行政関係

海外在住者が日本の選挙に投票するには?

海外在住者でも日本の国政選挙に参加できる「在外選挙制度」。外国に住んでいても投票権をムダにせず、貴重な1票を投じたいものです。

とはいえ、日本国籍があれば誰でも投票できるわけではありません。必要な要件を満たし、かつ事前に在外選挙人名簿への登録を済ませた人のみ選挙への参加が可能です。

そこで今回は、選挙人名簿への登録方法と投票方法を中心に、在外選挙制度について詳しくお伝えします。

在外選挙制度とは

在外選挙制度とは、日本国籍を持つ海外在住の有権者が、外国からでも国政選挙に投票できる制度のことです。ただし、有権者であれば誰でも投票できるのではなく、在外選挙人名簿に登録されている人だけが参加できます。

在外選挙人名簿の登録先は、原則として日本国内の最終住所地(転出届の提出地)です。名簿に登録されると、最終住所地を管轄する市区町村の選挙管理委員会から「在外選挙人証」が交付されます。

投票できる選挙は、以下の通り。どれも在外選挙人名簿に登録された市区町村の選挙区が対象となります。

比例代表選出議員選挙
衆議院小選挙区選出議員選挙
参議院選挙区選出議員選挙
衆参議院議員の補欠選挙及び再選挙

なお、衆議院銀選挙の際に行われる最高裁判所裁判官の国民審査については、現時点では参加が認められていません。

在外選挙人名簿に登録しよう

在外選挙人名簿への登録申請は、日本の市区町村窓口、もしくは海外居住地の在外公館にて行います。

出国前に市区町村窓口で申請

事前に海外に長期滞在することがわかっている場合には、市区町村の窓口にて申請ができます。

対象:最終住所地に3か月以上居住歴があり、外国に住所を有する人

出国前に登録申請できるのは、以下の要件を満たしている人が対象です。

日本国籍を持つ18歳以上の有権者である
最終住所地の市区町村の選挙人名簿に登録されている(最終住所地に3か月以上居住している)
外国に住所を有する

外国での住所は、国内の選挙管理委員会から投票用紙を受け取るために必要です。仮住所などを記載した場合、海外にて住所変更が必要になるため、長期で滞在する住所が確定している場合のみ申請することをおすすめします。

申請期間:転出届提出日から出国日まで

最終住所地の市区町村に転出届を提出してから、転出届に記載した転出予定日(出国日)までの期間に申請できます。申請要件を満たせているのであれば、転出届の提出後にそのまま申請するとよいでしょう。

必要書類:本人申請なら身分証明書のみで可能

本人が申請する場合は、パスポート・運転免許証などの身分証明書だけで手続きができます。申請書は窓口でも入手できますが、事前に準備したい場合は総務省のHPからでも入手可能です。

何らかの事情により代理人が申請する場合は、本人の身分証明書のほかに、代理人の本人確認書類と申出書が必要です。申請書も事前に入手して、必要事項と本人の署名を記したものも用意しましょう。

海外居住地を管轄する在外公館等にて申請

海外にて在外選挙人名簿への登録を希望する場合は、居住地を管轄している在外公館(大使館・総領事館)にて申請します。

対象:管轄区域に3か月以上居住歴があり、転出届を提出済みの人

在外公館にて登録申請できるのは、以下の要件を満たしている人が対象です。

日本国籍を持つ18歳以上の有権者である
日本国内に住民登録がされていない(転出届出済み)
申請する在外公館の管轄区域内に3か月以上継続して居住している

海外に3か月以上滞在していても、日本で転出届を出していなければ申請できません。住民登録されている市区町村の選挙人名簿に登録されているため、日本でのみ選挙に参加できます。

申請期間:3か月以上居住(予定含む)していればいつでも可能

在外公館が管轄する区域内に住所を有してから3か月以上が経過すれば、いつでも申請が可能です。管轄区域内での居住期間は、在留届や居住証明書などの情報をもとに確認します。

居住歴が3か月未満でも申請はできますが、実際に手続きが始まるのは、管轄区域内に住所を有してから3か月経過してからです。登録申請後、在外選挙人証の交付を受けるまでには約2~3か月かかるので、時間に余裕を持って申請しましょう。

必要書類:本人申請で在留届提出済みならパスポートのみでOK

本人が申請する場合は、有効な日本のパスポートと、管轄区域内に3か月以上居住していることを証明する書類が必要です。申請時の3か月以上前に在留届を提出していれば、居住証明の代わりになります。居住期間が3か月未満の場合は、居住証明書・住宅賃貸借契約書・外国人登録証など、住所を確認できる書類を持参しましょう。

在外公館でも申請書を受け取れますが、事前に総務省のHPから入手して記入しておくとスムーズに手続きできます。

在外選挙人名簿登録申請書 記載例

同居する家族が代理で申請する場合には、申請者本人のパスポート・居住証明書・申請書のほかに、代理で申請する家族の有効な日本のパスポートと申出書が必要です。申請書・申出書ともに、申請者本人が直接記載したものを準備しましょう。

投票の方法は3通り

在外選挙は、在外公館での投票・郵便投票・日本国内での投票のいずれかで参加できます。

在外公館に出向いて投票

在外選挙人登録証と日本のパスポート(身分証明書)を持参すれば、各国の在外公館に直接出向いて投票できます。投票所が設置されている在外公館であれば、居住地の国・地域を問わず、どこででも参加可能です。

投票期間は公示日の翌日から各公館が定めた締め切り日までで、通常午前9時30分から午後5時まで受け付けています。各公館の投票締め切り日は、別途送付される案内メールなどで確認しましょう。

投票用紙を取り寄せて郵便投票

必要事項を記入した投票用紙等請求書と在外選挙人証を同封し、選挙管理委員会宛てに交付請求すると、海外の居住地宛てに投票用紙が届きます。受け取った投票用紙に必要事項を記入し、再び選挙管理委員会宛に郵送すれば投票が可能です。

衆議院・参議院議員の任期満了の60日前もしくは解散日から投票用紙の交付が始まり、選挙日の4日前までに到着した場合のみ、投票用紙を送付してもらえます。

投票用紙は選挙の公示または告示日の翌日以降から受領され、選挙日の投票終了時刻(通常午後8時)まで届いたものが有効です。せっかく郵送しても無効とならないよう、郵送時間も考慮して早めに請求しましょう。(交付請求・郵便投票時の送料は自己負担)

一時帰国時や転入後は日本国内で投票

選挙期間中に一時帰国している場合や、帰国後3か月までに選挙が行われる場合は、日本国内にて投票できます。選挙日当日に投票するのはもちろん、期日前投票・不在者投票も可能ですが、いずれも在外選挙人証が必要です。

帰国後の対応について

在外選挙人名簿に登録された状態で帰国する場合、外国では特別な手続きは必要としません。帰国先の市区町村に転入届を提出し、帰国後まもなく選挙が行われる場合には状況に応じて対応しましょう。

転入日から4か月後、在外選挙人名簿から自動的に抹消

在外選挙登録されている人が帰国して転入届を提出すると、その3か月後に届出先である市区町村の選挙人名簿に登録されます。転入日から4か月を経過すると、在外選挙人名簿から自動的に抹消されるので、登録されていた市区町村に在外選挙人証を返納しましょう。

ただし、在外選挙人名簿に登録されている市区町村に転入し、4か月以内に再び海外に転出した場合は、引き続き海外にて在外投票が可能です。住所・連絡先など登録内容に変更があるのであれば、居住地の在外公館にて行いましょう。

転入先の名簿に登録されるまでは、在外選挙人として投票

転入先の選挙人名簿に登録されるまでは、在外選挙人名簿に登録されている市区町村にて投票ができます。登録されている市区町村に転入した場合、在外選挙認証を持参すれば、通常通り投票が可能です。

もし在外選挙人名簿の登録先とは異なる市区町村に転入した場合は、直接出向いて投票(期日前投票含む)するか、投票用紙を請求して不在者投票をすることができます。

まとめ

海外から投票する場合、選挙人名簿に登録されるまで少なくとも2か月程度は要します。選挙が公示されてからでは間に合わないため、海外での居住地が決まり次第、在外選挙人名簿への登録申請を行い、貴重な1票を無駄にしないようにしましょう。