戸籍の附票の写しとは?免税で必要?海外在住者の取得方法を解説

「戸籍の附票の写し」とは、日本国内外での住所履歴を証明できる公的書類です。海外在住者の場合、一時帰国での免税利用や年金申請、在外選挙の登録などで求められることがあるため、どこでどのように取得するのか気になる方もいるでしょう。
本記事では、戸籍の附票の写しの概要から取得方法、注意点まで詳しく解説。戸籍謄本や戸籍証明書との違いも紹介します。コンビニで取得する条件や、パスポート申請時の必要性についても説明するので、手続きをスムーズに進めたい方はぜひ参考にしてください。
- 戸籍の附票の写しとは、住所履歴を証明する書類のこと
- 戸籍謄本/抄本は身分事項を証明する書類であり、附票とは役割が異なる
- 一時帰国時の免税や年金申請、在外選挙人登録で必要となる場合がある
- 海外からの郵送請求、代理請求、一時帰国時の窓口請求で取得が可能
- 在外公館では発行不可、手続きごとの記載内容や有効期限に注意が必要
※ 本記事は海外在住者向けに「戸籍の附票の写し」に関する一般的な情報をまとめたものであり、すべてのケースに当てはまることを保証するものではありません。具体的な手続きや条件は本籍地の市区町村役場や各制度の公式サイトで最新情報をご確認ください。
戸籍の附票の写しとは

戸籍の附票の写しは、戸籍ごとに管理される「住所の履歴」を証明する重要書類です。特に海外在住の日本人にとって、一時帰国時の免税や年金手続きで必要になることがあります。
戸籍の附票とは
戸籍の附票とは、戸籍に記載されている人の住所の履歴を記録した帳簿です。本籍地の市区町村が戸籍と一緒に管理しており、住民票を異動させるたびに自動で記録が追加されます。
海外へ転出届を提出した後も記録が残るため、戸籍の附票を見れば、日本国内での最終住所地や海外への転出日を確認できます。海外在住者の場合、日本での居住履歴や海外転出した事実を証明するための書類として、戸籍の附票の写しが必要となる場面があるでしょう。
参考:総務省「住民票及び戸籍の附票等について」
戸籍の附票に記載される内容
戸籍の附票には、氏名・性別・生年月日・現在の住所に加え、過去の住所履歴や転居日が記録されます。戸籍が作られてから現在までの全ての住所変更が時系列で記録されており、いつからいつまでどこに住んでいたかが一目で分かる仕様です。
海外在住の場合、国外に転出した日を「住定日」とし、住所には転出先の国名が記載されます。国外転出後も記録が残り、長期間にわたる住所の変遷を証明できるので「日本に居住していた」という証明が必要な場合に有効です。

なお、本籍地・戸籍筆頭者の氏名は、原則として記載が省略されます。在外選挙人名簿登録情報の記載も省略されるため、必要な場合は申請時に希望して記載してもらいましょう。
戸籍の附票には「全部証明」と「一部証明」があります。それぞれの違いも把握し、使用目的に応じて取得しましょう。
- 全部証明
- 同じ戸籍に属する全ての人の住所の異動履歴を証明
- 全部証明でも全ての過去の住所を証明できるわけではない
- 一部証明
- 同じ戸籍に属する人のうち、一部の住所の異動履歴を証明
- 特定の人の住所履歴だけが必要な場合に利用
戸籍の附票の写しと他の書類との違い
戸籍関連の書類には似た名前のものが多く、混同されがちです。海外から請求する際に間違った書類を取り寄せてしまわないよう、それぞれの違いを明確に理解しておきましょう。
戸籍証明書との違い
「戸籍証明書」は、戸籍謄本や戸籍抄本の総称であり、婚姻や親子関係などの身分事項を証明する書類です。戸籍証明書には家族関係や出生地、婚姻歴などの身分事項が記載されますが、住所の情報は含まれません。
一方、「戸籍の附票の写し」は、住所履歴に特化した書類で、家族関係などの身分事項は記載されません。つまり、戸籍証明書が「誰とどのような関係にあるか」を示すのに対し、附票は「どこに住んでいたか」を明らかにするもので、目的が全く異なります。
戸籍謄本との違い
「戸籍謄本(全部事項証明書)」は、戸籍に記載されている家族全員の身分事項をまとめて証明する書類です。氏名、生年月日、父母の氏名、出生地、婚姻日、離婚歴など、その人の身分関係が詳細に記録されています。
一方で「戸籍の附票の写し」は、住所変更の履歴のみを記録した書類で、身分事項は一切含まれません。「家族関係を確認するため」と「居住経歴を証明するため」という役割の違いがあり、海外からの各種手続きにおいてはどちらが必要かを見極めることが重要です。
戸籍抄本との違い
「戸籍抄本(個人事項証明書)」は、戸籍に記載されている特定の個人だけの身分事項を証明する書類を指します。戸籍謄本が戸籍に載っている全員の情報を含むのに対し、戸籍抄本は必要な人の分だけを抜粋したものです。
謄本と同様に、戸籍抄本にも住所履歴は含まれないため「過去にどこに住んでいたか」を証明することはできません。また「日本に住所がないこと」を証明する必要がある場合も戸籍抄本では不十分で、戸籍の附票の写しが必須となります。
住民票との違い
「住民票」は、現在の住所を証明するための書類です。現住所、世帯主、転入日などが記載されますが、過去の住所履歴(前住所は記載)は原則として含まれません。国外転出届を出した後、住民票は除票となるため、海外在住者は住民票の写しを取得できなくなります。
一方「戸籍の附票の写し」は、住所変更履歴が含まれ、海外転出後も記録が残る点が大きな違いです。海外在住であることや日本での最後の住所を証明する必要がある場合、公的書類としては「戸籍の附票の写し」が唯一の選択肢となります。
戸籍関係の書類の違い
名称 | 記載内容 | 証明内容 |
戸籍の附票の写し | ・氏名、生年月日、性別 ・住所、住定日、住所履歴 ・本籍、筆頭者氏名(原則省略) ・在外選挙人名簿登録情報(原則省略) | ・住所の履歴 ・日本国内での最終住所地 ・海外への転出日 |
戸籍証明書 | 戸籍謄本・抄本を含む戸籍に関する証明書の総称 | ・法的身分関係の証明 |
戸籍謄本 (全部事項証明書) | ・本籍、筆頭者の氏名 (戸籍内の全員の) ・氏名、生年月日 ・父母の氏名と続柄 ・配偶者の有無 ・婚姻・離婚・養子縁組 などの身分に関する事項 | ・戸籍の全員の法的身分事項の証明 |
戸籍抄本 (個人事項証明書) | ・本籍、筆頭者の氏名 (指定された個人のみの) ・氏名、生年月日 ・父母の氏名と続柄 ・配偶者の有無 ・婚姻・離婚・養子縁組 などの身分に関する事項 | ・特定の個人の法的身分事項の証明 |
住民票 | ・現住所、氏名、生年月日、性別 ・転入日および前住所 ・世帯主の氏名、続柄(省略可) ・本籍、筆頭者の氏名(省略可) ・マイナンバー(原則省略) | ・現住所の証明 ・住民登録の確認 |
戸籍の附票の写しが必要な場面

海外在住の日本人が何らかの手続きを行う際、戸籍の附票の写しを求められるケースがあります。具体的にどのような場面で必要になるのかを詳しく見ていきましょう。
一時帰国時の免税利用
海外在住者が日本へ一時帰国した際に、消費税の免税を受けるには「国外に2年以上住んでいる」ことを証明する必要があります。その際に有効な書類の一つが、戸籍の附票の写しです。パスポートだけでは海外居住期間を明確に示せません。
戸籍の附票の写しには海外への転出日が記載されているため、国外転出の事実と居住期間を証明できます。免税手続きで使用するには、本籍地が地番まで記載されていることが必須(※)ですが、通常は省略さているので申請時に記載を依頼しましょう。

参考:観光庁「消費税免税制度とは」
※2026年11月に施行される新免税制度では、本籍の地番の記載が不要となります。
日本の年金の受給申請
海外在住者が日本の年金受給を申請する際、戸籍の附票の写しの提出を求められることがあります。海外在住者は住民票を取得できないため、国内での居住歴を証明する書類として、戸籍の附票の写しが有効です。
附票の記載によって「どの期間日本に住んでいたか」を確認でき、支給開始の手続きや支給額の算定で役立ちます。年金加入期間が10年未満なら、合算対象期間(海外在住期間)の認定にも用いられるため、受給資格期間を正確に算定するのにも必要です。

参考:日本年金機構「海外にお住まいの方の年金の請求」
在外選挙人の登録
海外に住んでいる日本人が国政選挙に投票するには「在外選挙人名簿」への登録が必要です。在外選挙人登録の際、国外への転出日と最終住所地を確認するために戸籍の附票の写しを求められることがあります。
申請時には本籍地を記入する必要があるため、戸籍の附票の写しがあると正確に記載が可能です。本籍地の確認は戸籍謄本でも代用できますが、住所履歴の確認はできません。戸籍の附票の写しのほうがスムーズに手続きができるでしょう。

参考:外務省「転出日・最終住所地の確認方法」
パスポート申請では、戸籍の附票の写しは不要です。パスポートの発給や更新には戸籍謄本・抄本が必要であり、附票の写しでは代用できません。戸籍謄本(抄本)と附票を混同しないよう注意しましょう。
海外在住者が戸籍の附票の写しを取得する方法

海外在住者が戸籍の附票の写しを取得する方法は主に3つあります。海外からの郵送請求、日本にいる家族による代理請求、一時帰国時の窓口請求です。それぞれの方法について、具体的な手順と必要書類を詳しく解説します。
海外からの郵送請求
海外から直接、本籍地の市区町村に郵送で戸籍の附票の写しを請求できます。請求に必要な書類は以下のとおりです。ただし、自治体によって必要書類が異なる場合があるため、必ず事前に確認してから請求しましょう。
- 戸籍証明書等請求書
- 本籍地の市区町村のWEBサイトからダウンロード
- 本人確認書類のコピー
- パスポート、国外転出者向けマイナンバーカードなど
- 返信用封筒
- 海外の住所が確認できる書類のコピー(※一部の自治体のみ)
- 居住国の運転免許証、在外選挙人証など
発行手数料は自治体によって異なりますが、1通300円前後です。郵便請求の場合、手数料ならびに返信用の送料は、現金書留や保険付き郵便を利用して支払います。日本の郵便定額小為替は、国際郵便では送付できません。
ただし、書留・保険付郵便の取り扱いは、国によって異なります。日本郵便の国・地域別対応状況、または各国の郵便局で確認が必要です。自治体によっては、銀行振込やカード払いに対応している場合もあるため、郵送請求前に確認しておくことをおすすめします。
参考:
千代田区役所「海外からの請求」
大阪市「海外からの戸籍の証明書等の郵送請求について」
日本郵便「国際郵便条件表(国・地域別情報)」
日本にいる家族の代理請求
信頼できる家族が日本にいる場合は、代理請求も可能です。代理人が本籍地の市区町村窓口に直接出向いて請求します。配偶者や直系親族(父母・子など)の場合は委任状が不要ですが、兄弟姉妹や友人などに依頼する場合は委任状が必須です。
- 戸籍証明書等請求書
- 各市区町村役場の窓口にて入手
- 代理人の本人確認書類
- 運転免許証、マイナンバーカードなど
- 直系の親族関係が確認できる書類
- 戸籍謄本など(申請者と代理人が同じ戸籍に入っている場合は不要)
- 委任状/請求権限を確認できる資料
- 配偶者・直系親族以外の方が請求する場合のみ必要
代理請求では本人確認書類と代理人の身分証明書が必要になり、受け取りまでの手続きもスムーズに進めやすいメリットがあります。請求書には取得目的や提出先を記入する必要があるため、事前に請求書の内容を確認(以下、見本参照)して情報を伝えておきましょう。

代理人が本籍地まで出向くのが難しい場合は、日本国内で郵送請求も可能です。必要書類に加え、切手を貼った返信用封筒と定額小為替を同封の上、本籍地のある市区町村役場に請求します。代理人が取得した戸籍の附票の写しは、国際郵便で送付してもらいましょう。
一時帰国時の窓口請求
一時帰国の予定がある場合は、本籍地の市区町村窓口で直接請求しましょう。窓口請求に必要なものは、本人確認書類と手数料のみです。本人確認書類(パスポート、国外転出者向けマイナンバーカードなど)を提示し、必要事項を記入すれば即日発行されます。
本籍地が遠方にある場合は、帰国先から本籍地の市区町村へ郵送で請求するのも一つの方法です。日本国内から郵送請求すれば、海外からの請求よりも早く届き、定額小為替も自分で購入できるので簡単に手続きできます。滞在期間が短い場合は家族に受け取ってもらい、書類が届き次第、海外に転送してもらいましょう。
国外転出者向けマイナンバーカードがあれば、コンビニ(マルチコピー機設置店舗)でも戸籍の附票の写しを取得できます。市区町村役場の窓口に行く必要がなく、早朝や夜間でも取得できるので便利です。
ただし、コンビニ交付サービスを利用するには、本籍地の市区町村がサービスに対応している必要があります。また、戸籍証明書交付の利用登録申請も必要です。事前に利用条件を満たしているか確認した上で交付手続きを行いましょう。
参考:J-LIS「コンビニ交付について」
戸籍の附票を取得する際の注意点

海外在住者が戸籍の附票の写しを取得する際には、いくつかの注意点があります。取得場所や記載内容、有効期限などの注意点を事前に把握し、スムーズに手続きを進めましょう。
在外公館では取得できない
戸籍の附票の写しは、在外公館(日本大使館・総領事館)では取得できません。戸籍の附票はあくまで本籍地の市区町村役場が管理する書類であり、在外公館に取り次いでもらうことはできないため、自分で直接手続きを行う必要があります。
在外公館でできるのは、附票の必要性についての案内や、戸籍関連の証明などの限られた手続きのみです。附票を入手するには、前述のとおり、郵送請求や代理人請求、一時帰国時の窓口請求といった方法で行いましょう。
使用目的ごとに必要な記載事項を確認する
戸籍の附票の写しを請求する際には、使用目的に応じて必要な記載事項を事前に確認することが重要です。手続きによって必要な記載項目が異なる場合があります。
例えば、免税利用のためには「海外転出日」や「本籍地」の記載が必要です。年金申請では「居住期間の履歴」が明確になっていることが求められ、在外選挙人登録では「海外転出日」や「最終住所地」の記載が必須です。
請求書の使用目的欄には「免税のため」「年金受給申請のため」など明確に記載しましょう。不明な場合は、すべての住所履歴が記載された全部事項を請求しておくと安心です。
有効期限日を考慮して請求する
戸籍の附票の写しが必要な場合、提出予定日から逆算して請求スケジュールを立てることが重要です。戸籍の附票の写しは「発行日から3か月以内」「発行日から6か月以内」など、それぞれの手続きによって有効期限が設定されています。
特に海外から郵送請求すると、手元に届くまでに1か月以上かかることがあるため、有効期限日を考慮して適切なタイミングに請求する必要があります。有効期限が切れると再取得が必要になり、海外在住者にとっては大きな負担になるので注意してください。
戸籍の附票の写しを確実に取得するために
戸籍の附票の写しは、住民票を持たない海外在住者にとって住所履歴を証明できる数少ない公式書類です。免税利用や年金受給申請、在外選挙人登録といった場面で必要になることがあります。在外公館では発行できないため、本籍地の市区町村役場を通じて手続きするのが基本です。必要に応じて早めに準備し、各種申請をスムーズに進めましょう。