寄稿・コラム
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海外在住者が知っておきたい親の在宅介護と住まいの危険

よこばたけあゆみ

海外在住の日本人にとって、日本にいる親の介護は「いつか考えなければ」と思いながらも、つい後回しになりがちなテーマではないでしょうか。特に、親がまだ元気に見えるうちは、認知症や介護の問題を現実として捉えにくいものです。

しかし、実際には自宅での転倒や住環境の問題をきっかけに、突然介護が必要になるケースが少なくありません。そこで本記事では、海外在住の立場だからこそ知っておきたい「親の在宅介護の現実」を、具体的なデータとともに分かりやすく解説します。

※本記事は、海外在住者の老後・介護をサポートする一般社団法人Hearth(ハース)代表・よこばたけあやみ氏が、日刊サンで連載中のコラムに基づき、再構成したものです。

転倒が原因で要介護になるケースは少なくない

日本では、施設への入居にマイナスのイメージを持つ人が多く「できるだけ自宅で暮らしたい」と願う高齢の親も少なくありません。そのため、いざ介護が必要になっても、施設入居の話を切り出せず、在宅介護を選択するケースもあるでしょう。

しかし、海外から親の介護に向き合う場合、在宅介護の“現実”を数字と環境の両面から知っておく必要があります。

参照:厚生労働省「国民生活基礎調査(2p)」

特に見落とされがちなのが、高齢者の転倒事故です。転倒は単なるケガでは済まず、要介護度が上がったり認知症が進行したりするケースも少なくありません。

厚生労働省の調査によると、介護が必要になった主な原因としては、要支援・要介護ともに「骨折・転倒」が第3位。「認知症」「脳血管疾患」などに次いで多い結果となっています。

参考:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況

高齢者の転倒は自宅で起こりやすい

高齢者の転倒事故というと、外出先や道路での事故を想像する方が多いかもしれません。しかし実際には、転倒が最も多く起きている場所は「自宅」です。居室、廊下、トイレ、浴室など、毎日使い慣れている場所で事故は起こっています。

出典:消費者庁「参考資料

東京消防庁のデータによると、65歳以上の高齢者が緊急搬送された事故の原因は「転ぶ事故(転倒)」が全体の80%以上。また、消費者庁の資料では、65歳以上の高齢者が転倒した場所は「住宅」が49%を占めています。

海外在住で親の生活を直接見守れない場合、「家の中だから安全」という思い込みは大きな落とし穴になりがちです。日本の親の介護を考えるうえでは、自宅こそが最も注意すべき場所だということを認識しておく必要があります。

参考:
東京消防庁「救急搬送データからみる高齢者の事故
消費者庁「毎日が#転倒予防の日

一戸建て、とくに二階建ては転倒のリスクが高い

転倒リスクという点で、特に注意したいのが一戸建て、なかでも二階建ての住宅です。日本では持ち家率が高く、高齢になっても長年住み慣れた戸建てで暮らし続ける方が多くいます。

しかし、階段の昇り降りは高齢者にとって大きな負担であり、転倒事故が起こりやすい場所のひとつです。夜間のトイレ移動や手すりのない急な階段は、思わぬ事故につながります。玄関先にある2~3段の階段で転倒するケースも少なくありません。

東京消防庁のデータによると、転倒事故が発生する場所の上位は以下の通りです。居室・寝室・玄関などでの発生率が高く、トイレや台所で転倒するケースも多いことがわかります。

1位2位3位4位5位
事故
発生場所
居室
寝室
玄関
勝手口
廊下・縁側
通路
トイレ
洗面所
台所・調理場
ダイニング・食堂
搬送人数22,333人2,988人2,059人955人889人
引用:東京消防庁「救急搬送データからみる高齢者の事故

海外在住の子ども世代は「親がまだ元気そうだから大丈夫」と思いやすいものですが、年齢とともに身体機能は確実に変化します。一戸建てでの在宅介護は、住まいの構造そのものがリスクになり得ることを理解しておきましょう。

転倒から介護が必要になるケースは珍しくない

高齢者が一度転倒すると、骨折や入院をきっかけに筋力が急激に低下し、介護が必要になるケースは珍しくありません。外出や移動への不安から、駅近のマンションやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に移り住む方も多くいます。

「サ高住」に入居した動機を見ると「独り暮らしが不安になったため」「介護が必要になったため」がともに70%以上です。将来の備えとして入居する人よりも、介護や日常生活への不安をきっかけに、住まいを変える人が多いことがわかります。

出典:厚生労働省「サービス付き高齢者向け住宅の現状

どうしても自宅での暮らしを希望する場合は「その家で安全に生活できるか」を見極めることが重要です。海外在住で日本の親の介護を考えるときこそ、感情だけでなく、こうした現実的なリスクを踏まえた判断が求められます。

家で介護するなら住まいの環境整備が重要

親が自宅で暮らしながら介護が必要になった場合、住環境の整備は非常に重要です。日本の介護保険制度には、住宅改修を助成する「高齢者住宅改修費用助成制度」があり、手すりの設置や段差の解消などの工事費用の一部が支給されます。

高齢者住宅改修費用助成制度

【給付要件】

  • 要支援、要介護の認定を受けている方
  • 改修する住宅と被保険者証の住所が同一で、本人が実際に居住していること

【住宅改修の種類】

  • 手すりの取り付け
  • 段差の解消
  • 滑りの防止及び移動の円滑化のための床または通路面の材料の変更
  • 引き戸等への扉の取替え
  • 洋式便器等への便器の取替え
  • その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

給付要件を満たす方が対象で、申請時にはケアマネジャーに改修工事理由を書いてもらう必要があります。費用の助成は上限(20万円)があり、自治体や所得によって給付額が変わるため、事前に細かい条件を確認することが大切です。

給付金を受け取るまでの大まかな流れは、以下の通りです。

申請手続きと全体の流れ
  1. 介護認定を受ける
  2. ケアマネジャー等に相談(地域包括支援センターの活用)
  3. 申請
  4. 審査
  5. 給付決定
  6. 工事開始
  7. 工事完了後、必要書類等の提出
  8. 住宅改修費の給付

参考:厚生労働省「介護保険における住宅改修

専門家への相談で不安を減らしませんか?

海外に住みながら日本で暮らす親の介護について考えると、難しいことが多く悩みを抱えてしまいがちです。介護制度や住宅改修の助成制度を利用する際には、専門的な知識が必要な場面もあるでしょう。

ネットの情報だけでは限界があるため、専門家に相談し、今すぐ必要なこと、まだ様子を見てよいことを的確に見極めることが重要です。海外在住だからこそ、信頼できる第三者の視点を取り入れて、親にとっても自分自身にとっても最適な選択を見つけましょう。

※この記事のオリジナル版は、日刊サン連載『日本の介護最新情報』に掲載されました。
※執筆:海外暮らしINFO/監修:一般社団法人Hearth(ハース)代表 よこばたけあやみ氏

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監修者
よこばたけあやみ
よこばたけあやみ
社)Hearth(ハース)代表理事。国際介護アナリスト。
(株)ベネッセスタイルケアで、老人ホームの立ち上げや広報を担当。老人ホームの運営・紹介会社の立ち上げ、介護と仕事の両立事業など、介護業界に20年以上携わる。 41歳の時に夫婦で世界一周し、11か国31都市で200超の高齢者施設を訪問・取材。海外在住日本人向けの「サロンドハース」を運営し、各団体・企業と連携して、日本の介護関連のお役立ち情報やサービスを提供。
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