再出国する場合は、国民健康保険に加入できません。住民票を戻したとしても、実際の生活の拠点が海外にあると判断されるときは、国保への加入が認められない場合もあります。

帰国時期を伏せて転入届を出し、国民健康保険に加入できたとしても、1年以内に再度転出申請をすると、転入時にさかのぼって資格を取り消される場合があるので注意が必要です。もし、一時帰国中に国保に加入した状態で病院を受診していた場合、保険給付費(医療費の7~9割)や、各種検査費用などの返金義務が生じる可能性があります。

自治体によっては、諸事情を考慮して1年未満の滞在でも認めてもらえる場合がありますが、原則として滞在期間中だけの加入はできないと覚えておきましょう。

国保の資格を維持しておくのも一つの方法

日本と海外を行き来する場合や、数か月おきに帰国して日本の医療機関を受診する場合などは、住民票を日本に残し、国保の資格を維持しておくのも選択肢の一つです。

ただし、その場合は日本の居住者扱いとなるため、年金や住民税などの支払い義務が生じます。日本で収入がある場合は、所得税などの申告も必要です。またお子さんがいる場合、年齢によっては就学義務が生じることも考慮しなければなりません。

なお日本での収入がない場合、保険料はかかりますが、世帯の所得が少なければ、保険料均等割額の減額制度に基づいて最大7割減額されます。また親族の扶養に入った場合は、保険料はかかりません。日本での滞在期間、帰国頻度、各自の事情などを踏まえたうえで検討するとよいでしょう。

1年以上滞在する場合は、14日以内に手続きしよう

1年以上滞在予定である場合は、帰国から14日以内に転入届を提出し、国民健康保険への加入申請を行いましょう。申請時に必要な書類は以下の通りです。

国外から転入される人全員のパスポート
戸籍謄本(本籍地と同じ市区町村に転入する場合は不要)
戸籍の附票(本籍地と同じ市区町村に転入する場合は不要)
世帯主のマイナンバーがわかるもの(親族の扶養に入る場合)
外国籍の家族がいる場合は、世帯主との続柄を証明する書類
(結婚証明書、出生証明書など)

とくに問題がなく本人確認ができた場合は、申請後すぐに保険証を発行してもらえます(自治体による)。即日発行できない場合でも、仮の保険証として「資格確認書」をもらえば、手続きした日から通常通り診療が可能です。

加入申請を行う前に医療機関を受診した場合は全額負担となりますが、加入手続き後に保険診療分が払い戻されます。

一時帰国時は海外旅行保険を利用しよう

短期間の一時帰国中、万が一に備えたい場合は、国保の代わりとして、日本もしくは居住国の海外旅行保険を利用するとよいでしょう。

居住国の海外旅行保険

帰国前に備えておきたい場合には、居住国の海外旅行保険に加入するのがおすすめです。各国ごとにさまざまな保険がありますが、とくに以下の4つの点について確認した上で加入を検討しましょう。

加入資格 ・本人はもちろん、同伴家族の加入条件も要確認
・日本と居住国の二重国籍者は、加入できない場合もあり
補償の範囲 ・治療費・入院手術費・救急車代など、補償範囲の確認は必須
補償の上限額 ・補償される病気・怪我でも、補償限度額を超えた部分は自費負担
・とくにアジア圏の国の保険は、補償限度額が低く設定されているものが多い
アシスタンスサービス ・医療費支払い保証付きの場合、キャッシュレス診療に対応(例外あり)
・必要がある場合は、外国にいる家族への連絡や医療搬送なども手配も対応

居住国で保険に加入する場合には、現地語で契約内容を理解しなければなりません。不安がある場合は、日本語のサポートに対応していたり、日本国内に窓口があったりする保険を選んでおくと安心です。

居住国に戻った後にトラブルが起きないよう、保険請求時に必要な書類、手続き方法も確認しておきましょう。

居住国発行クレジットカード付帯の海外旅行保険

居住国で発行されたクレジットカードに、海外旅行保険を付帯できる場合もあります。すでに自分名義のクレジットカードを保有しているのであれば、海外旅行保険サービスの有無を確認してみましょう。

居住国の国籍を持つ家族と一緒に帰国する場合は、その家族名義のクレジットカードに保険を付帯させることで、一緒に補償を受けられる場合もあります。

なおこの場合も、民間保険会社のサービスに加入する場合と同様、補償範囲・上限額などの確認は必須です。民間保険会社の補償内容と条件などを比較した上で、どちらを利用するか決めるとよいでしょう。

日本の海外旅行保険

日本の海外旅行保険でも、一時帰国中の医療費を補償してもらえるものがあります。大きく分けると、以下の3通りです。

訪日外国人向け海外保険
※日本人可
・日本に入国後に契約
・入国日から出国日まで30~31日間補償
逆海外旅行保険 ・入国前に日本国内にいる本人以外の家族などが申請
・日本国籍所有者:入国日から出国日まで最大6か月間補償
・外国籍所有者:入国日から出国日まで最大3か間補償
海外旅行保険の一時帰国補償特約 ・海外への出国前に日本国内で契約
・非居住者:入国日の翌日から最大90日間補償
・居住者:入国日の翌日から最大30日間補償

それぞれの事情や滞在スケジュールに合わせて、適切なものを利用しましょう。

まとめ

原則として、一時帰国中は国民健康保険に加入することはできません。1年以上滞在する場合、もしくは個人の事情により、転入届を出して加入する場合は居住者扱いになり、各種税金などの支払い義務などが生じます。

数日~数か月の滞在期間中だけ備えたい場合は、国保の代わりとして、日本もしくは居住国の海外旅行保険に加入しておきましょう。