海外在住者が親の死後に手続きをするには?必要書類・期限を解説
海外在住者が日本に住む親を亡くした場合、行政手続きや相続手続き、各種契約の解約など、限られた一時帰国期間のなかで多くの手続きをこなさなければなりません。さらに、海外在住者は日本の「住民票」や「印鑑証明書」が取得できないため、代替書類も必要です。
この記事では、親の死後手続きの流れや期限、必要書類、さらに負担を軽減するために検討したい代行サービス(死後事務委任契約)まで分かりやすく解説します。
- 海外在住者が親の死後に必要な手続きと期限
- 親の死後手続きで、非居住者が準備すべき必要書類
- 相続手続きの流れと注意点
- 死後事務委任契約や代行サービスの活用方法
- 海外在住者が手続きをスムーズに進めるポイント
※ 本記事は、海外在住者が日本に住む親の死後手続きを行う際の、一般的な情報をまとめたものです。実際に必要となる手続きや提出書類、期限は、相続の状況や各自治体、金融機関などによって異なります。最新かつ具体的な手続きについては、必ず各行政機関・法務局・金融機関などの公式サイトをご確認いただくか、専門家へご相談ください。
海外在住者が親の死後手続きで準備しておきたい書類
海外在住者が日本で親の死後手続きを行う場合、日本国内の親族と共通の書類に加え、非居住者だけに求められる書類を準備する必要もあります。必要書類は手続き先によって異なるため、しっかり確認したうえで取得の準備を進めましょう。
海外在住者(非居住者)特有の書類

海外へ転出届を出すと日本の住民登録が抹消され、印鑑登録も自動的に失効するため、印鑑証明書や住民票は取得できなくなります。そのため、海外在住の非居住者が、日本で親の死後手続きを行うためには、以下の代替書類が必要となる場合があります。
| 日本国内で必要な書類 | 海外在住者が代わりに 提出する書類 | 発行場所・取得方法 |
| 住民票(の写し) | 在留証明書 | 居住地を管轄する 日本大使館・領事館(在外公館) |
| 印鑑証明書 | 署名証明書(サイン証明書) | 居住地を管轄する 日本大使館・領事館(在外公館) |
在留証明書:住民票の代用書類
在留証明書は、日本の「住民票」に代わる書類です。現在の海外住所を公的に証明する手段として、居住地を管轄する日本大使館・総領事館(在外公館)で発行してもらいます。
原則として現地に3か月以上滞在していることが条件となり、1通につき1,200円相当(※現地通貨建てで支払い、年度により改定あり)の手数料が必要です。
在留証明書は、不動産の相続登記や金融機関での手続きにおける「本人確認・住所証明」として利用されます。発行要件や当日交付の可否は公館ごとに異なるため、事前に提出先(日本の銀行や法務局)が求める記載事項を確認し、余裕を持って申請することが重要です。

参考:外務省「在外公館における証明(在留証明)」
署名証明書/サイン証明書:印鑑証明書の代用書類
署名証明書は、日本の「印鑑証明書」に代わる書類です。遺産分割協議書への署名や預貯金の解約、不動産の相続登記などで提出を求められます。
在留証明書と同様に在外公館で取得でき、手数料は1通につき1,700円相当です。署名証明には以下の2つの形式があるため、日本の提出先(銀行や法務局など)が指定する形式で取得することが重要です。
- 形式1:合綴(がってつ)/貼付けタイプ
- 提出する書類(遺産分割協議書など)の実物を領事館に持参し、領事の目の前で本人が署名(および拇印)を行い、その書類と署名証明書を綴り合わせて割り印を押す形式
- 形式2:単独証明タイプ
- 申請者の署名(サイン)そのものを単独のカード形式で証明するもの
多くの金融機関や法務局では、書類の偽造防止のために「形式1(合綴タイプ)」での提出を求められます。この場合、遺産分割協議書などの提出書類を事前に日本から取り寄せて、領事館へ持参する必要があるため、計画的に進めましょう。
参考:
外務省「在外公館における証明(署名証明)」
法務省「外国に居住しているため印鑑証明書を取得することができない場合の取扱いについて」
相続手続きで必要となる主な書類

親の相続手続きを進めるためには、相続人であることや相続内容を証明する書類も必要です。戸籍謄本や遺産分割協議書、法定相続情報一覧図は、金融機関や法務局など複数の手続きで求められる場合があります。
戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
戸籍謄本は、亡くなった親と自分との親子関係を証明するために必要な書類です。被相続人(亡くなった親)の出生から死亡までのすべての戸籍を遡って収集し、法定相続人を確定させる必要があります。
戸籍謄本は本籍地の市区町村役場で発行されますが、法改正により本籍地以外の市区町村窓口でも取得可能(広域交付)になりました。ただし、広域交付は本人が直接窓口に行くことが条件であり、郵送請求では利用できません。
一時帰国時に自身が役所の窓口に行けない場合は、従来通り本籍地への郵送請求(国際郵便でのやり取り)が必要となり、手元に届くまで大幅な日数がかかるため、早めに手配することをおすすめします。
参考:法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(戸籍証明書等の広域交付)」
遺産分割協議書

遺産分割協議書は、相続人全員で遺産の分け方に合意した内容をまとめた書類です。遺言書がない場合は、不動産の相続登記や預貯金の解約、証券口座の名義変更など、ほとんどの相続手続きで提出を求められます。
遺産分割協議書には、日本国内の相続人は実印を押して印鑑証明書を添付しますが、海外在住者の場合は、前述の「署名証明書(サイン証明書)」を添付することで、印鑑証明書の代わりとして取り扱われます。
法定相続情報一覧図

法定相続情報一覧図は、被相続人と相続人の関係を1枚の家系図のようにまとめた公的な証明書です。法務局へ申請して認証を受ければ、必要な枚数を無料で交付してもらえます。
一度取得しておけば、金融機関や証券会社、不動産の相続登記などの各窓口で、分厚い戸籍謄本一式の束の代わりに、この1枚を提出するだけで手続きが完了します。
何度も戸籍をコピーしたり郵送したりする手間が省けるため、日本とのやり取りの負担や一時帰国中の限られた時間を効率化したい海外在住者にとって、非常に便利です。
参考:
法務省「法定相続情報証明制度について」
法務局「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」
全国銀行協会「預金相続の手続に必要な書類」
親の死後に必要な手続き一覧
親が亡くなると、行政手続きや相続手続き、各種契約の解約など、多くの手続きを期限内に進める必要があります。海外在住者は一時帰国中にすべて終わらないことも多いため、期限を把握し、優先順位を決めて進めることが大切です。
親の死後に必要な行政手続き

行政手続きは期限が短いものが多く、死亡後すぐに対応が必要です。海外在住の家族がすべて行う必要はなく、同居家族や親族、葬儀社などが手続きを進めることもできます。
ただし、海外在住者は相続手続きなどで必要になる「在留証明書」や「署名証明書」などの取得に時間がかかる傾向があります。帰国期間を無駄にしないよう、必要書類は早めに確認し、着手しておきましょう。
- 7日以内
- 死亡届・火葬許可証
- 14日以内
- 年金受給停止(厚生年金10日以内)
- 公的医療保険・介護保険の資格喪失
- 2年以内
- 高額医療費の払い戻し
- 介護保険料過誤納還付金
- 葬祭費・埋葬料の請求
- 5年以内
- 未支給年金・遺族年金の請求
死亡届の提出・火葬許可申請:7日以内
死亡届は、死亡を知った日から7日以内に市区町村へ提出しなければなりません。死亡届を提出すると火葬許可証が交付され、火葬後には「埋葬許可証」として墓地への納骨時などに使用されます。
通常は葬儀社が遺族の代行で提出することが多いため、海外在住家族の帰国前に手続きが進むケースがほとんどです。死亡届の提出により、故人の住民票は自動的に抹消されます。
参考:法務省「死亡届」
年金受給停止:14日以内(厚生年金は10日以内)
年金を受給していた場合、「年金受給権者死亡届」を年金事務所へ提出して受給を停止します。期限は国民年金が14日以内、厚生年金は10日以内と期限が短く設定されています。ただし、日本年金機構にマイナンバーが登録されている場合、原則としてこの届出は省略できます。
また、未支給年金がある場合は、生計を同じくしていた遺族が死亡日から5年以内に請求が可能です。遺族年金も、配偶者などの要件を満たせば同じく5年以内に請求できます。
国民年金と厚生年金は、死亡届と連携して受給が停止されることもありますが、未支給年金・遺族年金の請求手続きは別途必要です。それぞれの状況や制度によって要件が異なるため、年金事務所や日本年金機構へ早めに確認することが重要です。
参考:日本年金機構「身近な方が亡くなったとき」「年金の時効」
公的医療保険の資格喪失:14日以内
親(故人)が加入していた国民健康保険や後期高齢者医療制度は、資格喪失の届出が必要です。マイナンバーカード(マイナ保険証として登録されている場合)または資格確認書を持参の上、死亡日から14日以内に市区町村へ資格喪失の届出を行いましょう。
会社員の健康保険(被用者保険)の場合は、故人の勤務先が手続きを行います。
参考:千代田区「国保のてびき(令和8年度版)」
介護保険の資格喪失:14日以内
介護保険の被保険者(65歳以上、または40歳〜64歳で要介護認定を受けていた方)が死亡した場合も、14日以内に市区町村へ資格喪失の届出と被保険者証の返却が必要です。
ただし、自治体によっては「死亡届」を提出した際、住民票の抹消と連動して自動的に資格喪失処理が行われる場合もあります。二度手間を防ぐためにも、自治体の介護保険担当窓口やおくやみコーナーへ事前に確認すると安心です。
参考:新宿区「おくやみガイドブック(P20)」,中央区「介護保険資格取得・異動・喪失」
高額療養費の払い戻し:診療月の翌月1日から2年以内
医療費が自己負担限度額を超えていた場合、高額療養費として払い戻しを受けられることがあります(高額療養費制度)。請求期限は診療を受けた月の翌月1日から2年以内で、亡くなった後でも相続人が代わりに請求できます。
ただし、還付金は本来故人が受け取るべきものとして「相続財産」に含まれ、相続税の課税対象になる点に注意が必要です。遺言に指定がなければ、相続人間で遺産分割の対象となる場合があります。
参考:厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
介護保険料過誤納還付金の請求:過誤納金発生日から2年以内
介護保険料を年金天引きなどで納めていた場合、資格喪失のタイミングによって納めすぎとなり、過誤納金(払いすぎ)が発生することがあります。還付請求権は、過誤納金の発生日(または還付通知書の送付日)から2年以内です。
自治体から相続人充てに「還付(充当)通知書」が届きますが、受取口座の登録手続きなどが必要になることがあります。自治体ごとに運用が異なるため、案内が届いたら内容を確認して手続きを進めましょう。
参考:横浜市「介護保険料の還付について」,介護保険法「第二百条」
葬祭費・埋葬費請求:葬儀の翌日から2年以内
国民健康保険や後期高齢者医療の被保険者が亡くなった場合、葬儀を行った人(喪主)に「葬祭費」が支給されます(金額は3万〜7万円程度で、自治体により異なります)。
会社の健康保険(協会けんぽや健康保険組合)の加入者であれば、一律5万円の「埋葬料(または埋葬費)」が支給されます。
いずれも自動的には振り込まれず、窓口へ請求書を提出する必要があり、期限は「葬儀を行った日の翌日」から2年以内です。制度によって支給額や請求先が異なるため、加入していた健康保険の窓口を必ず確認しましょう。
参考:協会けんぽ「埋葬料・埋葬費」,終活協議会「葬儀費用の補助に使える公的な制度」
親の死後に必要な相続手続き

行政手続きと並行して、相続手続きを進めます。相続には法律で定められた期限があるものが多く、海外在住者だからといって期限が延長されるわけではありません。期限のある手続きを優先し、戸籍収集や財産調査などは早めに着手することが重要です。
- 死後速やかに
- 相続人の確認・財産調査
- 遺産分割協議書の作成
- 3か月以内
- 相続放棄・限定承認の申述
- 4か月以内
- 所得税の準確定申告
- 10か月以内
- 相続税の申告・納税
- 3年以内
- 不動産の相続登記(名義変更)
- 契約で定める請求期限内
- 死亡保険金請求
- 順次
- 預貯金の解約・資産の引き出し
相続人の確認・財産調査:速やかに着手
相続手続きの第一歩は、誰が相続人であるかを確定させることです。必要に応じて親(故人)の出生から死亡までの戸籍謄本一式を収集し、法定相続人を確認します。遺言書がある場合、公正証書遺言以外は家庭裁判所での「検認」が必要です。
また、相続人の確認と同時に、預貯金、不動産、有価証券、借入金など財産全体を調査します。法的効力はないものの、財産目録やエンディングノートがあると、相続財産を漏れなく把握するのに役立ちます。
家庭裁判所が遺言書の存在と内容を確認し、後からの改ざん(書き換え)を防ぐための手続き。
自筆で書かれた遺言書(公正証書遺言などを除く)は、検認後に家庭裁判所から検認済証明書が付され、その後の相続手続きに利用できるようになります。
参考:国税庁「相続税の申告のしかた(令和8年分用)」「相続人の範囲と法定相続分」
遺産分割協議書の作成:財産調査後に着手
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産の分け方を話し合い、合意内容を「遺産分割協議書」にまとめます。遺産分割協議書には法的な作成期限はありませんが、親(故人)の相続人や相続財産が確定した時点で早めに着手することが推奨されています。
通常、この書類には相続人全員の実印での押印と「印鑑証明書」の添付が必要です。しかし、前述の通り、海外在住者は印鑑証明書を取得できないため、必要に応じて「署名証明書(サイン証明)」や「在留証明書」の提出が求められます。
海外在住者がいる場合、書類の郵送や領事館への出向などに大幅な日数がかかるため、極めて早めの準備と連携が大切です。
参考:三菱UFJ銀行「遺産分割協議書とは?」
相続放棄・限定承認:3か月以内
借金など負債が多い場合は、相続放棄や限定承認を検討します。どちらも相続の開始があったことを知った日から3か月以内(熟慮期間)に家庭裁判所へ申述しなければなりません。
期限を過ぎると、原則として単純承認したものとみなされ、故人の借金もすべて相続することになります。海外在住者は財産調査に時間がかかりやすく、気づいたら期限が迫っていたというケースも少なくありません。早い段階で借金の有無を確認することが重要です。
亡くなった方の債務(負債)の総額が不明な場合に「引き継いだプラスの財産の範囲内でのみ、その債務を返済する」という条件で相続する方法。ただし、相続放棄とは異なり、相続人全員が共同して申し立てる必要があります。
参考:裁判所「相続の限定承認の申述」
所得税の準確定申告:4か月以内
親(故人)にその年の1月1日から死亡日までの所得があった場合、相続人は死亡日の翌日から4か月以内に故人に代わって所得税の確定申告(準確定申告)を行う必要があります。
ただし、年金収入が400万円以下、かつ他の所得が20万円以下の場合は、原則として「確定申告不要制度」が適用される場合があります。個別の状況によって判断が異なるため、不安がある場合は早めに税理士や税務署に確認することをおすすめします。
参考:
国税庁「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」,政府広報オンライン「年金受給者の確定申告不要制度」
相続税申告:10か月以内
相続税がかかる場合は、死亡を知った日の翌日から10か月以内に、故人の住所地を管轄する税務署へ申告・納税を行います。
基礎控除内(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)であれば申告不要ですが、不動産や生命保険金(みなし相続財産)なども含めて正確に総額を算出しなければなりません。
申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合でも、いったん「法定相続分」で仮に申告・納税を行う必要があります。海外在住の相続人がいると、提出書類の収集などに日数がかかるケースが多いため、とにかく早めの着手が鉄則です。
参考:国税庁「相続税の申告と納税」「相続税がかかる場合」「相続財産が分割されていないときの申告」
死亡保険金請求:契約で定める請求期限内
親(故人)が生命保険に加入していた場合、受取人に指定された人が保険会社に死亡保険金を請求します。一般的には3年程度とされますが、保険会社や個別の契約内容によって請求期限が異なる場合があるため、早めの確認が推奨されます。
死亡保険金は「受取人固有の財産」とされるため、原則として他の親族との遺産分割協議の対象外(分け合う必要がないお金)となります。ただし、相続税の計算上は「みなし相続財産」として課税対象に含まれる点には十分注意が必要です。
参考:生命保険文化センター
「死亡保険金はどのようにして受け取る?」「保険金・給付金を受け取るとき、税金はどうなる?」
東京相続弁護士法人「相続問題の解決法」,国税庁「相続税の課税対象になる死亡保険金」
不動産の名義変更・相続登記:3年以内
相続した不動産は、法務局で相続登記を行って名義変更する必要があります。相続登記の申請は義務化されており、相続によって不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記申請をしないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料が科される可能性があります(海外在住者も例外ではありません)。
遺産分割協議が長引く場合は、ひとまず簡易な手続きで義務を果たすことができる「相続人申告登記制度」を利用する方法もあります。相続人申告登記に関して不明な点がある場合は、法務局もしくは司法書士に相談しましょう。
参考:法務省
「相続登記の申請義務化に関する概要資料」「相続登記の申請義務化に関するQ&A」「相続人申告登記について」
預貯金の解約・資産の引き出し:順次
親(故人)名義の預貯金口座は、金融機関が死亡の事実を把握した時点で、口座が「凍結」され、入出金などの取引に制限がかかります。
遺産分割協議書や相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書(海外在住者は署名証明書)などが揃った段階で、正式な解約や払戻し手続きを行うのが基本です。
ただし、当面の生活費や葬儀費用が必要な場合は、遺産分割前であっても一定額まで単独で引き出せる「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」を利用できます。必要書類や対応は金融機関ごとに異なるため、手続き内容を確認しておきましょう。
参考:全国銀行協会
「預金相続の手続の流れ」「預金相続の手続に必要な書類」「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」
親の死後に必要な各種契約の解約や停止手続き

親(故人)名義の各種契約も、行政手続きや相続手続きと並行して整理を進めます。放置すると料金が発生し続けたり、不正利用のリスクが高まったりするため注意が必要です。効率よく手続きを進めるために、契約書類や利用明細、登録メールアドレスなどを確認しましょう。
- 速やかに着手すべき手続き
- 介護施設・賃貸の契約終了手続き
- クレジットカードの利用停止と残債の確認
- サブスクリプション(月額課金サービス)の解約
- 慎重に対応すべき手続き
- 携帯電話・固定電話の解約
- 各種保険の解約・名義変更
- 住まいの維持管理に関する手続き
- 公共料金(電気・ガス・水道)の解約・名義変更
- インターネット回線の解約・名義変更
介護施設・賃貸の契約終了手続き
親(故人)が介護施設や賃貸住宅に入居していた場合は、施設や貸主との契約に基づき退去手続きを行います。未払い分の精算、その月までの利用料の精算、敷金の返還、福祉用具のレンタル品返却、居室に残された家財の搬出・処分などが必要です。
ただし、海外在住の相続人だけで限られた帰国期間内に対処するのは物理的に難しいことも多いため、遺品整理業者や「死後事務委任(詳細は後述)」の受任者に依頼するケースも増えています。
クレジットカードの利用停止と残債の確認
クレジットカードは、カード会社へ死亡を届け出て速やかに利用停止手続きを行います。解約手続きを怠ると、年会費が自動的に引き落とされ続ける可能性があります。
また、リボ払い、分割払い、未払いの決済など、未精算の利用残高がある場合、相続人がその債務(負債)を承継しなければなりません。故人の借金の有無は「相続放棄」の判断にも直結するため、カード会社への連絡時に残債の有無を必ず確認しておくことが重要です。
参考:終活協議会「死亡後のクレジットカード支払い義務は?」
サブスクリプション(月額課金サービス)の解約
動画配信、音楽配信、クラウドサービス、有料アプリなどの有料契約は、多くが自動更新となっています。親(故人)のスマートフォンやパソコンの画面、メールの受信履歴、クレジットカードの利用明細などから契約中のサービスを洗い出し、順次解約を行いましょう。
パスワードがわからない場合は、クレジットカード自体を止めることで決済を停止できる場合があります。
携帯電話・固定電話の解約
親(故人)名義の携帯電話や固定電話も解約が必要です。しかし、携帯電話を安易にすぐ解約するのは避けましょう。
現在、多くの銀行口座、クレジットカードなどの手続きで「SMS(ショートメッセージ)を用いた2要素認証や本人確認」が採用されています。先に携帯電話を解約してしまうと、他の手続きに必要な認証コードが受け取れなくなり、手続きができなくなるリスクがあります。
他の相続手続きが一通り終わるまでは、最小限の安価な料金プランに変更するなどして番号だけを維持し、すべての手続きが完了したことを確認してから解約するのが安全です。
各種保険の解約・名義変更
生命保険以外にも、医療保険や火災保険、自動車保険など契約内容を確認し、解約または名義変更を行います。解約する際には、解約返戻金が発生することもあるため、事前に契約内容をよく確認しましょう。
なお、実家の火災保険は、相続した不動産を売却したり、賃貸に出したりするまでは解約せず、名義変更を行って継続しておいた方がよいケースが少なくありません。保険の種類ごとに、その後の物件の管理計画と照らし合わせて対応を検討しましょう。
公共料金(電気・ガス・水道)の解約・名義変更
電気・ガス・水道などの公共料金は、死亡後も自動引き落としが続くため、使用しなくなった時点で早めに解約・名義変更の手続きを行います。
ただし、今後も「空き家」として維持する場合は、電気や水道(室内の掃除やトイレの通水、防犯ライトの使用などのため)の契約を残しておく方が適しています。物件をすぐに引き払うのか、しばらく維持するのか、今後の管理方針に応じて判断しましょう。
なお、公共料金ではありませんが、NHKの受信契約も、継続してテレビを使用する相続人がいなければ解約届の提出が必要です。特に海外在住の相続人は、日本の実家を引き払う際などに見落としやすいため、念入りに確認しておきましょう。
インターネット回線の解約
自宅のインターネット回線も、相続人が契約会社へ連絡して手続きを行う必要があります。プロバイダ契約と回線契約が別々になっているケースもあるため注意が必要です。
契約期間の縛り(いわゆる「○年縛り」)による違約金が発生する場合もあるため、事前に契約内容を確認しておくと安心です。Wi-Fiルーターやモデムなどのレンタル機器の返却が必要な場合は、契約会社の指示に従って郵送等で速やかに対応しましょう。
海外在住者が検討したい死後事務委任契約

海外在住者は、日本に住む親が亡くなった際に時差や航空便の手配などで、すぐに帰国できないことも少なくありません。
日本に頼れる身内がいない場合には、親が元気なうちに「死後事務委任契約」を結んでおくことも一つの方法です。葬儀や初期の行政手続きなどを信頼できる第三者へ委任でき、遠方にいる家族の負担を大幅に軽減できる場合があります。
死後事務委任契約とは
死後事務委任契約とは、生前のうちに信頼できる第三者(個人または法人)と契約を結び、亡くなった後に必要となるさまざまな事務手続きを代行してもらう契約です。相続財産の分け方を決める「遺言」とは異なり、葬儀や施設の退去といった「実務」を依頼できます。
契約内容によって、以下のような事務を自由に設計して組み合わせることが可能です。
- 医師からの死亡診断書の受領・死亡届の提出
- 葬儀・火葬・納骨の手配や費用の支払い
- 年金受給資格の抹消手続き、各種被保険者証の返却
- 公共料金・インターネット等の支払いと解約手続き
- 病院や介護施設、賃貸住宅の料金精算と居室の明け渡し(遺品整理)
- 病院・介護施設・賃貸住宅の料金精算や契約の解除
- 住民税や固定資産税などの準確定申告に準ずる税金の支払い
- パソコンや携帯電話などのデータ消去・アカウント削除 など
親の認知症対策などで「成年後見人」がついていた場合でも、後見人の代理権は本人の死亡と同時に原則としてすべて終了します。
葬儀の手配や施設の退去手続きなどは、原則として成年後見人の通常業務には含まれません(※例外あり)。
そのため、亡くなった後の具体的な実務を第三者に委託したい場合は、後見制度とは別に「死後事務委任契約」を締結しておく必要があります。
参考:東京弁護士会「死後事務委任」
法務省「成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律ついて」
※死後事務許可申立て(民法873条の2)により、一部の応急処分行為のみ可能
死後事務委任の主な依頼先
死後事務委任契約の依頼先に法律上の制限はありませんが、事業者によってカバーできる範囲や費用が大きく異なります。海外在住の家族とオンラインやメールでスムーズに連携できる事業者を選ぶ視点も大切です。
弁護士・司法書士・行政書士などの専門家
弁護士・司法書士・行政書士などの専門家には、死後事務委任契約の作成から実際の執行までをトータルで依頼が可能です。事務所によっては「行政手続きのみ」「不動産登記のみ」といったスポットでの委任が可能な場合もあります。
契約書作成報酬や執行時の報酬が明確である一方、実務にかかる預かり金(予納金)の設定が必要です。遺言書の作成(遺言執行者の指定)とセットで依頼することで、死後の手続きから財産引き継ぎまでをトータルで任せられる安心感があります。
高齢者向けの身元保証会社
病院への入院や介護施設への入所時に必要な「身元保証人」の引き受けとあわせて、死後事務委任を一体的なプランとして提供している民間企業・NPO法人があります。
亡くなった後の葬儀手配から居室の片付けや各種手続きなどまで、包括的にサポートしてくれるケースが多く、頼れる親族が国内にいない場合の強い味方になるでしょう。対応範囲や料金体系は会社によって大きく異なるため、複数社を比較検討することが重要です。
葬儀社
一部の葬儀社では、生前相談の延長線として死後事務委任や葬儀の事前契約サービスを提供しています。死亡直後の搬送や火葬許可申請など、「直後に発生する初期対応」のスピード感においては最も信頼がおけるでしょう。
ただし、施設の退去や税金の精算など、葬儀以外の事務については対応外となることもあります。また、身元保証会社同様、対応範囲は葬儀社によって差があるため、内容をよく比較したうえで利用を検討しましょう。
一部の信託銀行等では、相続発生後の財産調査や遺産分割協議のサポート、預貯金の名義変更を代行する「相続手続き(遺産整理)代行サービス」を提供しています。
一般的な死後事務委任契約(葬儀や施設の解約など)とは異なりますが、日本国内にある複雑な資産口座の解約・組み替えをメインに依頼したい場合の選択肢として知っておきましょう。
海外在住者が死後事務委任契約を利用するメリット
死後事務委任契約を利用すると、親が亡くなった直後に必要となるさまざまな手続きを、契約内容に応じて第三者へ任せられます。海外在住者はすぐに帰国できないこともあるため、事前に準備しておくことで家族の負担や精神的な不安を軽減しやすくなります。
時間と労力を最小限に抑えられる
契約に基づいて国内の受任者が葬儀の手配や施設の退去、インフラの解約などを一挙に進めてくれるため、相続人が一つひとつの窓口を回る必要がなくなります。
手続きのためだけに何度も日本へ緊急帰国せずに済むことは、時間的にも経済的にも大きなメリットです。限られた一時帰国の時間を、親族間での大切な話し合いや、親を偲ぶ時間に充てることができます。
手続き漏れを防げる
親が亡くなった後は、行政への届出や保険・公共料金の解約、施設の退去手続きなど、多くの手続きを短期間で進めなければなりません。海外在住者は日本にいないため、必要な手続きを把握しきれず、期限を過ぎたり契約が残ったままになったりすることもあります。
死後事務に詳しい専門家や支援事業者へ依頼すれば、契約内容に基づいて手続きを計画的に進められるため、対応漏れや手続きの遅れを防ぎやすくなります。請求しないと受け取れない給付金・還付金の申請漏れも防げるでしょう。
海外からでも進めやすい
受任者が国内の実務担当者となるため、海外在住の子供は「現地の領事館での署名証明書の取得」や「メール・オンライン面談での最終確認」など、必要最小限のアクションで済むケースが増えます。
原本のやり取りや平日の窓口対応など、海外からでは進めにくい部分を国内の担当者が担ってくれるので非常に便利です。緊急時にすぐ帰国できない場合でも、契約内容に応じて初期対応を任せられることは、海外在住者にとって安心材料となるでしょう。
精神的なゆとりが持てる
死後事務を第三者に任せることで、手続きに追われることなく、親(故人)との別れの時間をしっかり持つことができます。
親を亡くした直後は、大切な家族との別れを受け止める間もなく、多くの手続きや判断を迫られ、故人を偲ぶ時間そのものが削られてしまうことが少なくありません。実務を任せられる安心感は、精神的な負担の軽減にも直結します。
参考:法務省「『成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律』の施行について」
海外在住者は親の死後手続きを見据えた準備が大切
海外在住者にとって、親の死後手続きは「特有の書類」「時間と距離の壁」「短い一時帰国」という3つの要因が重なり、国内在住者以上に負担が大きくなりがちです。
一時帰国だけではすべての手続きを終えられないケースが多いため、期限のある手続きを把握し、必要書類を事前に確認しておくことが大切です。
また、親が元気なうちから死後事務委任契約や国内でサポートしてくれる専門家・支援サービスについて検討しておけば、万が一の際も落ち着いて対応しやすくなるでしょう。
- 海外在住者(非居住者)は、印鑑証明書や住民票を取得できない
- 在留証明書や署名証明書は、親の相続手続きなどで必要となる場合がある
- 死後の行政・相続手続きは期限があるため、早めの対応が重要
- 短い一時帰国だけでは、すべての手続きが終わらないことも多い
- 死後事務委任契約を活用すれば、海外からでも手続きを進めやすい
親の死後手続きは、事前の備えによって負担を大きく軽減できる場合があります。海外在住者が今からできる準備や、葬儀・相続・実家の管理について詳しく知りたい方は、関連記事もあわせてご覧ください。












