在留届とは?提出すべき理由とオンライン・書面での出し方を解説

海外に長期で滞在する際に提出が必要な「在留届」。しかし、慣れない海外で日々の生活に追われているうちに、タイミングを逃して提出しないまま過ごしている人もいるのではないでしょうか。
この記事では、海外に渡航後、在留届をまだ提出していない人や、これから渡航を予定している人のために、在留届を提出しておくべき理由と提出方法について詳しくお伝えします。
在留届とは
まずは「在留届」について確認しておきましょう。
海外での連絡先を日本政府に知らせる届出書

「在留届」とは、海外で思わぬ災害や事件・事故に巻き込まれたときに備えて提出する届出書です。外務省もしくは在外公館(各国の大使館・領事館)が、在留邦人の情報や安否を確認したり、必要なサービスを支援したりするために使われます。
旅券法第16条で定められているものであり、海外に3か月以上滞在する場合は提出が義務づけられています。いつどこで事故や災害、緊急事態に見舞われるかわからないため、海外に滞在するときは必ず提出しておきましょう。
参考・引用:外務省「オンライン在留届」
現地到着後、居住地が決まってから提出
在留届の提出期限はありませんが、届け出されていないと、必要な情報・サービスなどが受けられません。現地に到着後、居住地が決まったら早めに提出しましょう。居住地が決まる前でも提出はできますが、住所が確定後に変更届を出して登録する必要があります。
なお、2024年5月からは日本出発の90日前から「在留届」の提出が可能になりました。出発前に提出する場合は、住所が未確定でも手続きができます。在留届には到着日の記入が必要なため、出国日(現地入国日)が確定した時点で届け出ることも可能です。
住民票を残したままでも在留届の提出が必要
たとえ日本の住民票を残したまま一時的に海外に住む場合でも、3か月以上の滞在であれば在留届の提出が求められます。在留届は住民登録とは別に、現地での連絡手段や安全対策の一環として、外務省が直接管理する情報だからです。
たとえば留学や長期出張など、住民票を日本に残している場合も対象となります。未提出だと、災害などのトラブル時に領事館から支援を受けにくくなるので注意してください。
「たびレジ」は短期滞在(3か月未満)を対象にした任意登録制度で、旅行者や出張者向けに危険情報や緊急連絡を届ける目的があります。
一方、「在留届」は3か月以上滞在する長期居住者にとっての法的義務です。両者の違いを理解し、自分の滞在期間や目的に合わせて登録しましょう。
在留届を提出しておくべき4つの理由

在留届は海外で生活していく上で必要な情報を得たり、支援を受けたりするのに欠かせません。主に在留届を提出しておくべき理由は、次の4つです。
1.安否確認・緊急事態発生時の通報・支援を受けるため
大災害や事件、事故など、海外で何らかの緊急事態が発生した場合、日本国大使館や総領事館は在留届の情報をもとに在外邦人の安否確認を実施します。万が一避難・救助が必要になった場合でも、迅速に援護を受けることが可能です。
過去には、新型コロナウイルスの感染爆発で中国湖北省武漢市が封鎖されたときの邦人救出、アフガニスタンの首都カブールをタリバンが占拠したことによる邦人退避の際にも、在留届による情報を活用しています。
近年は世界各地での緊迫した情勢などにより、いつどこで緊急事態が発生してもおかしくない状況です。緊急時に迅速に必要な情報を受け取れるよう、登録内容が最新の情報に更新されているかも確認しておきましょう。
2.領事窓口サービスを利用するため
大使館・領事館などの在外公館にて、さまざまな領事窓口サービスを受けるときにも、在留届の提出状況を問われる場合があります。未提出でも対応できるものはありますが、海外において必要な手続きをスムーズに行うためにも事前に提出しておきましょう。
海外に居住する邦人が受けられる領事窓口サービスのうち、主なものは次のとおりです。
各種届出の受付
海外で出生・婚姻・離婚などがあった場合、居住地を管轄する在外公館に届けを提出しなければなりません。海外で身分上の変更があった場合でも、日本の戸籍法により届出が義務づけられており、それぞれ提出期限があります。外国への帰化などにより国籍を変更した場合も同様です。
各種証明書の発給
日本の公的サービスを利用したり、さまざまな手続きを行ったりするために必要な各種証明書を発給してもらえます。
証明書の種類 | 内容 | 使用目的 |
---|---|---|
在外証明 | 外国に住所(生活の拠点)を有することを証明するもの | ・(日本の)不動産登記 ・年金受給手続 ・在外子女の本邦学校受験の手続き ・遺産分割協議 など |
署名証明 | 日本の印鑑証明の代わりとして申請者の署名(捺印)を証明するもの | ・(日本の)各種名義変更 など 例:不動産登記、銀行ローン |
身分上の事項に 関する証明 | 出生・婚姻・離婚・死亡、もしくは戸籍記載事項などを証明するもの | ・外国人との婚姻手続 ・外国籍の取得 など |
翻訳証明 | 原文書(公文書)に忠実に翻訳された文書であることを証明するもの | ・卒業証明 ・国家免許や資格の証明 ・外国での会社設立 ・外国の会社への就職 など |
印章証明 | 日本の官公署や学校が発行した文書の印章が真正であることを証明するもの | ・国家免許証、卒業証書などの証明 |
警察証明 | 犯罪の有無を明らかにするもの | ・永住申請 ・就労ビザの申請 など |
パスポートの発給・更新・記載事項の変更
海外に居住している場合、日本のパスポートの発給・切り替え(更新)、記載事項の変更、盗難・紛失時の手続きは、在外公館にて受付可能です。必要書類を持参して申請すれば、数日後に在外公館にて新たに交付・変更されたパスポートを受け取れます。
在外選挙人名簿登録申請の受付
在外選挙人名簿への登録申請も、在留届の提出が前提です。海外から日本の国政選挙に投票するには、在外公館で住所確認のうえ名簿に登録され、「在外選挙人証」が交付されます。選挙の際には、在外公館での投票、または郵送での投票が可能です。
小学校~中学校の教科書申請受付
日本国籍を有する義務教育学齢期(小1~中3)の子どもには、前期と後期の2回に分けて日本の教科書が配布されます。申込期間中、在留届を提出している在外公館にて申請すれば無料(送料・手数料別途)で教科書を受け取ることが可能です。
3.海外安全情報・滞在国の情報メールを受け取るため
在留届を提出すると、登録したメールアドレス宛に外務省『海外安全ホームページ』の最新情報や、滞在国・地域に関する注意喚起メールなどが届きます。

主な情報は以下のとおりです。
- テロや紛争に関する情報
- 新型コロナウイルスのような感染症に関する情報
- 渡航に関する注意・中止・退避勧告
- 治安(重大事件・デモ・ストライキなど)に関する情報
- 気象(台風・大雨被害など)に関する注意喚起
このほか、以下のような現地での生活に関わる情報も受け取れます。
- 在外選挙投票に関する案内
- 教科書の無償配布案内
- 出入国に関する情報の案内
- 海外在住者向けの特例の案内
居住地に関する安全情報、気象情報などは現地のニュースでも確認できますが、正確な情報を日本語で受け取れるのは大きなメリットです。在外邦人向けの情報も、各サービスの申込時期や各種手続きの変更内容などを知らせてもらえるので、必要な情報を確認できます。
4.在留届の写しを発行してもらうため
全国のJRを利用し、お得に日本全国を旅行できる「ジャパン・レール・パス」を利用するのに必要な「在留届の写し」を発行してもらえます。在留届の写しとは、一定の期間、現在居住している国に在留していることを証明する書類です。
本来、ジャパン・レール・パスは訪日外国人向けのサービスですが「在留届の写し」または「在留証明書」があれば、日本人でも利用可能です。在留期間は在留届を提出した日から換算されるため、将来的に利用する可能性があるなら早めに提出しておきましょう。

在留届の提出方法
オンラインで提出する方法と、書面にて提出する方法の2通りがあります。
1.オンライン在留届(ORRネット)を利用して提出

外務省が運営している「在留届電子届出システム(ORRネット)」を利用すれば、いつでも在留届を提出できます。オンライン提出のメリットは、登録事項に変更が生じたときにネット上で更新できること。もちろん、スマホからも提出・変更が可能です。
在留届に記載する内容は以下のとおりです。
・氏名
・生年月日
・性別
・渡航目的(長期滞在・永住)
・在留国国籍の有無
・本籍
・職業
・日本国旅券(パスポート)番号
・到着日
・電話番号
・メールアドレス
・在留地の住所
・在留地の緊急時の連絡先(氏名・住所・電話番号)
・日本国内の連絡先(氏名・住所・電話番号)
・(日本国籍を持つ)同居家族(配偶者、子どもなど)とその日本国旅券番号
※ 太字は必須項目
参考:オンライン在留届
オンラインで提出する場合、居住地の住所を登録すれば、自動的に管轄する大使館・領事館が表示されます。
2.大使館・領事館に持参・FAX・郵送にて書面を提出
居住地を管轄する大使館・領事館に直接出向き、書面を提出することも可能です。大使館や領事館で書面の在留届を受け取り、必要事項を記入して提出します。
ただし、書面で提出した場合、あとからオンライン手続きに切り替えができません。住所や連絡先が変わるたびに書面で提出しなければならないため、できる限りオンラインで提出することをおすすめします。
管轄する在外公館がわからない場合は、在外公館リストを参考にしてください。
現地での引越し・帰国時に必要な手続き

現地での引越しや日本への本帰国時には、登録内容の変更・抹消手続きが必要です。それぞれの状況に応じた手続きについて説明します。
引越し・帰国時に提出すべき書類
海外での引越しや日本への本帰国時に提出すべき書類を確認しましょう。同一国内で引っ越す場合と、他国に引っ越す場合では対応が異なるので注意が必要です。
変更届:居住国内での引越し時に提出
住所や連絡先など、届出内容に変更が生じたときは、変更届を提出しなければなりません。たとえ同じ居住国内で引越しをしたとしても、情報を変更していなければ、万が一のときに重要な連絡を受けられない可能性があります。
帰国・転出届:日本への帰国・他国への引越し時に提出
違う国に引越したり、日本に帰国したりする場合は、帰国・転出届の提出が必要です。引越し先の国で在留届を提出したり、日本で転入届を提出したりすると、自動で切り替わるわけではありません。
引越し前の国で手続きをしていなければ、継続して滞在していると見なされる可能性があります。緊急時などに連絡が取れず、安否・確認作業に支障をきたすことのないよう、引越し前に必ず帰国・転出届を提出しましょう。
変更届、帰国・転出届の提出方法
登録内容の変更・帰国の手続きは、基本的にオンライン在留届(ORRネット)から簡単に行えます。スマホやPCからアクセスし、ログイン後、該当の届け出フォームに入力・送信するだけです。もちろん、近隣の日本大使館・総領事館へ直接持参することも可能です。
ただし、在留届を書面で提出していた場合は、書面でしか変更できません。手続きせずに引越し・帰国をしてしまった場合、郵送かFAXでしか受け付けてもらえることもあるので、管轄の在外公館に確認しましょう。
在留届に関してよくある質問(Q&A)
- Q1.在留届のデメリットはありますか?
基本的に在留届の提出にデメリットはありません。住所や連絡先が頻繁に変わる場合、情報更新の手間がかかりますが、緊急時の安全や支援の観点からも提出する義務があります。
- Q2.在留届を出していないとどうなる?
在留届の提出は義務付けられていますが、提出しなくても罰則はありません。ただし、大規模災害や緊急事態が発生しても領事館からの情報が届かず、安全確認や支援が遅れる可能性があります。在外選挙人登録など一部の手続きも行えないため、届け出は非常に重要です。
- Q3.在留届と転出届は違いますか?
転出届は日本の住民票を他の市区町村や国外へ移すための国内手続きです。一方、在留届は、海外に3か月以上滞在する日本人が現地住所を外務省に届け出るものなので、両者は異なります。日本で転出届を提出した後、忘れずに在外届も提出しましょう。
まとめ
海外において、在留届は日本における住民票のような役割を果たします。海外で必要なサービスを受けられるのはもちろんですが、万が一のときに日本にいる家族と連絡を取るためにも必要です。海外に長期間滞在するときや、住所や連絡先が変わったときは速やかに手続きしましょう。