海外在住の日本人が一時帰国中にジャパンレールパスを利用する方法

日本全国のJRにお得な料金で乗車できる特別企画乗車券「ジャパン・レール・パス」。観光目的で日本を訪れる外国人向けのサービスですが、海外在住の日本人も条件を満たせば利用が可能です。この記事では、ジャパンレールパスの利用条件と使い方について詳しくお伝えします。二重国籍の子どもが利用する方法も解説するので参考にしてください。
ジャパンレールパスとは

ジャパンレールパスとは、日本全国をお得に旅行できる外国人向けの切符のこと。日本全国のJR路線を定額で利用でき、長距離移動に非常に便利です。まずは、ジャパンレールパスの詳細について解説します。
ジャパンレールパスの基本情報
ジャパンレールパスは、JRグループが提供する全国共通の定期券型のパスで、一定期間中、JRの鉄道・バス・フェリーを定額で何度でも利用できます。対象者は訪日観光客に限られていましたが、現在では「海外に10年以上居住している日本人」や、その家族も利用できるようになりました。
乗車可能な期間は7日・14日・21日の3種類から選択でき、料金は年齢やグリーン車利用の有無により異なります。日本国内の長距離旅行や短期滞在中の移動コストを抑える手段として、非常に人気の高いサービスです。
ジャパンレールパスの利用範囲
ジャパンレールパスの利用可能エリアは全国のJR線を中心に、バスやフェリーといった一部の交通機関も含まれています。乗車前に対象範囲を確認しておきましょう。
JRグループ全線と一部の鉄道
ジャパンレールパスでは、JR東日本・東海・西日本・九州・北海道・四国のすべての在来線および新幹線(ただし一部例外あり)を自由に利用可能です。例えば、東京から京都、大阪、広島といった主要都市間の移動もパス1枚でスムーズに行えます。
私鉄や地下鉄は原則対象外ですが、JRが運営するモノレールや一部の地方路線は対象です。一部の列車では、JR線以外の区間で別途料金が必要な場合があるので、対象車両を確認してから利用しましょう。一部の区間で別途運賃が必要な列車は、ジャパンレールパスの公式サイトで確認できます。
JRバスの各ローカル線
ジャパンレールパスは鉄道だけでなく、JRが運営する一部の路線バスでも利用できます。対象となるのは、JRバス関東・東海・中国・九州などが運行するローカルバスで、特に地方へのアクセスや観光地を巡る移動手段として便利です。
例えば、以下のようなバス路線が対象になります。
- おいらせ号:青森・八戸から奥入瀬渓流・十和田湖へのアクセスに便利
- 南房州線:館山駅からフラワーパーク、安房白浜といった観光地巡りに便利
- 草津温泉線:人気温泉地である草津温泉へのアクセスに便利
- 塩原線:栃木県の有名温泉地・塩原温泉へのアクセスに便利
ただし、空港リムジンバスや高速バス、定期観光バスなどは利用対象外となるため、路線バスであっても事前の確認は必須です。
JR西日本宮島フェリー
広島県の人気観光地・宮島へ渡る「JR西日本宮島フェリー」も、ジャパンレールパスで利用できる珍しいフェリー路線の一つです。JR西日本が運航しており、広島市内から宮島口駅まで電車で移動し、そこからフェリーで宮島に渡るルートは非常に人気があります。
パスを提示すれば追加料金なしで乗船できるため、厳島神社などの観光を予定している方にはとてもお得です。なお、同じ航路は民間のフェリーも運航しています。乗船前にJRフェリーかどうかを必ず確認しましょう。
ジャパンレールパスの種類と価格
ジャパンレールパスには「普通車用」と「グリーン車用」の2種類があり、それぞれ7日間・14日間・21日間の利用期間から選択できます。2023年秋に価格改定が行われたため、現在の料金は以前に比べて高くなったものの、長距離移動を繰り返す方にとっては十分にお得な内容です。
種類 | グリーン車用 | 普通車用 | ||
---|---|---|---|---|
区分 | 大人(12歳以上) | 子ども(6~11歳) | 大人(12歳以上) | 子ども(6~11歳) |
7日間 | 70,000円 | 35,000円 | 50,000円 | 25,000円 |
14日間 | 110,000円 | 55,000円 | 80,000円 | 40,000円 |
21日間 | 140,000円 | 70,000円 | 100,000円 | 50,000円 |
子ども料金(6〜11歳)は大人料金の約半額で、ファミリー旅行にも適しています。子どもの年齢は、公式サイトから購入する場合は決済日、海外の販売店・旅行代理店での購入は、引換証の発行日が基準です。12歳で利用予定でも、決済日や発行日時点で11歳であれば、子ども料金で購入できます。
新幹線や特急列車を利用する際の注意点
ジャパンレールパスを利用して新幹線や特急列車に乗車する際には、いくつかの注意点があります。
新幹線「のぞみ」「みずほ」は対象外
まず、新幹線の「のぞみ」「みずほ」はパスの対象外です。代わりに「ひかり」や「さくら」などを利用するか、ジャパンレールパス専用の「のぞみ」「みずほ」利用券を追加購入しなければなりません。のぞみ・みずほ利用券は、乗車1回につき1枚必要です。
のぞみ・みずほ利用券は、指定席券売機にて乗車日の1か月前から当日まで購入できます。グリーン車用・普通車指定席用・普通車自由席用はすべて同額で、グリーン車用・指定席用は列車単位、自由席用は片道単位です。ジャパンレールパス向けの限定販売のため、空席があっても購入できない場合があります。利用する予定なら、早めに購入しておきましょう。
列車の座席指定は事前予約が必須
ジャパンレールパスで乗車できる列車は、一部を除いて指定席を利用できますが、事前に予約が必要です。WEBサイトもしくは指定席券売機か駅窓口で予約をし、乗車前までに発券しましょう。指定席の利用に追加料金はかかりません。GWやお盆、年末年始などの繁忙期には希望の時間に座席が取れないこともあるので、早めの予約がおすすめです。
グランクラスは追加料金が必要
東北・北海道新幹線、北陸新幹線、上越新幹線の特別車両である「グランクラス」に乗車する場合は、別途で特急料金と特別料金(グランクラス料金)の支払いが必要です。グリーン車用パスを持っていても、追加料金を支払わなければなりません。グランクラスは、車内サービス(飲料・軽食あり)の有無で料金が異なるため、間違わないように注意しましょう。
海外在住日本人のジャパンレールパス利用条件

ジャパンレールパスは原則として外国人の旅行者向けですが、一定条件を満たした海外在住の日本人も利用可能です。ここではその具体的な利用条件を解説します。
在留期間が連続して10年以上ある人が対象
海外在住の日本人が一時帰国中にジャパンレールパスを利用するには、以下の2つの条件を満たしていなければなりません。
有効な日本のパスポートを有していること
同一国での在留期間が10年以上あること
パスの購入・引き換え時に、パスポートと在留期間を証明する書類の提出が求められます。
ジャパンレールパスの利用に必要な確認書類
在留期間を証明する確認書類として、在留届の写し・在留証明書のほか、アメリカ・ブラジル・カナダに限り永住カードも有効です。
在留届の写し:居住地を管轄する在外公館で取得
「在留届の写し」とは、現在居住している国の在外公館に届けられた「在留届」の内容を証明する書類です。「在留届の写し」に記載のある「受付日付」にて、居住国での在留期間が10年以上であることを証明できます。パスの引換証を購入する日を基準とした場合、10年前の同じ月以前に在留届が提出されていなければなりません。
例)2025年4月1日に引換証を購入する場合
・在外届の写しの「受付日付」が2015年4月以前のものが有効
・2015年4月1日~30日までを4月と見なす
「在留届の写し」は、居住地を管轄する在外公館で申請・取得できます。申請者本人のパスポートとともに「在留届の写し交付申請書」を提出しましょう。同居している家族も利用する場合は「個人情報に関する同意書」にも記載し、同居家族のパスポートとともに提示します。在外公館に出向くのが難しい場合は、郵送でも申請が可能です。
「在留届の写し」は無料で申請できますが、在外公館によっては交付までに数日を要する場合もあります。ジャパンレールパスの引き換えに利用する場合、交付から6か月以内のものが有効なので、計画的に申請しましょう。
在留証明書:在留届の写しと同様に在外公館で取得
「在留証明書」は、海外に3か月以上継続して居住していることを日本の公的機関に対して証明する書類です。「在留届の写し」と同様、居住地を管轄する在外公館で発行できます。在留証明書を取得するには、以下の書類が必要です。ただし、滞在国やビザの種類によっては、ほかの書類も必要な場合があるため、在外公館に確認の上、準備を進めましょう。
- 日本国籍があることを証明できる本人確認書類(パスポートなど)
- 現在の居住地を確認できる文書(居住国の運転免許証など)
- 居住開始時期(居住期間)を確認できるもの(外国人証明証など)
「在留証明書」の発行手数料は、1通あたり1,200円相当(現地通貨払い)です。「在留証明書」では、同居家族の在留期間を証明できないため、家族で利用する場合はそれぞれ申請しなければなりません。とくに理由がない場合は、手数料無料かつ家族の代表者がまとめて申請できる「在留届の写し」を用意するのがおすすめです。
参考:外務省
永住カード
米国、カナダ、ブラジルに居住している日本人の場合、確認書類として各国の永住カードを利用できます。ただし、各国に10年以上、居住していることが記載されている永住カードのみ有効です。ブラジルの場合、2018年9月に様式が変更されたため、在留開始日が記載されている旧様式のコピーも持参しましょう。
- 米国:PERMANENT RESIDENT CARD(RESIDENT ALIEN CARD不可)
- カナダ:PERMANENT RESIDENT CARD
- ブラジル:CARTEIRA DE REGISTRO NACIONAL MIGRATÓRIO(新様式)/CÉDULA DE IDENTIDADE DE ESTRANGEIRO(旧様式)
参考:JAPAN RAIL PASS/2017年6月1日からのご利用資格
海外在住日本人のジャパンレールパス利用手順

ジャパンレールパスの購入から実際の利用までの流れを順を追って解説します。海外在住の日本人は、外国人旅行者と異なる点があるのでよく確認しておきましょう。
出発前:海外のJR指定販売店・代理店で引換証を購入
ジャパンレールパスを利用するためには、まず「引換証(Exchange Order)」を入手しなければなりません。「引換証」は、日本国内で実際のパスとの引き換えに必要です。出発前に紙の引換証もしくは電子引換証(eMCO)を受け取っておきましょう。
海外在住の日本人は、海外にあるJR指定の販売代理店や認定オンライン販売サイトから購入が可能です。外国人旅行者はジャパンレールパスのWEBサイトから購入できますが、予約時にパスポート番号の入力が必要があり、海外在住の日本人は利用できません。
海外のJAPAN指定販売店・代理店は、ジャパンレールパスの公式サイトにて確認できます。主に、JTBや日本旅行、東武トップツアーズなどで取り扱われています。引換証には有効期限があり、購入日から3カ月以内に日本国内でパスとの交換が必要です。渡航前のスケジュールに合わせて入手しましょう。
例)2025年4月1日に引換証を購入(引換証を発行)した場合
→ 2025年6月30日までパスへの引き換えが可能
来日後:JRの主要駅にある引換所で交換
日本に到着したら、主要なJR駅に設置されている「ジャパンレールパス引換所」に行き、引換証とパスポート、在住証明書類を提示して実際のパスに交換します。交換できる場所は、成田空港駅・羽田空港第2・第3ターミナル駅・関西国際空港・新大阪駅・東京駅など、全国の主要駅に多数あり、営業時間や混雑状況も公式サイトで確認可能です。
ジャパンレールパスは利用日の1か月前から引き換えができます。交換時にパスの利用開始日を指定できるので、到着日からすぐに使う必要はありません。旅行計画に合わせて、適切な日を選びましょう。パスを引き換えたら、必要に応じて列車の指定席を予約してください。
例)2025年7月1日からパスを利用予定の場合
→ 2025年6月1日以降に引き換えが可能
二重国籍者がジャパンレールパスを利用するには

日本と外国の国籍を持つ海外在住者(原則として満20歳以下)も、条件を満たせばジャパンレールパスの利用が可能です。利用資格や注意点について詳しく解説します。
日本の旅券で入国し、日本人として利用するのが原則
二重国籍者がジャパンレールパスを利用するには、日本のパスポートを使用して入国し、日本人として利用申請します。ジャパンレールパスは基本的に、外国籍の旅行者を対象とした特別な乗車券です。しかし、海外在住が10年以上であることや、一時帰国中であることなどの条件を満たせば、日本国籍を持つ海外在住者も例外的に利用が認められています。
海外在住の日本人同様、入国時に「在留証明書」や「在留届の写し」など、日本国外での長期滞在を証明する書類が必要です。引換所ではこれらの証明書とともにパスポートを提示し、引換証とジャパンレールパスの交換手続きを行うことになります。
外国の旅券で入国した場合、短期滞在のスタンプが必要
二重国籍者が外国のパスポートで日本に入国した場合でも、条件を満たせばジャパンレールパスを利用できます。外国人として入国した場合は「短期滞在(Temporary Visitor)」の入国スタンプ、またはシールがパスポートに押印されていることが必須条件です。
自動ゲートでの入国手続きではスタンプが省略される場合があるため、希望する場合は必ず有人ブースでの入国審査を選びましょう。ジャパンレールパスの交換時にスタンプを確認できないと手続きができません。二重国籍者であることを理由に、短期滞在のスタンプが発行されない場合もあるので、事前に最寄りの在外公館に確認しておきましょう。
12歳未満は在留期間が10年以上ある同居家族の同伴が条件
在留期間が10年未満の子どもの場合、単独ではジャパンレールパスを利用できません。二重国籍で海外在住歴がある子どもは、以下の条件を満たす場合にのみ利用が可能です。
- 親権者などの同居家族が10年以上日本国外に継続して居住していること
- 上記の条件を満たす同居家族と一緒に帰国していること
たとえば、子ども自身が在留届を出していても、同伴家族が在留期間の条件を満たしていなければ利用は認められません。引換所での手続き時には、家族全員分のパスポートや在留証明書、戸籍謄本などで関係性と居住年数を確認されることがあるため、書類の準備を徹底しておきましょう。
ジャパンレールパスに関してよくある質問(Q&A)
ジャパンレールパスに関してよくある質問をまとめました。
- Q1.ジャパンレールパスの発売期間はいつまでですか
ジャパンレールパスの引換証の発売期間は、2025年12月31日まです。当初は2023年12月31日までと案内されていましたが、2023年10月に延長が決まりました。発売期間の延長により、日本国内での引き換え期間も2026年3月30日までに延長されています。ただし、制度や価格の変更が行われる可能性もあるため、最新の情報は公式サイトや販売店を通じて確認してください。
- Q2.海外在住の日本人もエリアパスを利用できますか
海外在住の日本人は、エリアパス(JR東日本パスや関西ワイドパスなど)を利用できないケースがほとんどです。エリアパスは、原則として短期滞在の外国人旅行者を対象としています。多くの場合、エリアパスを利用するには、外国のパスポートで入国し、かつ短期滞在スタンプを受けていることが条件です。各エリアパスの利用条件は異なるため、事前に確認しておきましょう。
- Q3.ジャパンレールパスの指定席は変更・キャンセルできますか
ジャパンレールパスの指定席は、列車出発前であれば何度でも無料で変更が可能です。変更は全国の「みどりの窓口」や、一部の券売機、専用ウェブサイトなどで手続きできます。ただし、列車の出発後は変更やキャンセルができず、利用扱いとなるため注意が必要です。なお、ジャパンレールパス自体の払い戻しには所定の手数料がかかります。
- Q4.ジャパンレールパスを紛失したら再発行できますか
ジャパンレールパスは、たとえ盗難や紛失であっても再発行はできません。使用開始前の引換証をなくした場合も同様に無効となり、払い戻しも不可です。再度利用したい場合は、新しく引換証を購入する必要があります。利用中のパスは、旅行中の大切な証明書でもあるため、取り扱いには十分注意しましょう。
- Q5.ジャパンレールパスは自動改札を利用できますか
ジャパンレールパスは、紙製で磁気情報を読み取れないため、自動改札機を利用できません。乗車や下車の際は、駅係員のいる有人改札を利用しましょう。改札では係員にジャパンレールパスを提示し、有効期限や利用区間などを目視で確認してもらう必要があります。混雑時は時間に余裕をもって行動してください。
まとめ
ジャパンレールパスは、海外在住歴10年以上の日本人やその家族も利用可能な、お得な定額乗車券です。新幹線やバス、フェリーにも対応し、旅行コストを抑えられます。利用には在留証明書類の提出が必要なので事前準備を徹底し、楽しい旅行計画を立てましょう。