海外在住者の年金加入手続きと支払方法は?一括納付や前納はできる?

海外に転出して非居住者になっても、任意加入をすれば年金を継続できます。申込書の提出だけで済むため、面倒な手続きは不要です。しかし、海外在住者は、毎月の支払いや各種案内の受け取り方をしっかり設定しておかないと、何かあったときにすぐ対応できません。
この記事では、国民年金に任意加入する方法に加え、海外で年金制度を維持するために知っておくべき支払い方法を解説。追納制度や一括納付・前納する方法も説明します。オンラインサービスの「ねんきんネット」も賢く活用し、年金の支払い状況を管理しましょう。
海外在住者が国民年金に任意加入する方法

海外在住者も国民年金への任意加入により、保険料を継続して納付できます。国民年金に任意加入する方法を把握しておきましょう。
任意加入の手続きをする方法
海外に転出予定または居住している人が任意加入を希望する場合、日本国内に親族などの協力者がいるかいないかで申込先が異なります。協力者がいるなら市区町村の窓口で行い、協力者がいない場合は、年金事務所で手続きをするのが一般的です。
協力者がいる場合:現住所の市区町村窓口で手続き
国内に親族がいる場合は、現在住んでいる市区町村の窓口で手続きしましょう。海外転出届を出すときに、一緒に手続きをすればスムーズです。申請書に協力者の氏名・住所・連絡先などを記入して申請すれば、協力者のもとに納付書や各種案内が発送されます。
なお、出国後に加入手続きをしたい場合は、協力者が申請することも可能です。代理で申請する際は、年金手帳(基礎年金番号)と本人確認書類に加え、委任状と協力者の本人確認書類を持参すれば申請できます。
協力者がいない場合:最終住所地の年金事務所で手続き
国内に協力者がいない場合は、転出前の最終住所地を管轄する年金事務所で手続きします。一部、市区町村の窓口でも受け付けている場合があるので確認してみましょう。
転出前の最終住所地がわからない場合は、本籍地の市区町村で住民票の除票を取得すれば確認できます。海外在住で手続きが難しいなら、全国どこの年金事務所でも相談可能です。日本国籍がありながら日本に住んだことがない人は、千代田年金事務所にて対応できます。
任意加入の手続きに必要な書類
年金事務所、または市区町村役所の窓口で国民年金の任意加入を申請する際に必要な書類は、以下のとおりです。
- 国民年金被保険者関係届書
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
- 本人確認書類(パスポート、運転免許証など)
- 海外転出を確認できる書類(住民票の除票など)
- 転出届の提出時、市区町村役所で手続きする際は不要の場合あり
- 保険料の納付に必要な書類
- 預貯金通帳と届出印(口座振替する場合)
- クレジットカード(カード払いする場合)
- 委任状、代理人の本人確認書類(代理人が申請する場合)
任意加入の手続きは、郵送での申請も可能です。日本年金機構のホームページから申込書を入手して記入し、必要書類のコピーとともに管轄の年金事務所に送付しましょう。ただし、必要書類や送付先は、地方自治体によって異なる場合があるため、事前に確認が必要です。
参考:日本年金機構「海外転出による任意加入の手続き」
海外在住者が任意加入した国民年金の支払い方法

保険料の納付は口座振替・クレジットカード・代理納付の3通りから選べます。それぞれに必要な情報は以下のとおりです。
口座振替:定期的な収入・十分な残額がある場合に推奨
日本国内の銀行口座で振替する場合は、預貯金通帳(もしくはキャッシュカード)と、届出印を持参しましょう。基本的には月の末日に振替が行われます。海外に転出後も日本の口座に振り込まれる収入がある場合や、十分な預貯金がある場合は口座振替が安心です。
万が一、残高不足で口座振替ができなかった場合、納付期限の翌月に2ヶ月分の保険料が引き落とされます。翌月も引き落とせなかったときは、国内の協力者宛てに納付書が送付されるので注意しましょう。
クレジットカード:納め忘れがなく手間もかからない
クレジットカード、もしくはデビットカードでの支払いもできます。申請時に登録すれば納め忘れの心配がなく、支払いの手間もかかりません。
以下の指定代理納付者が発行するクレジットカードなら、有効期間満了後も自動更新されるので再登録が不要です。VISA・MasterCard・ダイナースクラブ・JCB・アメリカンエキスプレス(アメックス)の国際ブランドマークが付いたカードのみが対象になります。
- イオンフィナンシャルサービス株式会社
- 協同組合エヌシー日商連
- 株式会社オーシー
- 株式会社オリエントコーポレーション
- 株式会社クレディセゾン
- 株式会社ジェーシービー
- 三井住友トラストクラブ株式会社
- 株式会社ジャックス
- 東急カード株式会社
- トヨタファイナンス株式会社
- 株式会社日専連
- 三井住友カード株式会社(SMBCファイナンスサービス株式会社)
- 三菱UFJニコス株式会社
- ライフカード株式会社
- 株式会社UCS
- 楽天カード株式会社
- アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド
ただし、何らかの事情によりカードが再発行された場合(カード番号が変わった場合)には、再申請が必要です。カードの利用限度額を超えるなどして利用できなかったときは、納付書での支払いになる可能性があります。
本人名義以外のカードを登録する場合は、別途同意書が必要です。配偶者以外の人が名義のカードであれば、書面または電話で名義人の本人確認が行われます。登録に1ヶ月程度かかるため、すぐに海外に転出するなら、手続き完了までの納付方法も確認しておきましょう。
代理納付:協力者に代理で納付してもらう場合に選択
協力者(家族)が代わりに対応してくれるなら、納付書での支払いを選択しましょう。納付書では、金融機関・郵便局・コンビニ・電子納付にて支払えます。何らかの事情で本人が支払えない場合には、検討してみてください。
参考:日本年金機構「国民年金保険料の納付方法」
海外在住者が国民年金を一括納付・前納する方法

海外在住者も国民年金保険料の前納(一括納付)は可能です。前納により保険料を節約できるほか、支払い忘れの防止にもなります。手続き方法や支払手段を確認しておきましょう。
前納の申込方法
海外在住者が前納を希望する場合、年金事務所または市区町村の国民年金窓口での申請が必要です。支払い方法によって申請方法などが異なるため、よく確認してから手続きを進めましょう。
前納の支払い期間は、以下の4つから選べます。
- 6ヶ月前納:6ヶ月分の保険料をまとめて振替
- 1年前納:1年分の保険料をまとめて振替
- 2年前納:2年分の保険料をまとめて振替
- 2年前納(4月開始):2年分の保険料をまとめて振替
口座振替の場合
口座振替による前納を希望する場合は「国民年金保険料口座振替納付(変更)申出書 兼 還付金振込方法(変更)申出書」を、金融機関の窓口または年金事務所に提出します。
直接出向くのが難しい海外在住者は、日本年金機構のサイトから申出書を入手し、郵送でも提出が可能です。マイナンバーカードがあり、マイナポータルとねんきんネットを利用できる場合は、オンラインでも申請できます。
前納の振替方法と対象期間、口座振替日は以下のとおりです。
振替方法 | 前納期間 | 口座振替日 |
6ヶ月前納 | (上期) 4月~9月 (下期)10月~翌年3月 | (上期) 4月末日 (下期)10月末日 |
1年前納 | 4月~翌年3月 | 4月末日 |
2年前納 | 4月~翌々年3月 | 4月末日 |
2年前納 (4月開始) | 4月~翌々年3月 | 4月末日 |
1年前納・2年前納を申し込むと、初回振替日の属する月から、対象年度の最終月分までが振替対象です。たとえば、5月に1年前納を申請し、6月末に振替される場合、6月分から翌年3月分までの10ヶ月分が引き落とされます。
また、6ヶ月前納と2年前納(4月開始)の場合、年度途中でも申し込みできますが、次の対象振替日までは割引が適用されません。たとえば、5月に6ヶ月前納を申し込むと、9月末までは割引されず、10月末日の引き落とし分(10月~翌年3月分)から割引が適用されます。
4月末日の振替開始日に間に合わせるには、遅くとも2月末日までに申出書の提出が必要です。一度申請すると、次回以降も自動的に前納で口座振替が行われるため、あらかじめ計画を立てて早めに手続きを済ませましょう。
クレジットカード払いの場合
クレジットカードでの前納は「国民年金保険料クレジットカード納付(変更)申出書」を年金事務所に提出し、審査後に登録が完了します。口座振替の申し込み同様、郵送でも受付が可能です。クレジットカードでの前納は立替納付で、一括での支払いとなります。
クレジットカードでの立替納付日は、口座振替と同じ日程です。ただし、立替納付日とクレジットカードの引き落とし日は異なるので、各カード会社の利用明細等を確認しましょう。支払い回数は一括のみで、申出がない限りは翌年度以降も自動で前納が行われます。
現金払いの場合
現金払いでの前納は、納付書を使って日本国内の金融機関やコンビニで支払います。年金事務所に申し込むと前納用の納付書が届くため、期限までに支払いを済ませましょう。海外在住者の場合、国内にいる家族等に代理で申請・支払いをしてもらうのが一般的です。
納付書で支払う場合、任意の月分から当年度3月分または翌年度3月分までをまとめて前納することもできます。すでに発行済みの納付書では、まとめて支払うことはできません。必ず年金事務所に申請し、割引が適用された前納用の納付書で支払いを行いましょう。
前納する場合の保険料
国民年金を前納すると、割引が適用されます。まとめて支払う期間が長いほど、割引額が大きくなるのでお得です。とくに口座振替で前納すると、クレジットカード払いや納付書での現金払いより割引額が大きくなるため、負担をより軽減できます。
令和7年度における前納方法、期間別の納付額(割引額)は、以下のとおりです。
振替方法 | 口座振替 | クレジットカード納付 現金(納付書)納付 |
通常納付(翌月末振替) | 17,510円 | 17,510円 |
6ヶ月前納 | 103,870円 (1,190円 割引) | 104,210円 (850円 割引) |
1年前納 | 205,720円 (4,400円 割引) | 206,390円 (3,730円 割引) |
2年前納 | 408,150円 (17,010円 割引) | 409,490円 (15,670円 割引) |
海外在住者が国民年金に任意加入して追納するには

海外転出時に任意加入を保留にした場合に役立つのが、追納制度です。転出後しばらくたってから任意加入を検討しているなら、追納制度をチェックしておきましょう。
国民年金の追納制度とは
追納制度とは、過去に支払っていない年金保険料をさかのぼって納められるものです。追納すると払込期間が増えるので、その分老齢基礎年金の受給額が上乗せされます。
追納ができるのは、申出が承認された月から過去10年以内の期間が対象です。ただし、経過期間によっては、当時の保険料に加算額が上乗せされる場合があります。免除された割合によって保険料が異なるので、よく確認したうえで申し込みましょう。
国民年金の追納を申し込む方法
管轄の年金事務所に申込書を提出、もしくは郵送すれば追納の申請ができます。郵送の場合、申込書は日本年金機構のホームページからダウンロードして入手可能です。申請時には、以下の書類を提示またはコピーを提出する必要があります。
- 国民年金保険料 追納申込書
- マイナンバーカード
- マイナンバーを確認できる書類(マイナンバーカードがない場合)
- 通知カード、住民票の写しなど
- 本人確認書類(マイナンバーカードがない場合)
- パスポート、運転免許証など
原則としてマイナンバーのわかる書類が必要ですが、マイナンバーを取得していない海外在住者は顔写真付きの本人確認書類(パスポートなど)のコピーでも対応可能です。追納を希望する場合は、事前に管轄の年金事務所に必要書類を確認してから申請しましょう。
追納は納付書での支払いのみ
追納の申請が承認されたら、納付書を使って支払いを行います。口座振替やクレジットカードでは追納できないので注意してください。日本に一時帰国したときに申請・納付を行うか、日本国内の協力者(親族)に代理で納付してもらいましょう。
参考:国民年金保険料の追納制度
ねんきんネット・ねんきん定期便を活用しよう

海外にいながら年金の払込状況を確認するには、ねんきんネットを活用するのが便利です。ねんきんネットとは、オンライン上で年金の支払い状況を確認できるサービスのこと。国内居住時、誕生月に毎年届く「ねんきん定期便」も電子版で受け取れます。
- 最新の年金記録の確認
- 年金加入履歴
- 保険料納付状況
- 追納可能な月数と金額
- 将来の年金受給見込額 など
- 年金受給関連通知書の電子版の閲覧
- ねんきん定期便
- 年金振込通知書 など
- 年金に関する各種届書の作成
- 追納申込書
- 口座振替(クレジットカード)申込書 など
なお、ネットでの確認が難しい場合は、ねんきん定期便を海外に発送してもらえます。ただし、1回の申し込みにつき1回限り送付され、受け取りまで3ヶ月ほど必要です。
海外在住でも協力者がいる場合は、年に1回(誕生月)定期便が発送されるため、書面にてすぐに確認したい場合は、親族などに送付してもらう方法もあります。
参考:日本年金機構「海外にお住まいの方にお送りする『ねんきん定期便』」
まとめ
非居住者であっても、国民年金に任意加入するのは簡単な手続きだけですみます。しかし支払い方法などを安易に決めてしまうと、後で変更したくなったり、何らかの理由で支払いが滞ったりしたときに、手続きが難しくなる場合も少なくありません。
今回の記事でお伝えした内容を参考に、海外移住後の収支状況や、銀行・カードの登録状況なども考慮して申請し、加入後は「ねんきんネット」などのサービスを利用してしっかり管理していきましょう。
